ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

天気予報 2: スーパーシグナルウェーブ!!! (2021) - 私は性交する必要があります!!

ヴェイパーウェイヴのサブジャンルのひとつである、《シグナルウェイヴ》()。これはおおむね、むかしのテレビのCMのサウンドを素材とした音楽(もどき)である、と言えるでしょう。

そして、そこから登場した最大のスター的アーティストが、《天気予報》さんです()。
いや、別に皮肉でスターとか言っているのではなくて、じっさい彼への支持の厚みが印象的なのです。私がこの、ヴェイパーのシーンを眺めている視界の中で。

ただし。昨2020年くらいからこのお天気さんの、挙動が不安定であることは、ここにてもお伝えしているとおりです()。
たとえば、Bandcamp上の作品らを消したり戻したり、また引退を表明してはすぐ復活したり。もしくは〈シグナルウェイヴの死〉を宣言し、これからは〈CM PUNK〉としてやっていくと表明、なんてこともありました。

……《HKE》ことデヴィッド・ルッソさんあたりもそうなんですが()、いちおう以上の実績があった上で、こういうお騒がせパフォーマンスをしてくれる人って、音楽ジャーナリズム的には〈おいしい〉んですよね!
いや。ヴェイパーウェイヴの世界に、あると言うほどのジャーナリズムなんて、存在しないようなものですが。しかし《ここ》なども、多少はそういうところがあるのかも。

そして……今2021年の7月。《天気予報 2》を名のるアーティストが、『スーパーシグナルウェーブ!!!』というアルバムをBandcampでリリースしました。シグナル系の有力レーベルである、《Night Coverage》から()。
かと思ったらそのアルバムは、わずか数日後にデリートされてしまいました。この方においてはお得意の、自主的テイクダウンだろうか、と想像しています。
こんなことを《事件》と称するのも大げさですが、しかし、私が少々びっくりしなかったとは言えません。

ああ、そもそもこのお天気2さんが、オリジナルのお天気さんと同じ人であるのか、どうか……? たぶんそうだろうと思っているのですが、しかし誰に訊ねたところで、真実が分かりはしないです。

で。そうしてBandcampからは消えてしまったアルバム『スーパーシグナルウェーブ!!!』ですが。しかし、インターネット・アーカイヴにアーカイヴされてしまっています。いやはや、これがネットの恐ろしさと言えましょう。
サウンドとカバーアートだけでなく、発表当時のあおり文句までも、そちらに保存されています。そのトーンのむやみな高さを愛するので、引用します。

ここにいるよ!!!新しいSIGNALWAVEアーティスト!!! 天気予報 2
私は大阪出身です!!! そしてこれは私のデビューシグナルウェーブアルバムです! 私はSIGNALWAVEがとても大好きです!!!
懐かしい日本のコマーシャルを毎日見ながら育ちました!!
いいですね、アジアの古いコマーシャルを見つけました! よくやった!
テレパシーはすでにこのゲームで私を打ち負かしましたが、私は性交する必要があります!!

 

あなただけの69曲!!
Nice!!
Vinyl soon!

というこのあおりをいま見て、〈もう、いきなりヴィニール盤をプレスする気……〉と感じたことを想い出します。よくやった! いや、しかしやっていない!!
そして。このお天気2さんは、かのスラッシュウェイヴの巨人《t e l e p a t h テレパシー能力者》さん()、その人にライバル意識を抱き、対抗するためにこのアルバムを作成した、とでもいうのでしょうか? 対抗できたのでしょうか?

ところで。いちおう聞いてみますと、このアルバム……(69曲・約33分を収録)。

各トラックのタイトルがCMの商品名そのものなのですが、しかし、それが途中からずれています。対応できていません。
また、同じ素材が何度も出てくるような気もします。かつ通常の感覚では、マスタリングあたりにも難があると言えそうです。

と、失敬ですけど、ずさんさが目だっています。あるいはそれが、自主的テイクダウンの動機だったりするのでしょうか?

などとは言いながら、ラスト曲であるタイトルトラックは、なかなかいいと思いました。これは腐臭にまみれたメガミックス&マッシュアップみたいなもので、それまでに登場したCMサウンドらがぐちゃ混ぜのこんとんで、逆に爽快です。イェイッ

──と、そんなことがあってから、追ってこの2021年8月末。再びナイトカバレッジからリリースされたのが、新規まき直し、お天気2さんのシングル曲。
それがわずか33秒間の断片的サウンドなのですけれど、しかしそのタイトルが性交的に長く、思わず草が生えてしまいます。

アジアで放映されたコマーシャルからリッピングされたあなたの静止画像やビデオは、創造的または興味深いものに合格することはありません テレパシーはすでにこのゲームであなたを打ち負かしました 性交オフ

そしてサウンドそのものは、何だか分かりもしませんが軽薄で軽率な感じのCMサウンドがたれ流され、そしてトラックのタイトルそのものが読み上げソフトによって読み上げられる、というものです。性交オフ!!

かくて。お天気2さんと私たちはいつの日か、〈性交オン!!〉と、高らかに叫ぶことができるのでしょうか? テレパシーさんの牙城を崩すことが? 性交を祈ります!

と、だじゃれもびみょうに決まったところで──ぜんぜん決まっていませんが──、この文章を、終わりにしたくもあるのですけれど。
しかし。

どう考えても最大の問題点は、こんな古いテレビのCMらのサウンドを、ほとんどそのままたれ流している音楽(もどき、その以前)が、何になるのか。なぜそんなものを聞いているのか、いつまでそんなことをしているのか。
それがいつか、〈創造的または興味深いもの〉になりうるのか──、ということでしょう。
フラットに言ってしまえば、せめてさきに賞賛したぐちゃ混ぜミックスアップ曲くらいの質とくふうが欲しい、というわけですが……。

私たちのボードリヤールさんは著書『芸術の陰謀』で、美術家アンディ・ウォーホルさんの自己模倣・自己反復への転向・転換を、ちくちくと批判しています。

ウォーホルが一九六〇年代に《キャンベルスープ缶》を描いた時、それはシミュレーションとあらゆるモダンアートに対するみごとな一撃となった〔…〕。
ところが、ウォーホルが一九八六年に《スープボックス》(キャンベルスープの紙箱)を描いた時、それはもはや華麗な一撃にはなり得ず、ステレオタイプなシミュレーションに陥ってしまった。
一九六二年に、彼は(スープ缶で)オリジナルな方法でオリジナル性の概念を攻撃した。一九八六年に、彼は(スープ箱で)非オリジナルな方法で非オリジナル性を複製した。
ジャン・ボードリヤール『芸術の陰謀』(2011, NTT出版 p.113-4)

かつ、これがシグナルウェイヴだけの問題ではない、とも思うんですよね。

私たちのことに限定して言うと、ヴェイパーウェイヴのように聞こえなくもないサウンドを作ることは、あまりにもかんたんです。私にでさえ、できなくはないくらいです。
しかも、その〈誰にでもできる〉ということに、積極性を見出そうとしています。──ですけれど?

性交オフ&性交オン&オフ。反復強迫ということは、反復のあげくにその強迫を、克服できるかのように思えてならない──、という楽観的な営みらしいのです。

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
天気予報 (Weather Forecast) is one of the biggest stars of the Signalwave scene. In fact, his popularity seems to be quite impressive.
However. Since last year 2020, it seems that instability has been noticeable in this person's behavior. Erasing and returning many of the works on Bandcamp, returning soon after announcing his retirement, proclaiming "Death of Signalwave" and "The Age of CM PUNK", and more.

And then, in July 2021. An artist calling himself 天気予報 2 (Weather Forecast 2) released an album called 『スーパーシグナルウェーブ!!!』 (Super Signalwave!!!) from Night Coverage, one of the leading labels in the Signal scene. It contains 69 tracks and about 33 minutes.
And I feel that the original Mr. 天気予報 and the “2” are the same person but I apologize if it is not.

However, the album was delisted just a few days later. I imagine it was a voluntary takedown, which is his specialty.
It's a bit of an exaggeration to call this an incident, but I was a bit surprised.

And the album 『スーパーシグナルウェーブ!!!』 has been deleted from Bandcamp, but the archive remains. This is the horror of the Internet.
When I listened to it, felt that the production was a little rough. The commercial products written in the titles do not match the contents of the sound, etc.

However, I thought the title track, the last of the album, was quite good. It's like a rotten stinking mega-mix or mash-up of all the CM sounds up to that point, and it's refreshing yeah.

And after all that, here we are at the end of August 2021, the single track by the newly reworked 天気予報 2, released again from Night Coverage.
It's only 33 seconds of fragmented sound, but the title is so sexually long that it makes me weed.

Your still images and videos, ripped from commercials aired in Asia, will not pass for creative or interesting. Telepathy has already beaten you at this game. Intercourse off.

And the sound itself, I don't know what it is, but it's just a bunch of frivolous and thoughtless CM sounds, and the title of the track itself is read aloud by the reading software. Intercourse off!!

And so it goes. Someday, 天気予報 2 and we will be able to yell “Intercourse on!” in high spirits? Can we break the stronghold of t e l e p a t h テレパシー能力者 the Vaporwave king? Intercourse on!!