エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

ポスト・インターネット時代の《好き》をさがして──(1)情勢論2023

BLANK安息日: MKULTRA6420 (2023) - Bandcamp
BLANK安息日: MKULTRA6420 (2023) - Bandcamp
あまり本文と関係ないのですがロクヨンがカッコいいヴェイパー近作で洗脳されます

《ポスト・インターネットのポップ音楽》……と呼べるようなものが現在あると、いちおう前提しまして。
そしてその中に三つの、コアっぽいジャンルがあるかなと、考えています。

その三つとは、ブレイクコア/ヴェイパーウェイヴ/ハイパーポップです。

とは、それぞれの音楽的な特徴そのものが21世紀的、ということもありますが。でもまず、それらの生態や生息地らが、ポスト・インターネット的でありすぎるのではないでしょうか。

そして、その中で。
ブレイクコアは速さと激しさを誇り、ヴェイパーは催眠的かつノスタルジック、そしてハイポはけばけばしい〈デコり〉によって《自我》をアピール……と、通常は相容れないような特徴たちを、それぞれに打ち出しています。

ゆえに〈天下三分の計〉が、ひとまず成り立っているような。
……いやまあ、ワールドワイドのアンダーグラウンドな電子ポップの世界という、広いのか狭いのかよく分からない〈天下〉の話ですけれど!

──といった感じに“いま”の状況を、私は見ているのです。

そしてそれらの中で私の共感が、主になぜだかヴェイパーにあるんですよね!

なおフューチャーファンク(F・F)の立ち位置は、前記の図式の中では、ヴェイパーに属するものと考えておきます。
なぜならば。もしもF・Fなる音楽に、20世紀にはなかった新しみがあるとすれば、それはヴェイパーから継承している要素らであるからです。

とまでを見てから、思うのですが。《ポスト・インターネット》時代の情勢の変化のインパクトは、別に新しめの音楽にだけ及んだのでは、ないでしょう。

およそ中世あたりから現在までに生みだされた、ほぼ“すべて”の音楽──仮にも録音されているようなものであれば、YouTubeのみ介したとしても、その“すべて”を無料で視聴できそうな、現在です。
いにしえからの音楽にしても、その在り方を変えないわけにいくでしょうか?

……ああ、かつて20世紀には音楽が、なかなか希少なものでありました。ことに、新しいレパートリーや演奏たちを、多く求めつづけるとしたら。

そういう欲望を追求して──音楽ファンであるような人々はもう、いちいちレコードやCDを買ったり借りたりして、それらをプレーヤーで廻し……。
あるいは、時間どおりにFMラジオ等の放送をチューニングして、かつはエアチェックなどし……。
さらにはご苦労もきわまったことに、ライブ演奏の会場やクラブにまでも足を運び……。

そういう金銭とお手数の大量さを、ずいぶ支払ってきたものです。

それがいまではユーチューブさえ見れるなら、ほぼこと足りる、とも言えます。……いや、別につべを強く推していく気もないので、ネットで音楽を聞くにもいろいろな経路がありつつ、とは申しそえますが。

🌐 🛰️ 👨‍💻

そうして──。ヴェイパーを筆頭とする《ポスト・インターネットのポップ音楽》たちは、むしろこうした状況を前提に、生まれてきたものです。
主にネットのせいで、音楽っぽいサウンドたちが、超ディスカウントされている状況を。

そしてその超ディスカウント状況は、もはや変えられないし、ことの前提として考えなければなりません。

ゆえに、“いま”はヴェイパー(等)である、と言えるでしょう。

かつ、いにしえからの音楽にしましても……。

Josquin: Ave Maria sung by Chanticleer (1982) - YouTube
Josquin: Ave Maria sung by Chanticleer (1982) - YouTube
ルネサンス音楽・再注目!という時代の名演のひとつです

たとえば私の好きなルネサンスの宗教音楽などが、いまはネットで即・聞けるということは、いいような気がするんですよね。そんなおもしろ状況が、単に愉しいだけでなく、《何か》を生みだしていかないとも限りません。

そういえば。
どうして私がそんなルネ……うんぬんの、まったくプロモーションなどされないような音楽にもハマったかと申しますと。

それはそのCDたちが、地元の図書館で無料で借り出せたからです(!)。そこからの親しみが私の生活を少し愉しくしてくれたので、そういう音楽のディスカウント活動が、“ほぼ”いいことのように思えるのです。

そうして。中世から現在まで“すべて”の音楽めいたサウンドたちが、同じプラットホーム上にずら〜りと、無料でなくともただ同然の価格で、並べられている現在に……。
……人々のそれぞれが選ぶのは、何かのつごうでプロモされマーチャンダイズされたような音なのでしょうか、そうではないものに生息域は残されるのでしょうか……といったことを気にしながら、いま私は生きています。


In Search of "Likes" in the Post-Internet Era ── (1) Theory of Circumstances, 2023

[sum-up in ԑngłiꙅh]
I am wondering if there are three, core genres of Post-Internet pop music.

The three are Breakcore/Vaporwave/Hyperpop.

And Breakcore boasts speed and intensity, Vapor is hypnotic and nostalgic, and Hypo appeals to the "ego" with its decoration…
They each exhibit characteristics that would normally be incompatible with each other.

Hence, they are at least temporarily occupying each separate habitat.

By the way, the Post-Internet music situation can be characterized, first of all, by its ultra-discounting.
People no longer need to buy anything or leave their homes to listen to music. All they need is an Internet connection and some kind of device, and they can listen to "everything" even if they only use YouTube.

The "Post-Internet pop music" led by Vaporwave, was born from the premise of this situation.
Mainly because of the Internet, music-like sounds have been super-discounted.

This super-discounted situation can no longer be changed, and must be considered as a precondition.

Therefore, it can be said that "now" is the Vaporwave.