ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

鮭とばSKTB: TVガイド (2021) - 都会の悪はオレにまかせろろろろろろろ

鮭とばSKTB》は、日本人であるらしいヴェイパーウェイヴ関係のアーティストです()。どちらかといえばこの人は、フューチャーファンクの作り手かと考えていましたが……。

しかし。Bandcampからの彼のファーストアルバム『TVガイド』は、意外にも、私たちの特に好むスタイルであるシグナルウェイヴとして、リリースされました()。今2021年の9月上旬に発表、全11曲・約12分30秒を収録しています。

この『TVガイド』はまた、〈シグナルウェイヴのアルバムを一日で制作する!〉という、自主的な企画の産物でもあるらしいのです。
そういえばHKEさんがインタビューで、〈サンドタイマーとしての代表的アルバム、“Vaporwave Is Dead”は、14時間ぶっ続けの作業で一気に制作した〉と語っていた気がします()。そういういきおいを活かした作業の方法も、確かに有効でありうるようです。

さて鮭とばさんによる、シグナル系としての『TVガイド』の特徴は、まずグリッチ手法の多用です。素材であるCMやテレビのサウンドらをぞんぶんに切り刻み、そのスピード感を増強しています。
またフューチャーファンクでおなじみの、ローパスフィルタの開閉などもちらほらと聞こえています。そして古式にのっとってゆかしくも、どこか29チャンネルという地方テレビ局の《放送終了のお知らせ》で、美しく終わります。

そこにいたるまで、何せたった12分半の〈アルバム〉ですから、愉しい時間はあっという間もいいところです。ジェットコースター的です!

トータルすれば、この『TVガイド』は、鮭とばさんがおそらくフューチャーファンクの制作で身につけた手法やアッパーなムード作りなどを、シグナル系に活かした作品でありそうです。
あまり細工していないシグナル作品が多い中で──それもそれでいいのですが──、これはユニークではないでしょうか。さらにまた冒険的な、鮭とばさんの制作に大きな期待が持てるでしょう!

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
鮭とばSKTB (Saketoba = Dried Salmon, SKTB) is a vaporwave artist, apparently Japanese. And I've thought he's a creator of Future Funk before.
But surprisingly, his first album on Bandcamp, 『TVガイド』 (TV Guide), was released as Signalwave, a style we particularly like. Released in early September of 2021, it contains a total of 11 tracks and about 12 mins and 30 secs.

The first feature of 『TVガイド』 is the extensive use of Glitch techniques, where the material (commercials, TV sounds, etc.) are chopped up to enhance the sense of speed.
Also you can hear the effects of the low-pass filter, a familiar feature of Future Funk. Then, following the aesthetics of Signal, it ends beautifully with “The End of Broadcast” announcement of some local TV station.
It's a twelve-and-a-half-minute “album” after all, so it's no wonder that the joyful moments fly by!

In total, 『TVガイド』 seems to be a work in which Mr. Salmon has applied the techniques and upper moods he learned from producing Future Funk to Signalwave. Unique, and it's fun!

US Golf 95: 天気ジェネリック1〜4 (2021) - セックス と マネーと お天気情報

《US Golf 95》──この、すでに広範なリスペクトをかちとっているヴェイパーウェイヴのアーティストについては、いくらか以前にもお伝えしています()。

そして、いまご紹介しますゴルフさんの作品が、『天気ジェネリック四部作です。今2021年の9月中旬に4コ同発の、最新アルバムらです。
それが、ゴルフさんにはこれまでなかった感じの、《ClimateWave》──お天気系ヴェイパーウェイヴ──で、大きな愉しみを提供してくれました。4つを合計すると、39曲・約108分にもなる大作です!

で、さて。

ひとは誰しも、若いときには、〈空が晴れようと雨が降ろうと、オレはオレだぜェ!〉みたいな気持ちのいきおいが、多少はあるかと思います。
ところがうっかり年齢を重ねてしまいますと、〈お天気のことくらいしか、言うような話題がない〉ということに、やがて気づくでしょう。

ゆえにいま、お天気系ヴェイパーウェイヴの時代です。イェイッ。

そういえば。
私なんかも若いころ、うっかり近所で《善良な隣人》らと目を合わせてしまい、そして〈いいお天気ですね!〉などと声をかけられて……。
そういうとき、どう答えるものなのかと、考えこんだりとまどったりもしていましたが。まあ、そういうタイプの人間を、いまは《アスペ》とか《アドード》ADHD)とか蔑称するものらしいですが……。

しかし現在は学問を積んだせいで──それはうそにしても──、こういうものは《パフォーマティヴな言表》なのであると、しっかり理解できています。
《パフォ(…)言表》とは、ようするに、とくに内容のないごあいさつのことです。〈言われること自体が“意味”をなす〉、というタイプのおしゃべりです。

であるので〈いいお天気ですね!〉とでも言われたら、〈そっスねー、アハハ!〉くらいに内容なきレスポンスを返しておけばいい、ということです。現今のお天気の状況について、熟考したりクリティカルに叙述したりする必要性──、それはないのです。
いや、それはあたりまえではあるのですが。しかし、それだけのことを《理解》するのに時間や経験らを要するタイプのヒト属も実在するのです。

ゆえにいま、お天気系ヴェイパーウェイヴの時代です。イェイッ。

ああ、いや。
ひとがほんとうに関心のある話題といえば、いまもむかしも、セックス&マネーに決まっています(断言)。すなわち、フロイトさん&マルクスさんです。
ところが、しかし。《文明社会》でセックス&マネーのことを、むやみと言うのは、無作法とされています。これに並行する現象として、フロ&マル氏らの名前をみだりに口にすれば、たぶんあなたはいいめに遭いません。やばい!

ゆえにいま文明の名のもと、お天気こそが語られるべきです。すなわち、お天気系ヴェイパーウェイヴの時代です。オー、イェイッ。

と、ここまでを見てから、ゴルフさんの最新の名作アルバム『天気ジェネリック』四部作に戻りますと……。

こういうタイプの安いイージーリスニングを、英語ではずばり《ウェザー・ミュージック》と呼ぶようですが。まったくもって、それらの延々と果てしなさです。
また。無意味に目だった点として『天気ジェネリック4』の4曲め、“𝕒𝕟𝕕 𝕟𝕠𝕨 𝕥𝕙𝕖 𝕎𝕖𝕒𝕥𝕙𝕖𝕣”という秀逸なタイトルをもつトラックが、聞いてみれば、あのハービー・ハンコック「カンタループ・アイランド」(1964)をむざんなキッチュにしている感じで、実によくないですが!

しかも。これら全般、わざわざ作ったものであるはずもなく、《サンプリング》ということばさえも恥じるべき、そのへんのてきとうな既成曲らのガッチリ略奪のたれ流しだとしか思えませんが……。

……しかし。心には強く激しくセックス&マネーを想い、いっぽう口ではお天気をホットに語る──。そのような善良めいた市民らである私たちに対し、最適化された音楽(もどき)であるとして、こういうものは盛んにアプリシエートされます。
そうではなくとも、目だたない処理ですが原曲らに対するローファイ化の程度が絶妙で、実に気持ちのいいサウンドになっている──と、技術論(!?)的にも、これはよく賞賛されるでしょう。

そして。いずれこうした音楽や何かしらの浄化作用によって、私たちはセックス&マネーなどのことを忘れ、かつフロイトマルクス氏らのいまわしい名前なども、忘却の彼方に置くでしょう。
そして《パフォ(…)言表》の盛んな交換によって、このすばらしい文明社会の緊密な連帯を、いっそう強くするでしょう。

そしてきょうも、そしてあすも、お天気のことを語りつづけるでしょう。

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
US Golf 95, a legendary Vaporwave artist based in Glasgow, UK. His latest albums 『天気ジェネリック』 (Weather Generic) series are ClimateWave like never before. What's more, a huge series of four works was released at once!
And the content is a wonderful Weather Music with a distinctive shallowness and cheapness. A total of 4 works, 39 songs, about 108 minutes are recorded.

And it's an inconspicuous element, but the lo-fi processing for the original songs is exquisite, and the sound is really pleasant. And it's a good idea to listen to this, and forget about unclean topics such as sex and money, and just think about the weather. And just think about the weather. And just ...

身分けの前の、こと分け - ヴェイパーウェイヴのサブジャンル&関連用語たち

ヴェイパーウェイヴ関連でよく出る新語やチン語ら、そのご説明です!
気になる項目を見てくださってもいいし、また上から順に読んでみてもオツかもです!!

《見出し語の一覧》 Vaporwave, ヴェイパーウェイヴ | Chopped and Screwed, チョップド&スクリュード | Slow Down, スローダウン | Chillwave, チルウェイヴ | Eccojams, エコージャムズ | Plunderphonics, プランダーフォニックス | Hypnagogic Drift, ヒプナガジック・ドリフト | Aesthetics, エセティクス | Utopian Virtual, ユートピアン・バーチャル | Muzak, ミューザック | Mallsoft / Mallwave, モールソフト / モールウェイヴ | Late Night Lo-Fi, レイトナイト・ローファイ | Vapornoise, ヴェイパーノイズ | Signalwave / Broken Transmission, シグナルウェイヴ / ブロークン・トランスミッション | Ambient Vapor, アンビエント・ヴェイパー | Slushwave, スラッシュウェイヴ | Computer Gaze, コンピュータゲイズ | Classic Vapor, クラシックヴェイパー | Vaporhop, ヴェイパーホップ | Future Funk, フューチャーファンク | Vaportrap, ヴェイパートラップ | Hardvapour, ハードヴェイパー | Barber Beats, バーバー・ビーツ | Dreampunk, ドリームパンク | Dreamtone, ドリームトーン | Vapormeme, ヴェイパーミーム

なお、以下の説明文らは、特記がなければ《Last.fmWikiの英文テクストをグーグル翻訳したもの。各執筆者さま方に感謝。「〈〉」内は、筆者(モドキ)による補足説明など。
そして今後も随時、加筆修正されるはず(初稿:2020/04/16〜最終更新:2021/09/14)。

《Vaporwave, ヴェイパーウェイヴ》

コンピューターソフトウェアを使用して、オーディオの残骸やゴミの音楽からサウンドを再構築する、インターネット上の少数のアーティストで構成されるジャンル。
〈中略〉ポピュラー音楽のサンプリングと1980年代/90年代のテレビ広告、ループ、スローダウン、ピッチ変更、およびチョップアンドスクリュー効果を多用しています。
このジャンルの名前は、ベーパーウェア(市場での発売(「煙を売る」)を意図していないコンピューター製品の軽蔑的な用語であり、蒸気の遠方への言及を表すものです。
〈図の作品、Macintosh Plus“Floral Shoppe”(2011)。これがいったい“何”であるかについては、いずれ別稿にて。〉

《Chopped and Screwed, チョップド&スクリュード》

チョップドアンドスクリュード(スクリュードアンドチョップド、スローアンドスローとも呼ばれる)は、1990年代初頭にヒューストンのヒップホップシーンで発展したヒップホップミュージックをリミックスする手法です。
これは、テンポを1分あたり60〜70の4分音符のビートに減速し、ビートのスキップ、レコードのスクラッチ、停止時間、および音楽の一部に影響を与えて「切り刻んだ」バージョンの オリジナル。
〈この項目は、英ウィキペディアより。そういう手法が陰湿なエレクトロニック系に持ち込まれ、そしてついついヴェイパーウェイヴが誕生しちゃった気配。
図は、DJ Screw “The Legend”(2001)。2000年に他界したDJスクリュー、この技法の発明者、その遺作集。〉

《Slow Down, スローダウン》

〈音声サンプルのスピードを変えるにさいし、1990年代半ば以降のデジタルサンプラーは、“ピッチは維持してテンポだけ変える”という機能を持つ。一般ポップのリミックス作業などでは、これが重用されてきた。同様の操作が、いまではPC用の軽いソフトでも可能。
ところがヴェイパー式のスローダウンは基本的に、テンポもろともピッチを落とす。45回転のレコードを33で再生みたいな、原始的な響きを平気でタレ流す。
なぜそんな風であるかというと、そのマヌケな響きへの偏執的愛着、ユルさダルさへの希求、上記のDJスクリューらの影響、かつ全般に、こぎれいなサウンドへの抵抗、ローファイ志向、等々々。
そしてもうひとつ、近ごろ思うのは、ヴェイパーは音声らをスローダウンする/《ポップアート》は素材のイメージらを拡大使用する──それらの並行性。〉

《Chillwave, チルウェイヴ》

チルウェーブ「1980年代のシンセポップとドリームポップの出会い」(Glo-Fiと呼ばれることもあります)は、アーティストがエフェクト処理、シンセサイザー、ループ、サンプリング、シンプルなメロディラインを備えた重度にフィルタリングされたボーカルを多用することで特徴付けられる音楽のジャンルです。
〈中略〉New York TimesのJon Parelesはこのように音楽を説明しました。そしてしばしば弱いリードボイス)。それは、不況時代の音楽です。低予算で踊れます。」
〈チルウェイヴはヴェイパーの前身、またはきわめて関連が深いジャンルと見なされている。図は、Washed Out“Life Of Leisure”(2009)。これがチルウェイヴの代表的傑作アルバムと言われ、なるほど眠さにヴェイパー感がなくもない。〉

《Eccojams, エコージャムズ》

Eccojamsは、電子音楽テクニックの一種として始まったVaporwaveのサブジャンルです。 Oneohtrix PointのパイオニアエイリアスChuck Personを使用することはありません。通常はキッチュな値の古いポップソングを使用し、ディレイ、グリッチ、リバーブなどの手法を使用してそれらを再構築して新しい音楽を作成します。
〈図は、Chuck Person's Eccojams Vol. 1(2010)、ヴェイパーの手法とセンスを決定づけた先駆的作品。
……たんにそのサウンドが、快く好ましいだけではなく。既成の古いポップ曲らをローファイ化・断片化しながら反復、さらにエコー(ディレイ)をも用いて反復を重ねる、そんなことにどういう《意味》があるのか──、それを考えさせられ続ける。〉

《Plunderphonics, プランダーフォニックス

〈現代音楽の作曲家(もしくはメディア・アーティスト)であるジョン・オズワルドが、1985年に提唱した概念。訳すれば《略奪音楽》、もしくは盗用サウンド
そういうものとしてのヴェイパーウェイヴ、その最大の影響源は、DJスクリューらのヒップホップだといちおう考えられる。
しかしヴェイパーの発展(!?)とともに、素材らをちょっとローファイ化しただけのタレ流しまる使い/現代音楽めいたアプローチ/頼まれもしないリミックス(リエディット)──、などと、盗用&略奪の手口らは多様化している。〉

《Hypnagogic Drift, ヒプナガジック・ドリフト》

蒸気波の最も初期の形態の1つである催眠ドリフトは、他のサブジャンルよりも夢のようなもので、奇妙なサンプルから奇妙な催眠雰囲気を作り出し、時々アンビエントと境界を接するドリフト形式の音楽を作成します。
最初のアルバムHologramsのリリース以来、このスタイルの進化がありましたが、骨架的はこのスタイルの最初のパイオニアです。それは間違いなく、奇妙で刺激的なイメージを使用して音楽のシュルレアリスムを強調〈後略〉。
〈近ごろはそんなに言われないキーワード。なお、“Hypnagogic Pop”という似たような語もあるが、それは一般的にチルウェイヴの唄モノのこと。
図は、上の文中でも言及された、骨架的(骷)“Holograms”(2010)。傑作!〉

《Aesthetics, エセティクス》
Aesthetics, エセティクス, 美学

〈アカデミックな“美学”とは、異なる。細かく言うなら、《21世紀のインターネット美学》。
あるいは、いまの英語のネット用語として、サブカルチャー内での「これヤバくねェ? イケてない?」みたいな趣向やセンスらが、「《美学》!」と呼ばれるもよう。
そしてそういう趣向の中で大きな要素らだと見られるのが、なぜか1980年代めいたグラフィックや風俗やサウンドWindows95以前のヴィンテージPCら、スーパーファミコンメガドライブ、およびそうした20世紀末のニッポン文化のあれこれ。
……つまりヴェイパーウェイヴのテイストなのである、なぜか。〉

《Utopian Virtual, ユートピアン・バーチャル》

James FerraroのFar Side Virtualはproto-vaporwaveと見なされている人もいますが、アルバムへの初期の概念に対する影響は、関連付けによって独自のサブジャンルを生み出すようになり、今ではアルバム自体がvaporwaveと見なされる必要があります。
ユートピアの仮想音楽は、一般的にムザックを使用して、近未来的なユートピアの感覚を作り出しますが、一部の作品には不吉な偽ユートピアの響きがあります。
〈高尚なりくつを別にすると、現在このユートピアン・バーチャルは、主にシンセをチャラチャラと鳴らしたお調子のいいヴェイパーをそう呼ぶことが多い気味。
図は、ユートピアン系の元祖と目される、James Ferraro“Far Side Virtual”(2011)。このアルバムとその性格については、次の記事を参考にされたい()。〉

《Muzak, ミューザック》

〈“Muzak”、ムザック、ミューザックとは、あらかじめショッピングセンター等のBGMとして作られた安もの音楽。
その歴史が意外と異様に古く、1920年代には誕生していたらしい()。これがモールソフトの父祖だとも、まあ言えるだろう。なお、次の記事をもご参照されたし()。〉

《Mallsoft / Mallwave, モールソフト / モールウェイヴ》

モールウェーブ(Mallsoftとも呼ばれます)は、ショッピングセンターのイメージと、ショッピングモールで聞こえる匿名のソフトロックムザックのリミックスを使用して、ノスタルジアを引き出すことを目的としたVaporwave音楽のサブジャンルです。
〈この項目は、Aesthetics Wikiより。ようはスーパーのBGMをことさらに聞くという態度に始まり、そして雑踏のモヤモヤとしたふんいきを付け加えていく。
図は、식료품groceries“슈퍼마켓Yes! We’re Open”(2014)。サンブリーチさんのレビューで最高レベルの評価に輝いた、モールソフトの歴史的傑作。〉

《Late Night Lo-Fi, レイトナイト・ローファイ》

Late Night Lo-Fiは、eccojamsと90年代のユートピア様式の蒸気波のレトロフューチュリズム(参照:ユートピア仮想および偽ユートピア)からサンプリングするという考えを取り入れていますが、それを新しい政治的な光の中で提示します。
それは、明るい光の感覚、ブルージーな感じの大都会の夜の作成に、より関心があります。この絵を描くために、80年代の音楽と滑らかなジャズを多用しています。
〈図は、ロフィ騎手“深夜のニュースを待っています ボリューム3ー衛星に接続する”(2020)。別に歴史的な名作っていうわけでもないけど、自分がコレをすごく好き。このシリーズの前作らもオススメ!〉

《Vapornoise, ヴェイパーノイズ》

ベーパーノイズは、極端な細断性と過度に攻撃的な生産を特徴とする、研磨性のある蒸気波です。
ベーパーノイズは、マイクロサンプリング、ディストーション、静的および極端なサウンド操作を使用して、元のサンプルを認識できないようにします。
蒸気騒音の2つの素晴らしい例は次のとおりです。
  世界から解放され by 新しいデラックスライフ
  Y. 2089 by テレビ体験
〈この項目は、mMratnimiat氏のRedditへの投稿より。図は、テレビ体験“Y. 2089”(2014)。HKEさんがものすごくサエていた時期の変名作品で、半分くらいはシグナル系。そんなに激しくノイジーではない。〉

《Signalwave / Broken Transmission, シグナルウェイヴ / ブロークン・トランスミッション

Signalwaveは、特にテレビ広告などからの古いメディアサンプリングに主に焦点を当てた、蒸気波の非公式な名前です〈中略〉。
これらの「壊れた送信」には、通常、サンプルが重く〔乱用され〕、時代遅れのメディアの美学と穏やかな音楽的傾向という統一的な特徴があります。
これらのリリースでは、スムーズジャズを組み込んで、vaporwaveが構築されているゴミのムザックの美学を取り入れることもできます。
〈この項目は、Aesthetics Wikiより。ここらで言われる《シグナル》とは、テレビのCM、番組のテーマ曲やアナウンスなど、コンパクトでインパクトの強い音声サンプルらを指している。あまりニホンでは意識されない英語として、“sign”は街の看板らを言い、また“signal”はテレビラジオのCMらが言われる。
図は、New Dreams Ltd.“Fuji Grid TV EX”(2016)。2011年のEPである“Prism Genesis”が増補&改題された、シグナルの金字塔! どういうCMらが素材であるかは、和ウィキペに詳しい()。〉

《Ambient Vapor, アンビエント・ヴェイパー》

〈形容詞としてのアンビエントをくっつけただけ。雑に言ったら、《2814》みたいなサウンドでありそう。図のアルバム「新しい日の誕生」(2015)が、そのお手本。
……というぼんやりした認識しかなかったが、しかしその後、少しだけ考察を進めた。俗悪ヒワイなヴェイパー世界の素材や手法らを、ムリにでも荘厳化し《昇華》にまで導く──という無意識の意図が、このサブジャンルの根底にありそう。次の記事をご参照されたし()。〉

《Slushwave, スラッシュウェイヴ》

Slushwaveは、「t e l e p a t hテレパシー能力者」のサウンドを含むVaporWaveのサブジャンルです。通常のVaporWaveよりも長い(通常は6分より長い)重く重なったトラックで、ピンポンサンプリングと大きなリバーブで不明瞭になります。
〈スラッシュの“slush”とは、シャーベット状の雪、ぬかるみ、そういう何かドログチャッとしたものだそう。《やおい》の“slash”、メタルの“thrash”とは違う。
Harley Magoo氏(アーティスト名・General Translator)によれば、この語の誕生は、2014年にテレパシー能力者がSoundCloudで自作曲にそういうタグを打ったことによる、とか()。しかしなぜ「ぬかるみ」なのか、リバーブかけ過ぎのせいで太鼓の音が「ベチャッ」という響きになったりするが、そのせいなのだろうか?
ちなみにスラッシュのジャンル内では、テレパシーさん特有のぼんやりしたジャケ写、またニホン語の陰気な曲タイトル、そういうところまでをマネしていくのが、《美学》であるらしい。様式美なので、パクリとかどうとか早合点してはダメ。
図は、そのテレパシーさんによる「仮想夢プラザ」シリーズ総集編(2015)。全31曲・約16時間なので、軽ぅ〜く聞いてみてね!〉

《Computer Gaze, コンピュータゲイズ》

〈コンピュータゲイズとはもともとは、ヴェイパー最初期からの重要なクリエイターである《Infinity Frequencies》が、自分の音楽スタイルに与えたネーミング、と認識している。その語がだんだん、ジャンル名として言われるように。
それがどういうスタイルかというと、まず断章形式であり、各楽曲の尺が30〜90秒くらい。そして安っぽい〈ミューザック〉やテレビCMのサウンド等々をしょんぼりとローファイ化して、あなたがただ独り面白くもない深夜テレビを視ているような寂しいムードを作る。
……そんなもの何が面白いのかと言われそうだが、しかし奇妙に引き込まれるところがあるんだ。図は、そのインフィニさんのアルバム、“Between two worlds”(2018)。いきなりの冒頭曲が、もう《神》でしかない!〉

《Classic Vapor, クラシックヴェイパー》

〈サンブリーチさんのご説明によると、“2012年ごろのオールドスクール・ヴェイパーウェイヴ、すなわち、主にサンプルらの編集でできた略奪音楽、それへの回帰”()。
たぶんだが2017年あたりから出てきた語であるように思われ、有力レーベル“B O G U S // COLLECTIVE”からの近作に、よくこのタグが入っている。〉

《Vaporhop, ヴェイパーホップ》

〈ヒップホップ的ニュアンスのあるヴェイパー。とくに、ビートのところにファンクのフレイヴァがある。ただし、まっとうなラップをフィーチャーしてるようなものは違う。
MF Doom”というラッパーのトラックメイキングがヴェイパーっぽいと言われ、確かにそうだが、しかし。〉

《Future Funk, フューチャーファンク》

Future Funkは、Vaporwaveのデボルブ〈devolution, 衰退〉であり、French HouseとモダンなNu-Discoを組み合わせた、よりエネルギッシュな傾向にありますが、Vaporwave(およびマイナーな方法ではChillwave)のテクニックを使用しています。
音楽はサンプルベースで、リバーブエフェクトが普及しているため、前作よりもグルーヴ感が増しています。他の曲、特にシティポップミュージックの日本のボーカルやアニメのサウンドトラックがよく使用されます。
〈後略。図は1980's NYディスコの聖地をイメージしたアルバム、SAINT PEPSI “STUDIO 54”(2013)。〉

《Vaportrap, ヴェイパートラップ》

Blank Bansheeが彼のアルバムにBandcampで「vaporwave」のタグを付け〈中略〉、Vaporwaveのイメージと音楽的なテクスチャーを利用した、ハイテクトラップとヒップホップ音楽の非常にリアルで新しいスタイルがあります〈後略〉。

《Hardvapour, ハードヴェイパー》

Hardvapourは、90年代のテクノ、ガバー、ハードコアテクノIDM、インダストリアルに影響されたベーパーウェーブのサブジャンルです。
著名なアーティストには、Sandtimer(HKE、hardvapourおよびDreampunkレーベルDream Catalogueの所有者)、DJ VLAD(wosX、別名Flash Kostivich(およびその他多数)
〈後略。ヴェイパーウェイヴの逃避的で懐古的な性格を懐疑するにいたったHKEさんが、もっと現実社会にかかわっていくべきとして創始したサブジャンル。だが残念ながら、このところあまり活気がなくなっている。
なお、これについてのみ“vapour”と英国式のつづりである理由は、自分の邪推によれば、提唱者のHKE氏が英国の人であるため。
図はそのHKE氏による、Sandtimer“Vaporwave Is Dead”(2015)。このときはすごくカッコよかった、このときは。〉

《Barber Beats, バーバー・ビーツ》

〈バーバー・ビーツ、また理髪店ビートとは、2014年あたりから現在まで高度な制作をなし続けているアーティスト《haircuts for men》、その特有のスタイルが言われていると考えられる。彼を崇拝する後進のヴェイパー者たちが、自作らにそのタグを打っている。自分的には、2020年に初めて見たことば。
それがどういうスタイルかといえば、ジャジーでファンキーなイージーリスニングラウンジ系の既成トラックらを、ちょっとスローダウンし、ちょっとローファイ化しただけ、みたいなもの。
けれどそれっぽっちの処理&選曲で、圧倒的なセンスの卓越を魅せつけるヘアカッツさんに、多くの後進らがあやかろうとしている。かつ、ここでもスラッシュウェイヴと同様、カバーアートや曲タイトルづけ等のセンスまでジャンル創始者を見習っていく、という傾向あり。
図は、この流派の始祖となったヘアカッツさんのきわまりと自分が考えている、“ダウンタンブルと死にます ep” (2016)。圧倒的…っ!〉

《Dreampunk, ドリームパンク》

ドリームパンクは、このますますシュールな夢の世界の現実に住む地下の人々のための夢の音楽です。
〈……という説明は、ドリームカタログ社のHPより。ようはそのボスのHKEさんが、自分と仲間らの方向性を形容していることばなんだ。“もはやヴェイパーウェイヴとは異なる”、という強引な新規性の演出みたいな意図もある気配。
現象的にはドリ・パンは、たとえば陰気なチルアウト、あるいはノリの悪いIDM、くらいに聞こえてきている。かといって逆に、そういうものこそがドリ・パンなのか──、ということは分からない。しかし。
図は、ドリ・パン史の第3世代くらいの人であるDROIDROYによる、ブルーライト (2021)。これはつまり『新しい日の誕生』の系統のアンビエント・ヴェイパーだが、ともあれすごくできがよく、また、すでに“ヴェイパー”という語による修飾を求めていない感じ。こういうものが、ドリ・パン……その主流になっていくのだろうか?〉

《Dreamtone, ドリームトーン》

〈かんたんに言ってしまうとドリームトーンは、ドローン的スタイルによるアンビエント/チルアウトもどき。2020年の秋あたりから、勃興してきたムーブメントであるもよう。
これは夢の中で聞いたような音、または夢の中に人を導く催眠的な音楽、といったコンセプトがありげ。そのまたの特徴は、最短で10分〜最長で60分という各トラックの長大さ。しかもなぜだか、端数がなくきりのいい数字に尺を設定、という傾向がきっぱりとある。サウンド的にはあまり目新しさがないが、しかしそういった構えのところに、ヴェイパー特有のシニシズムニヒリズムを感じさせる。
図は、ドリームトーン運動の拠点であるレーベル《DreamSphere》発のオムニバス、『TIDE-010 - 銀河間』 (2021)。すべての楽曲の演奏時間が10分ジャストであるなどをはじめ、“これがドリームトーンだ!”というマニフェストとして受け取り可能なもの。〉

《Vapormeme, ヴェイパーミーム

〈ネット用語としてのミーム(meme)とは、ニホンで言われる“テンプレ”くらいの意味か。そういうわけで、既成のヒナ型にちょっと何かしただけのヴェイパーが、ヴェイパーミームと呼ばれる。まあパロディみたいなもので、その最大の元ネタが、ご存じ『フローラル・ショップ』。
で、はっきり言って、くだらないものが9割9分なんだけど。がしかし、そのミームやパロディのような性格がヴェイパーの本質っぽくもあって、否定はしきれない。
図は、MACINTOSH PLUS“FLORAL SHOPPE 911: FLORAL COP”(2015)。これは意外とくだらなくなくて、Redditの関連スレでも“ハハハッ、こりゃイイ”、ていどに好評。〉

なおヴェイパーウェイヴのサブジャンルいろいろについては、それを説明した感じの画像らも出廻っている。それらは、サンブリーチさんの記事にまとめられている()。

……と、このテクストの、現状はこういうところで。
今後も随時、加筆修正されていくでしょう。おそらく。

なお、ご不明の点や疑問らがおありのさいには、ためらうことなく、何らかの方法(この記事のコメント欄、ツイッター、eメール等)で筆者にご連絡ください。あわせてご意見やアドバイスなどを、お待ちいたしておりまんもす。

∆ΣTHΣR░विज्ञान: ⒺⒸⒸⓄ, O̾r̾d̾e̾r̾ ̾o̾f̾ ̾t̾h̾e̾ ̾D̾o̾l̾p̾h̾i̾n̾ (2021) - 非常に悪化している解離した

《∆ΣTHΣR░विज्ञान》を名のっている人は、米ニューヨーク市に在住するらしいヴェイパーウェイヴのアーティストです。2019年から活躍しているもようです()。

で、この人のステージネームが、実にどうしようもない感じですが! しかし調べたところ、後半のヒンディー語は、〈サイエンス〉くらいを意味するようです。
かつ、Bandcampページのアドレスにethernet mind〉とありますので、おそらく《意味》は、そういう感じなのでしょう。ともあれここでは、仮にエーテルさんと呼んでおきます。

そしてこのエーテルさん。バンド名だけでなく、そのアルバムやトラックらのタイトル表記が……また実にすさまじい。
これらを面白いと思う人がいないとも限らないので、現在までの彼のアルバム8作の、タイトルらを列挙しておきます。

ıllıllı 𝓟άภ¢𝐇Ⓐ βħ𝐨𝐎tά ıllıllı (2019)
i҉g҉n҉e҉s҉t҉h҉a҉i҉ ҉t҉h҉e҉ ҉O҉b҉s҉c҉u҉r҉e҉ (2019)
Зялёная_ ᵂᵉ ᵖˡᵒʷ ᵗʰʳᵘ ᵗʰᵉ ᶠⁱᵉˡᵈˢ & ˢᶜᵃᵗᵗᵉʳ (2019)
𝑀𝑜𝓊𝓃𝓉𝒶𝒾𝓃𝓈 𝓃𝑜𝓌 𝓌𝓇𝒾𝓉𝓉𝑒𝓃—𝑅𝒾𝓅𝓅𝓁𝒾𝓃𝑔 𝓌𝒶𝓉𝑒𝓇... (2020)
๔๏ ฬђคՇ Շђ๏ย ฬเɭՇ ὀρθοδοξία (2020)
𝕄𝕒𝕤𝕥𝕖𝕣𝕤 𝕠𝕗 𝕥𝕙𝕖 𝔸𝕟𝕔𝕚𝕖𝕟𝕥 𝕎𝕚𝕤𝕕𝕠𝕞 (2020)
𝐄𝐚𝐫𝐭𝐡🌎𝙄𝙣𝙛𝙚𝙧𝙣𝙤🔥 (2020)
ⒺⒸⒸⓄ: O̾r̾d̾e̾r̾ ̾o̾f̾ ̾t̾h̾e̾ ̾D̾o̾l̾p̾h̾i̾n̾ (2021)

……何をどうすれば、こういうわけの分からない文字らが出てくるのか、無知にして見当もつかないんですよね!
けれどまあ、文字のことなどはさておき……。

そしていまご紹介したい、“ⒺⒸⒸⓄ: O̾r̾d̾e̾r̾ ̾o̾f̾ ̾t̾h̾e̾ ̾D̾o̾l̾p̾h̾i̾n̾”。これは9月初頭に出たばかりの最新アルバム、エーテルさんとしては、今2021年の初の作品です。全9曲・約71分を収録します。
タイトル的にはどう見ても、かの伝説的なチャック・パースンさんの『エコージャムズ第1集』(2010)、あれが強く意識されたもののようですが……()。

そしてこのアルバムは、いま視点のシャープさを誇っているカンパニー《global pattern》、そのサブレーベルからリリースされました()。そしてその、ツイッターにおける発表アナウンスに、きわめてふるったフレーズが見出されました()。

highly deteriorating mashup of genres and dissociating atmospheres
非常に悪化しているジャンルのマッシュアップと解離した雰囲気

──まさしく、です!
エーテルさんによる音楽を短く形容するために、それ以上のことばが、とても私には思いつけません。

だいたい通常のヴェイパーウェイヴは、あっさりと既成の楽曲らをサンプリングして、しかもそのことを隠そうともしていない。そういうところがありますが。
いっぽうこちらのエーテルさんは、何かをサンプリングしているのかどうか、はっきりとは分かりません。しているとしても、かなり手の込んだ処理で構成していそうです。

そうして構成されたトラックらは、概して短くはありません。平均すれば、一曲が7〜8分間くらいでしょう。

そしてそれらを聞いた感じは、サイバーパンクなムードを持つ、エレクトロニックでサイケデリックな、きわめて複雑怪奇にしてこんとんとしたIDM──かつドラムンベースグリッチ的なところもないではない──、くらいに言えますが。しかし、苦しまぎれの貧弱な形容です。
IDM》かなあ……とも思いつつ、しかしぜんぜんダンスなんかできないし。こんな音楽をこれだと言いうることばが、現状は存在していません。

それをあえて言うならば、まさしく、〈非常に悪化しているジャンルのマッシュアップと解離した雰囲気〉なのです! グローバル・パターンの人がうまいことを言いすぎるから、強く私は敗北感を覚えています。

そして。このエーテルさんの音楽に初めてふれたら、かなり多くの大部分の人が、違和感や不快感を覚えることになりそうです。私にしても、それは、まあ。
ですけれど。その放っている妖気につられて何度も何度も聞いているうちに、〈これは……あるいは……いい音楽なのか?〉という気が、してきたんですよね。少なくとも、非凡なものであることはまちがいない。

とくにこの最新アルバム、“ⒺⒸⒸⓄ: O̾r̾d̾e̾r̾ ̾o̾f̾ ̾t̾h̾e̾ ̾D̾o̾l̾p̾h̾i̾n̾”、これのサウンドにいっそうの切れが感じられます。
これがいずれは、少なくはない聴衆にアピールする時代が来るのでしょうか? そして私たちのエーテルさんが、多少なりとも今後、その名を──分かりづらい上に発音もできないそのバンド名を──高めていったりするのでしょうか?

何も分かりませんが、たぶんヴェイパーウェイヴの影響下にあるものとして、このエーテルさんの奇妙きてれつなサウンドが出てきたことを、ひそやかに私は大きく悦んでいます。

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
Vaporwave artist ∆ΣTHΣR░विज्ञान who claims to live in New York City, USA. This strange stage name probably means something like “ethernet mind”.
As far as we know, he has released eight albums from 2019 to the present. And his latest work is “ⒺⒸⒸⓄ: O̾r̾d̾e̾r̾̾o̾f̾̾t̾h̾e̾̾D̾o̾l̾p̾h̾i̾n̾”. Contains 9 songs, about 71 minutes.

This album was released on the sub-label of the company global pattern, which is now proud of its sharp perspective. And in that announcement on Twitter, a very clever phrase was found ().

highly deteriorating mashup of genres and dissociating atmospheres

── That's truely right!
I can't think of any more words to describe the music by ∆ΣTHΣR░विज्ञान in a short way.

In other words, it's an electronic, psychedelic, highly chaotic complicated IDM with a Cyberpunk mood, and some Drum'n'Bass and Glitch flavor. Anyway, it sounds like no other, and it's just “highly deteriorating mashup of genres and dissociating atmospheres”.

And this ∆ΣTHΣReal sound will impress a big discomfort to those who are not familiar with it. But as I listened to it inadvertently over and over again, I began to illusion that this might be surprisingly wonderful.
And I hope that the illusion will spread to many people and all over the world!

蜃気楼MIRAGE: fantasy (2020) - 妄想から始めよう、ファンタジーにいたるまで

《蜃気楼MIRAGEを名のるヴェイパーウェイヴのアーティスト。Bandcampページでは東京在住の人だと称しているのですが、もちろん信じていません()。

いっぽう、Rate Your Musicの該当ページには、カナダのモントリオールの人だと書かれています()。この話もうのみにはしませんが、一説として紹介します。

この蜃気楼さんについて、分かっている限りのことは、どうやら2015年から活動中であるらしい。彼のデビューアルバムと目される『妄想 delusion』は、レイトナイト・ローファイ系ヴェイパーの名作と言えるでしょう()。
「妖怪都市」というけっさくな曲名のトラックで始まるそれは、追って現在までの蜃気楼さんの音楽を、早くも集約しています。

そこではスムースジャズらしいサンプルが、実に快くスローダウンされローファイ化されています……という、手法的にはおなじみすぎるものですが。
それにしても、ちょっとすごいと思うのは『妄想 delusion』の、きわめて大胆なベース(低音)の削り方です。その結果カスッカスで、しかもスッカスカの乾いたサウンドになっています。これがいい!

そういえば。

スムースジャズを素材とした……〉ヴェイパーウェイヴというと、私たちがもっとも強く支持している床屋系、《バーバー・ビーツ》もまた、それであると言えます()。
しかし聞き比べてみると、アプローチの違いがよく分かって、興味深い。レイトナイト系が脱力の一辺倒であるのに対し、バーバーは、享楽と絶望のはざまでビートが〈立って〉、いるように聞こえるのです。

話を戻し。おそらく蜃気楼さんのアルバムでもっともポピュラーなのは、やや近い世代のアーティストである《waterfront dining》さんとのスプリット、“Songs For Lovers”(2016)だと思います()。
スムースジャズめいたインストを得意とする蜃気楼さんに対して、R&Bのような唄ものの加工を得意とするウォータフロントさん。二人の個性がそれぞれに出ていて、じっさいにいい作品です。

さて、蜃気楼さんなんですが──。一時期は作品の発表がとぎれていたところ、2020年、3年ぶりくらいに出たアルバムが、“fantasy”です。全8曲・約15分を収録。
この人の作品系列を追って聞いていくと、『妄想 delusion』で確立されたスタイルが、びみょうに左右へと動いている感じがします。そして現在の最新作“fantasy”は、再びそれを集約しなおした、蜃気楼サウンドの再確立であるかも知れません。ナイスです。

ところで。

蜃気楼サウンドをいいと思いますけれど、何も《いま》ぜひ注目すべき作品であると、言いたいのではありません。
いや、実は。違うところで実にショッキングなサウンドに出遭ってしまったので、〈ああ! そもそもヴェイパーウェイヴってどんな音であったか!?〉ということを、ほぼ見失いかけました。
そのあたりの再確認のため、もう少しモデレートなヴェイパーを聞き直していたような関係で、この蜃気楼さんへの注目となったのです。

いずれ近く、その衝撃的で画期的なヴェイパーウェイヴ──おそらく──について、語り直さなければならないでしょう()。では!

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
The vaporwave artist who calls himself 蜃気楼MIRAGE claims to be from Tokyo on his Bandcamp page. On the other hand, Rate Your Music says he is from Montreal, Canada.

As far as we can tell, he's been active since 2015. His debut album, 『妄想 delusion』, is considered to be a masterpiece of latenight lo-fi vapor.
It begins with the delightfully named track 「妖怪都市」(Specter City), already sums up 蜃気楼MIRAGE's music up to the present day.

In it, smooth jazz-like samples are slowed down and lo-fi'd in a very pleasant way. ...... is all too familiar in terms of technique.
What I find a bit amazing is the extremely bold way the bass is cut in 『妄想 delusion』. As a result, it has a dry, crunchy, tinny sound. This is good!

And 蜃気楼MIRAGE, his action was interrupted for a while. But in 2020, album called “fantasy” was released. It contains a total of 8 songs and about 15 minutes.
When I listen to this person's work series, I feel that the style established in 『妄想 delusion』 is swaying from side to side a little. And the latest work “fantasy” may be a re-establishment of the 蜃気楼MIRAGE, re-consolidating it. Nice.