ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave et compagnie, Désir Duplication Répétition ─

photo jewel: virtual escape (2020) - 〈わたしは一向にかまわんッッ〉!

《Internet-Stories》という、何か異色ありげなヴェイパーウェイヴのレーベル()。そのリリースらについて前の記事で、《Computer Gaze》っぽいのが目立ち気味、みたいなことを書いたけど()。

ところが、対象らを調べているうちにプランが崩れ。そのコンピュータゲイズっぽいスタイルの作品を、たった1コしかご紹介できてないのはマヌケ、とは自分でも思ったんだよね!

ということでインタネット・ストリーズからのリリースらをチェキし直し、今年2020年に出たアルバムで、コン・ゲーっぽいのを追加でご紹介。

そしてご紹介するのが、《フォト・ジュエル》《エモーショナル・インテリジェンス》というバンドらなんだけど。
……しかし、とくに加えて説明することがないんだよね。

つまりそれぞれ内容は、前記事で述べたようなコンピュータゲイズ。さびしみの深いサウンドの断片らが、ささやかに集積されたアルバムたち。それがなぜだか、ジワリと心にしみてこないでもなくて。

なお、エモーショナル・インテリジェンスのトラックで、約13分という長いのがあるけど。実はこれも、断片的な曲らの寄せ集めが1トラックになっているだけ。数えていないが、10コくらいの曲がその中に詰まっているのでは。

そしていずれも、作者の素性とかぜんぜん不明。そもそも作品が、それぞれ1コずつしかないもよう。

……そしてサウンド傾向もほとんど変わらない感じだし、そんなことから、前記事でご紹介の《レイディアント・メモリーもあわせ、実はぜんぶ同じヤツが作ってンじゃねェの、って気もするんだけど。
だがしかし、それならそれでも構わないし。また、それぞれがちゃんとした別人だったとしても構わない。〈わたしは一向にかまわんッッ〉

どうせ、“すべて”が、メディア環境というドロ沼からフと浮かび上がった、小さなうたかたたちでしかないのだから。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Continuing from the previous article, I would like to introduce the “Computer Gaze” albums released by “Internet-Stories”. That is, they are works by bands named photo jewel and emotional intelligence.
However, I don't think it needs any additional explanation. In short, they are Computer Gaze works with small collections of lonely sound fragments.

Together with the radiant memory introduced in the previous article, it seems that each tones are not too different. So we can doubt that these works are all made by a same person. However, it doesn't matter if that is the case or not.
Anyway, these ALL are just small bubbles that emerged from the bottom of the mud swamp of the media environment.

radiant memory: memory maps (2020) - 面白くもないし、つまらなくも……。

《Internet-Stories》というヴェイパーウェイヴのレーベル、何か違う世界を見ている風があり、その存在感がぶきみだと思う()。いや、まあ、たぶんいい意味で。

そもそもその名の〈インターネットの物語〉って、どういうお話なんだろうか?

それがまさか〈ARPANETの誕生〉とか〈TCP/IPがどうこう〉ってな高尚なお話だとも思えず、どうせこのケチなネットワーク上にうず巻く……オレらモブの衆のあさましい欲望・願望らの交錯、そのみっともよくはない絵図……だろうかなァ、くらいのことしか思い浮かばないが?

が、そんな臆測はともかく。
そのインタネット・ストリーズからのリリースらで目立ち気味なのが、《Computer Gaze》というサブジャンルに属すかも、っていう作品たち。

そのコンピュータゲイズとは、もともとは、ヴェイパー最初期からの重要なアーティスト《Infinity Frequencies》が、自分の作風に与えた名前だと考えている()。それが現在はヴェイパーのサブジャンル、またはそのひとつのスタイル、のように言われなくもない。

じゃあそのコン・ゲーとはどんなスタイルなのか、というと。

まず、基本的な構成が断片形式で、1トラックが40から90秒くらい。
そして出どこのつかめぬ安いイージーリスニングやCMソングらの素材をローファイ化し、いっこも面白くもない深夜テレビを用もなく独りただ眺めている、そんなムードを作る。
その深夜テレビにしても、1980-90年代のローカル局っぽいふんいきが出せればいっそう好ましい──、のかも知れない。じっさい、それ風なサンプルがけっこう聞こえているし。

また、素材の面からするとシグナルウェイヴに近いところがあるわけだが()。しかしコン・ゲーが独自だと感じられるのは、〈下げる、落とす、フラットさへの志向〉への固執があり気味で。

というわけで、もぉ〜テンサゲもあんまりだし。また、言うほどのコンピュータ要素がどこにあるのかも分からないんだけど。
がしかし何か、このテンションの下がりきったダウナーの世界に、奇妙きわまるふしぎな心地よさが、ないとは言えない。

と、こんなことを書いていて思い出したのは……。またオレが古いことを言うけど、ニッポンのポストパンク的なバンド《突然段ボール》の、まあたぶん代表曲「変なパーマネント」(1980)のことなのだった()。

面白くもないし つまらなくもない
楽しくもないし 哀しくもない

……だからどうした、と? 別にこれをすばらしい楽曲だとか言わないし、そもそもこのリフレインの歌詞だけぼんやり憶えてて、曲名なんかはさっきまで忘れてたんだ。
しかし、まあこの……。とくに面白くもなく過ぎていく時間を、わざわざ捉えて対象化してみようという酔狂なアチチュードが、ことによったら先進的だったのかも?

話を戻し。さて、いま現在のインタネット・ストリーズの最新作が、そのコン・ゲーだと自分は思う。それが《radiant memory》によるアルバム“memory maps”、2020年9月リリース。
これがけっこうつきつめた、コアなコンピュータゲイズのように聞こえる。全7曲で約9分という超コンパクトな構成からして、かなり本気くさい。

かといって、この〈面白くもないし、つまらなくもない〉的な時間の凝縮を、どう受けとめたらいいのか。
むしろそういう面白くもなく過ぎていった時間らが、いつかレイディアントに輝くすてきなメモリーになることを、今作は先取りしているのだろうか。というか、すでに《──である。》であるのだろうか。

ところで。このレイディアント・メモリーと同じ9月のインタネット・ストリーズ作品が、《サ ガ》による『晴天』。実はこれもコン・ゲー扱いで、ペアでご紹介するつもりだったんだけど。
しかしよくよく聞いてみたら、これはコン・ゲーじゃない。そんなにはテンションを落としてないし、また断片性をつきつめてもいない(全10曲・約21分)。

けれどひじょうに愉しいアルバムなので、あわせてご推薦いたしておきます。方法的にはレイトナイト系に近いが()、しかし『晴天』というだけにムードが明るく白昼的。

そしてレイディアント・メモリーにしろサガにしろ、その作品はいまのところ、これら1コずつだけのよう。ぶきみな存在感を放っているインタネット・ストリーズから、彼らのまたのリリースが……あればいいと思うが……!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
The Vaporwave label “Internet-Stories” seems to be looking at something different, and its presence is eerie. No, well, maybe in a good way.
And my impression is that in their releases, what could be called “Computer Gaze” stands out. Computer Gaze is the name given to his style by an important artist from the earliest days of Vaporwave, Infinity Frequencies. But now it's being modestly described as a style.

And the feature of the style called Computer Gaze is that the sounds like fragments of TV commercials are first lo-fied and looped. And in fragmented form, it creates an indescribable low tension and a mood that makes you feel like you alone are just watching late-night TV, which isn't fun at all.

And the current latest release of Internet-Stories, the album by radiant memory, “memory maps”. This sounds like a pretty tight, core Computer Gaze. It's quite serious because of the ultra-compact composition of about 9 minutes for all 7 songs.
And for some reason, this terrible rejection of excitements is fascinating.

Phil Tomsett: The Sound of Someone Leaving (2020) - 消える行為が空気を揺らす

イングランドアンビエント・クリエイター、《Phil Tomsett》さん()。別名義の《The Inventors Of Aircraft》をあわせ、かれこれ10年以上の活動歴があるもよう。
しかし、地味だった感じは否めず。アンビエントってのがさいしょから地味なんだけど、その中でもまた、ね。

けれどその2020年の最新アルバム、“The Sound of Someone Leaving”──全10曲・約43分を収録──、これはすごくいい。たんじゅんに聞いて愉しいし、しかも新しみがある。

何が斬新なのかって、ナマっぽいコーラスの響きをエレクトロニクスと組み合わせた、ハイブリッドで奥行きある清澄なサウンド。これがユニーク。
じっさいこのコーラスの扱い方がひじょうに洗練されたもので、たぶんサンプリングだと思うんだけど、しかしどうやって処理してるのか見当もつかない。あたりまえだが、シンセのよくある〈Choir〉とか〈Human Voice〉とかのプリセットトーンを使ったんでは、こんな深い音にはならない。

そしてそのコーラスの清らかで重層的な響きがしばしば、あのルネサンスの宗教的合唱曲くらいの崇高さにまで、いたり加減。もともと自分が、そういうジョスカンデュファイあたりをすこるので、そのツボをグサリと突かれちゃったんだよね。

あとそれと、Bandcampページの作品解説が──誰が書いたものか不明だが──ちょっとした名調子なので、少し引用しておきましょう。

トムセットの音楽は、完全に消える寸前の、優美で薄っぺらなものです。
音楽が一連の軽いアンビエントタッチのトーンを流れるとき、不在の痛みを感じることができます。音楽は空中に浮かんでいるので重力に逆らうようで、ボーカルは遠くに響き渡り、彼女の声を思い出します。
誰かがもうそこにいないとき、空のスペースは感情的な力で満たされます。まるで消える行為が、空気のような、超自然的な署名を残すかのように。

(グーグル翻訳より, 任意な抜粋)

今アルバムのタイトルが述べている、《誰かが去る音》ということ。そのテーマの味わい方は、各自の心におまかせするとして。
それにしても、アンビエントやネオクラに興味がおありの方々には、ぜひご一聴をオススメしたい傑作だと思うんだよね、これが。

Poison Coffee: Satiric Forums PRO (2020) - 味のある苦み、めしませ毒珈琲。

《Poison Coffee》というサウンド・クリエイターはブラジルの人らしいんだが()、しかしコーヒーの本場から〈毒入りコーヒー〉を供されるというのもイヤな話だ。いや、まあイイけどさっ!
そしてその人が、この2020年・秋、信頼のレーベル《B O G U S // COLLECTIVE》からリリースしたアルバムが、“Satiric Forums PRO”。全9曲・約30分を収録。

ところで? われらのBOGUSがヴェイパーウェイヴのレーベルだということは確かだが、しかし、この《毒珈琲》さんのアルバムがヴェイパーそのものだろうか、というところには疑問が残る。
じゃあこれがどういう作品かというと、まあ主要部分はアンビエントっぽいと言えそうだけど。でも、そんなにカンタンではない。

そこで収録トラックらを追っていくと、まずさいしょの6曲は、アンビエントっぽさの濃いパート。モヤっとしたストリングス系の音を鳴らし、主としてドローン的に、たまにメロディックに、静ひつなふんいきを作っている。
このパートは、ほんとうに気持ちがいい。耳に快適すぎて、逆に、〈音楽を聞いている〉という感じがしないくらいだ。

ところが続いた7曲め、急に交響楽的なブラスが〈ブフォエェ〜〉と鳴り始め、映画の緊迫シーンのスコアみたいな音楽になる。このトラックのタイトルが、“Banshie Grunt”というんだが、西洋妖怪のバンシーが出現しちゃったイメージなのだろうか。

さらに続く8曲めは、前曲のムードを引き継ぎながら、アコ風な要素とエレ要素らの絡ませ方が、ひじょうに“深い”トラック。かなり高級な操作をしているように聞こえるんだ。
そうしてラストの9曲めは、手法において8曲めを引き継ぎながら、内容的には、ほぼダークアンビエント。やはり妖怪の叫びみたいな不気味な音を鳴らしつつ、何かの物語が壮大なエンディングを迎えたようなムードがなくはない。

Poison Coffee: Kerala (2019) - Bandcamp
Poison Coffee: Kerala (2019) - Bandcamp
これの内容はキッツすぎるヴェイパーノイズ

というわけでこのアルバム、全体的にはアンビエントでもスコアでもねーし、《何》なのか分からない。
でも面白い作品だし、随所にきわめて非凡な響きがあるので、うちらヴェイパーウェイヴが悦んで引きとるぜェ、という気にさせるんだよね。

ちなみにこの《毒珈琲》氏、Bandcamp上では2016年から作品を出してきてるんだけど。しかしヘンなエクスペリメンタルやインダスっぽいのが多く、ヴェイパーそのものって感じの作品はなかったもよう。
もっとはっきり言えば、オレ的にちゃんと聞けるような毒珈琲作品は、この最新アルバムがお初。それも、〈風刺的フォーラム・プロ〉っていうタイトルの意味が、さっぱり不明だけど。

そうしてこれからの毒珈琲氏の作品がどうなっていくのか、それもぜんぜん見当がつかないんだけど。でも何かすごく楽しみなんだ。イェイッ

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Poison Coffee seems to be a Brazilian sound creator, but it's also unpleasant to be offered poisoned coffee from the home of coffee. Well good though! And the album he released from the trusted label B O G U S // COLLECTIVE in the fall of 2020 is “Satiric Forums PRO”.
It's a rather weird work that starts in Ambient style and then turns into music like the score for movie's tense scenes. And the last ends as Dark Ambient.

It seems to be a bit of a messy composition, but the level of sound creation is very high. The fun of listening is strong. We look forward to future Poison Coffee blend!

t e l e p a t h II テレパシー能力者2: バーチャルリアリティ (2020) - 夢の中に幸福の到来を待つ

《t e l e p a t h II テレパシー能力者2》を名のる、ナゾのヴェイパーウェイヴ・クリエイター()。
この人は、ヴェイパー史上有数の偉大なアーティスト《t e l e p a t h テレパシー能力者》()と、同じ人──その現在のエイリアス──だろうと考えながら、以前にもチラリご紹介したんだけど()。

けど、だんだんに確信が、なくなってきちゃってるんだよね。同じ人なのかどうか。

なぜって、ご本家が確実に関わっていそうなプロジェクトが、精力的なアドヴァタイズで何やらをマネタイズとかしようとしているのに対し()、こちら《テレII》さんの周りは、あまりにも静やかすぎる。
ほとんど話題になってないみたいだし、同業者たちからの推しもない。注目してるのはオレくらいなんだろうか、と思うほどなんだ。

ただ、そんなかそけきたたずまいが好きなので……。誰が誰かなんてことはあまり気にせず、自分がいいと思うヤツのご紹介を続けるんだよね。

それでもってバーチャルリアリティは、《テレII》の人による2020年10月発の最新アルバム。全13曲・約45分を収録、内容的にはおとくいの《スラッシュウェイヴ》()。
けれどいままでの作らに比べると、やや実験味が薄れ、あれこれの操作が控えめかも。その分、聞きやすく親しみやすいと思う。中でも印象的なトラックは、W1NK「才ンリー・口ンリー」(1989)をスラッシュ化した3曲め。

で、それにしても、そのカバーアートが、何をいまさらのアポジー&ペリジー

いや、いまはもう知らない人も多いと思うけど、ジャケ写に見えているロボット2体が、そういう名前なんだ。これは1984年、ニッポンの《つくば万博》のハイテクブームのドサクサまぎれに、ちょっとアドヴァタイズされて名前を売ったキャラクターたちなのだった。

それで。うちらのエレクトロ的音楽の話としては、この《アポジー&ペリジー》の偽名のもと、われらの細野さまと戸川純ねーさんらが、企画モノのアルバム1コをデッチ上げている。そしてそこからカットされたシングルのB面曲、「真空キッス」がすばらしいトラック。

真空キッス きつく抱かれると
真空キッス チッ息しそうよ
受動的な私 性格ネ
自動的に瞳 閉じてるの

(「真空キッス」1984, 作詞:松本隆, 作編曲:細野晴臣

まあほんと、まず何より、この時期の細野メロディが《神》でしかないワケだけど。

にしても。ここで歌われている、〈受動的&自動的に、瞳閉じて〉……すると自発的&不可避的に、くちづけの快感と幸福感に自分は包まれる予定だという、きわまりきったオプティミズム
──そういうものを、われれわれはいまだ持ちうるのだろうか? あれこれのハイテク化が帰結する、魅惑的でエロティックなユートピアの到来、みたいなおとぎ話への信奉を?

で、そうして話は、《テレII》さんのアルバムのことへと戻り。

だいたい近ごろはカンタンにVRと略して言われるので、それをわざわざ〈バーチャルリアリティ〉とカタカナでフルに書くと、そこには1990年代的なVR待望の楽観的ムードが、思潮の墓場からよみがえって来ないでもないような感じ。

そしてアルバム『バーチャルリアリティ』は、主にローファイ化されたチルアウト音楽の断片のようなトラックらを積み重ねながら……。
……そしてそのクライマックスの12曲めで、タイトルが「奈落の底で失われた」、というところにたどり着く。とはいえ題名ほどには恐ろしい曲ではなくて、喪失感と諦念をトランキルに表現してるようなものだけど。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
A mysterious Vaporwave creator named t e l e p a t h II テレパシー能力者2. I'm wondering if it's the new moniker for that famous t e l e p a t h テレパシー能力者, but not sure.
Anyway, the latest album by Mr. Tele-II is 『バーチャルリアリティ』 (Virtual Reality), is his favorite Slushwave work. Especially the third song, a slushed version of W1NK's “0n1y Lone1y” (1989) is impressive.

By the way, the robots that appear in the cover art of this album 『バーチャルリアリティ』 are “Apogee & Perigee”. They are characters that symbolize the optimistic high-tech aspiration mood created during the era of Tsukuba Expo 1984 in Japan.
And at that time, Haruomi Hosono, the techno god of Japan, and Jun Togawa, the techno diva of sublimity, under the pseudonym Apogee & Perigee, they created a work that depicts the image of high-tech resulting in a fascinating and erotic utopia. The sound still moves our hearts.

But now in the 21st century, Tele-II's album 『バーチャルリアリティ』 portrays the loneliness and feeling of loss we continue to experience every day in a flimsy high-tech environment.