ポ  サ  研

─ ポスト真実 のサウンド研究, ヴェィパーゥエィヴ と仲間たち, 欲望 複製 反復 ─

4v4 M4X: 5vveet 6ut P5ych0, vaporwave edit demo (2019) - サイコの彼女でさーいこー

2019年初頭に少し流行っていた英語のポップソング、それのヴェイパーウェイヴ(もどき)エディットのデモ。「作った」などとは言えないが、ちょっと細工したのはオレなんだよね。

4v4 M4X: 5vveet 6ut P5ych0, vaporwave edit demo (2019)
(non-commercial entertainment and educational research only)

これに関して自画自賛させてもらっちゃうと、まずもとの曲がイイ。さらに、75秒間という尺の短さが実にすばらしい。

それから1年、ほとんど忘れていたんだが、さっきまれにYouTubeにログインしたら、これをヘンに想い出すハメに。よって、ここに晒し棄てるんだよね。

Kanal Vier: Echtzeit (2020) - シグナル系の科学力はァァァ アアア世界一ィィィ イイイ

Kanal Vier》は、ドイツ人であるらしいヴェイパーウェイヴ・クリエイター()。そしてこの名前は、もしドイツ語であればカナル・フィアーと読み、そして〈4チャンネル〉を意味しそう。

4chan──といったらヴェイパーと多少は縁のある英語のBBSだが、それを意識したバンド名なのか。
それとも、カナル4さんの作風がシグナルウェイヴ()なので、何かむかしのテレビの4チャンネルのことなのか。

そしてこのカナルさん、たったいま調べたら、使い分けている芸名が、他に(少なくとも)ふたつ存在するという。
それは、《Sport3000》)、および《VVVX Software》)。合わせて3コの名義にて、2017年から精力的に活動中、というわけなんだ。

と、いま初めて知ったことが多いので、思わずアワを喰いかけたが。しかしだいたいのところ、カナル一族という個人については、次のように言えそうだ。

すべての名義でこの人の楽曲らは、長さが1分弱から3分強くらい。断章っぽさが、そこに目立っている。
その断章性が、もっともきわだっているのは、カナル4の作品ら。たとえばその最新アルバムである“Echtzeit”は、大量39コものトラック入りだが、しかしその演奏時間は、ほんの約33分間。

──という断章っぽさは共通だけど、しかし名義によって、音楽のスタイルらは少々違う。たぶん、意図的に使い分けられていそう。

まず、テレビCMの音声にまみれたオンパレードづくしの大会で、シグナルウェイヴ以外の何でもありえないのが、カナル4。
いっぽう、そこまでのハードコアなシグナルではなく──もう少しソフトな、番組のアナウンスやテーマ曲らのサンプルを使っていそうなのが、スポーツ三千。
そしてVVVXは、シグナル系ではなくて、《レイトナイト・ローファイ》()のように聞こえる。ただし、調べたら実はそのネタたちが、広い意味での《シグナル》だったりするのかも?

このように、どうせヴェイパーだからテキトーかと思いきや、ヤることが意外にシステマチック(?)。これはチュートニック(Teutonic)でゲルマン系のお人、その性向ゆえなのか。

と、そのくらいに状況を見た上で。そしていま、カナル名義の最新アルバム“Echtzeit”(独:リアルタイムの意)を、レビューでもしてみたいような感じだが。

しかし述べたようにこのアルバムの構成が、ミニマムでミニミニな楽曲らの羅列。何か考えようとしてる間に、どんどんと……曲らが次へ、また次へ……と、すぐに移ってしまう。
そんなであるのでトータルの感想は、〈いや〜、まさにしゃべりがドイツ語ですなァ〜、そしてCMですなァ〉──という、実にバカみたいなものに(!)。

けれどもけっして退屈ではなくて、何だかずっと響きが気持ちいい。そして、エキゾチックな興味が満たされるような気もする。
だいたいカナル4のアルバムたちは、“すべて”こんなようなモノなんだけど。けれどこの最新の“Echtzeit”が、もっとも構成にキレがあるっぽく聞こえるんだよね。なぜか。

ゆえにその約33分という演奏時間は、娯しみのうちに、あっという間にすぎてしまう──。そうしてラストのトラックが、“Gute Nacht”(独:オヤスミナサイの意)と題された、放送終了のテーマ曲みたいであることは、シグナル系のアルバム構成の《様式美》みたいなものだといえよう。
では、オヤスミナサイ。

image感覚: last night from the coverages (2020) - メディアの中の 死と生 と《ジャンク》

サンパウロ在住というヴェイパーウェイヴ・クリエイター《image感覚》、またの名をブラジル404()。2019年から活動中のよう。
このイメージさんは、すでにおなじみシグナルウェイヴ界の有名人《天気予報》、そのファンでありフォロワーであるらしい。よってご本人の作品らも、たぶんそのほとんどがシグナル系()。そして。

〈シグナルウェイヴは死んではいない、しかしボクは……。〉

と、何かせつないことを、Bandcampページの自己紹介欄で述べておられるんだよね。

さてこのイメージさんの作品ら、その多くはポルトガル語の、たぶんテレビからのサンプルを用いているもよう。
けれど単純なタレ流しではなく、バカみたいな繰り返しでもなく、また過剰にノイズっぽくもならず。そして楽曲の構成がいちいち凝っていて、興味深いし退屈しない。

いちばんいいと思った彼のアルバムが、“last night from the coverages”なんだが。説明を見たらこの作は、シグナル系の有力レーベル《night coverage》の諸リリース()、それらのサウンドカットアップであるらしい。マジっスか。
あまりそういうツギハギっぽさが感じられないのは、それだけ構成が巧み、ということなのかも。ヤるっスねえ〜。

で、この音楽をユルっと愉しみながら、思うんだけど──。こうしたシグナルウェイヴという音楽は、いったい《何》をしているものなんだろうか?

……シグナルに限らずヴェイパーウェイヴは、メディアの使い棄てた《ジャンク》らを、再利用する。それらの汚さ見苦しさをクローズアップし、またいっぽう、それらの秘め隠していた美しさを再発見させる。

では、何のためにそんなことを?

それはもちろん、まず愉しみと《美学》の提供。かつそれと同時に、うちらがその中で生きているメディア環境、その相対化のための、試みであり抵抗だろう──と、考えるんだよね。

と、そんなことを思っていたら聞こえてきたニュースが、《女性プロレスラー木村花さん死亡》という話だった()。
ことの詳細は、そんなに明らかではないが。テレビの《リアリティ・ショー》で彼女の演じた悪態が、SNSとかインターネットで非難の渦を呼び、それに耐えかねて自殺してしまったのか──、という憶測が語られている。

メディアから出たことが他のメディアに及び、そして薄っぺらな《リアリティ》の演出が、死という《リアル》に帰結する。これを「いたましい」と言わなけりゃ、次に炎上するのはオレなのかも知れない、だけど。
しかし、どういう実感も持てない──驚きしかない。そもそも、まったく未知だった人だし──。

むしろ。これもまたリアリティ・ショーの悪ノリした演出で、〈じゃーん!〉とか言いながら、ひょいと生還してきそうに思えるんだよね。いっそう強力な《リアリティ》があるってもんだ、そういうオチのほうが。

メディアのことはメディア内で完結させたらいいものを、リアルの側に余剰がはみ出した。さきに述べたような《相対化》をできず、つまりメディアと自分との適切な距離を保てず、押し出され、あちら側に呑まれてしまった。
言い換えてこの女性は、メディアによって使い棄てられた《ジャンク》と化した……という事例なのだろうか。

とすればオレらのヴェイパーウェイヴ、その力不足と広報不足のせいだ。そこに責任を強く感じ、反省しなければならない。自分もこれから、いっそうここをアレせねば。

──そういう結論しかないんだが、でもつい、もう少し掘り下げてしまえば。

関連してちょっと調べていたら、〈これを機会にSNSなんてくだらねーことを皆ヤミロ〉、みたいな提言が見つかった()。……なるほど。
けれどもそういうご卓説は、〈何でもいいから自分をアピールしたい〉、という人々にある《欲望》を、無視した空論ではないだろうか? 《何か》を持つ者はそれを自慢し、そうでない者らはその信者またはアンチとして、だんこ自分らをアピる。それらを《彼ら》は、けっして止められない。

いまの人間らはメディアから自分を守らねばならないが、しかしその前に、自分をメディアにさらけ出したいかも知れない。はっきり言ったら有名になりたい、たった15分間でもいいから名声を得たいっ!
つまり、以前にカール・バルトスの記事で扱った、“15 Minutes of Fame”への希求()。そしてそのためには、生命さえをも差し出す者がいる、という現実。

英語のネットを調べてみると、“15 Minutes of Fame”にプラスして、“Death, Suicide”──、こういうキーワードたちで、ヒットする記事らがけっこうある。
それらの中でも、いま興味深いのは、リアリティ・ショーへの出演で多少だけ名声を得たシロートたちが、ふと自殺してしまうことが目立って多い、という話。
その記事、そのタイトルは、「15分間の名声はアナタを殺す?」)。

役者が芝居で何かを演じる場合なら、フィクションのワクの中に守られて、比較的セーフティかも。しかしリアリティ・ショーという擬似ドキュメント、そのヤラセに加担することは、本人のパーソナリティに対し大いに有害でありうる、ということなのか。

だいたい、現代のメディア環境ってものが──などとまで話を拡げても、いいことはなさそうだけど。それにしても、むかしのかしこい人々は先を見すえていたな、と感じ入ることが、近ごろ多いんだよね。

マーシャル・マクルーハンという《メディア論》の元祖の人は、1960年代に、活字文明の衰退みたいなことを説いた。そうして論理的思考がすたれたあとの、《フィーリング》万能の時代を、ユートピアとしては描いていない
むしろ、テクノロジーを手にした理性なき野蛮人らの横行、全世界的スケールの偏狭なムラ社会の成立。そんなことになりげ……と、人類の未来を見ていたようだ。
そうして彼の予見した未来が、われわれのいま現在なのだろう。マクルーさんの主著のひとつ、グーテンベルクの銀河系(1962)によれば──()。

広大なアレクサンドリア図書館に向かう傾向の代わりに、世界はまさに幼児のサイエンスフィクションのように、コンピューター、電子の脳になりました。そして、私たちの感覚が私たちの外に出たとき、ビッグブラザーは中に入ります
したがって、このダイナミクスに気づかない限り、パニックテロのフェーズにすぐに移動し、部族の太鼓、完全な相互依存、および共存の重ね合わせの小さな世界にぴったりと適合します。
...テロはあらゆる口腔社会の正常な状態です。その中ですべてが常にすべてに影響を与えるからです。

(グーグル翻訳の出力)

また、そのマクルーハンに影響を受けたっぽい筒井康隆。彼は長編小説「48億の妄想」(1965)で、すべての大衆がマスメディアに対して全面的に服従し、それに迎合しまくるディストピアを描いた。人々の生活のすべてが《リアリティ・ショー》でしかなくなる──という、オレなんかには吐き気が禁じえない未来社会を。
けれども現在、〈むしろそうなるべきだし、じっさいそうなりつつある〉という見方がもっぱらなのだろうか。すまないがオレなんかには、吐き気が禁じえないことに。

そんな吐き気がもしかしたら、ポスト・インターネット時代の子守唄であり労働歌──すなわちヴェイパーウェイヴの、根底にある何かだったりするのだろうか?

ASTRO TV SYSTEM・空気系・No Dialect: SIGNALWAVE IS DEAD (2020) - シグナル系は荼毘に付したよ

〈シグナルウェイヴは荼毘に付したよ… 骨はBandcampに埋めてある〉。ついつい使いたくなる《タフ語録》でいうと、そういうこと?
まあタフ関係のことは、あとで軽〜くご説明いたすとして。この記事の主題みたいなアルバム、“SIGNALWAVE IS DEAD”は、こういうものであるもよう。

まず、2020年4月の記事でご紹介したように、シグナル系ではちょっと名前の売れたクリエイターの《天気予報》、その人がヴェイパーウェイヴ界からの引退を表明()。
で、ハッキリ言うけど、〈どうせすぐ、名前を変えるなどして戻ってくるんだろうな……〉くらいに予想していたのはオレだったんだよね。それも別にいいんだけど。

で、その展開が意外と早かったんだろうか。かつ、ヘンに隠し立てもせぬいさぎよさで(?)、お天気さんはこの5月、《No Dialect》という名でカムバック。

そしてシグナル系の同志であったクリエイター2組とともに、挑発的にも(?)「シグナルウェイヴは死んだ」という、論争誘発的なアルバムを発表。
そしてシグナルが死んだらどうする、どうなるかというと、CMパンクという後継のジャンルを立ち上げるべき、のようなご主張みたい。

そして《パンク》と言われたら、少しくらいはスカッとするようなキレのあるサウンドを期待してしまうけれど──。しかし今アルバムを聞いての印象は、〈どっちかつうと、インダスでノイズですよね?〉。

……古い話だが、ロバート・フリップジョン・ライドンが〈ロックンロールは死んだ〉と言い、わりとさいきんHKEは、〈ヴェイパーウェイヴは死んだ〉と言った。
それらの間に〈アシッドハウスは死んだ〉とかいうことを、誰かが言っていそう。けれどその発言者が無名すぎて、記憶にも記録にも残っていないのだろうか。

そうして現在、シグナルが死んじまったそうだけど。しかしココにまでいたる過程が、実にみすぼらしい縮小再生産かのように、ハタからは見えていそうな気が。

また、これにならって〈スラッシュウェイヴも死んだ〉、〈レイトナイト系も死んだ〉、そんなことらを言うだけなら実にカンタンだし。かつ、何となく少しはカッコいいような錯覚をも娯しめそう。
ただし、このヴェイパーウェイヴとかいう腐臭にまみれたアンデッド系ポップを真に死なせきるには、もっともぉ〜っと斬れ味のいい武器らを用意する必要があるんだよね。そのことが、誰にもできていない。

で、ちょっとタフ語録の話。猿渡哲也先生の名作劇画「TOUGH―タフ―」の第22巻、主人公の伯父であり大悪党を気どるトリックスター《鬼龍》、この人が死んだと伝えられる。鬼龍の父であるジィちゃんが、その遺体を〈もう荼毘に付したよ〉、と述べる。

だがしかし。ゴキブゥリ並みの生命力と最強の悪運を誇る鬼龍ちゃまが、そこでほんとうに没してしまったのかというと?

もっとヒドい例だと、かの魁!!男塾のメンバーたち多数が、やたらいろいろな局面で、〈死んだあッ!〉と記述される。そうしてわれらがシグナル系やらあれこれの生死もまた、そのレベル? まんがくらいの軽さをもって、死んだり生きたりすることも、そのゆかいなシャレ活動の一環なのだろうか。

EMBA Soundsystem: Aesthetic (2018), 終末抑鬱症 (2019) - あなたの両親のセックスをチョリソー

マインクラフト讃歌()のところで少しご紹介したけれど、《EMBA Soundsystem》は、メキシコ在住と称するヴェイパーウェイヴ・クリエイター()。ヘンなことを書くとトペ・コンヒーロか何かが跳んできそうなので、気ィ引き〆てイクよ! テキーラ

さて、エンバさんのやや初期のアルバム、“Aesthetic”は、たぶんレイトナイト・ローファイ()と言えるみたいな、全13曲・約30分間の作品。
そのほとんどのトラックは、まいどのレイトナイト系サウンドなんだけど、しかし8曲めの“Je Veux Te Voir”(あなたに逢いたい)だけ、ちょっと変わっている。女声ボーカルをフィーチャーしたエレクトロニカみたいで、サンプリングくささがない。
……で、そこはけっこう面白いかな、ってのがオレの感想なんだけど。

そのいっぽうで今アルバムは、ヴェイパー関連サイトの頂点であった《サンブリーチ》にも、短く紹介されており。いまその評言を読んで自分は、ダイビング・セントーンからのウラカン・ラナを喰らった気がしたんだよね()。

ああ、「美的」という言葉()。蒸気波の世界に取り囲まれて、二度と同じように読めないという言葉。冗談です、Vaporwaveは素晴らしいです。
Aestheticは、EMBA Soundsystemによる新しいフルレングスのリリースで、日本のレーベルSeikomartから新たに入手できます。Aestheticは、あなたの両親が完全にセックスしたインストゥルメンタルなスムースなジャズや他のトラックからのリバーブされた音楽をフィーチャーした純粋なサンプルキュレーションアルバムです。

(グーグル翻訳の出力)

うぐぐぐっ、プランチャ・スイシーダ、そしてタコス! どうして自分には、こういう面白いことが書けないのかとっ……! その悔しさにオレはマジでいま歯がみし、壁か何かをブン殴りたい気分でいっぱいです。チョリソー。

なお、2018年の11月末からサンブリーチは更新を休止中なので、ほぼすべり込みで、エンバさんの「エセティック」(18年10月発)は、そこでの紹介という名誉を得たことになる。おめでとう。

そうしてそれから、エンバさん。そのレイトナイト系の評判がもうちょっとだったせいでもないだろうけど(?)、以後の作品では重〜く暗いのが、オレにとっては印象的。
彼のいずれも2019年のアルバム、“Darkness of Tomorrow”だとか、「終末抑鬱症」だとか、タイトルからしてもう。
聞いた感じはダークアンビエントだが、たぶんヴェイパー式の邪道な手法で作ったものと考えられる。また後者については、ダークジャズのように聞こえるところも多い。

いや実に暗いんだけど、しかし自分もまたウツっぽい人なので──ちょうどいま、サンブリさんから強烈なラ・ケブラーダをいただいちゃったせいもあり──、みょうにしんみり共感してしまったりもするんだよね。おお、グアカモレ〜。