エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

(de)generateせいはく / Maid Dresses - AIで生成されたらしいヴェイパーたち

いま現在の2023年・春あたり……。〈AIの進化がスゴい〉ようなお話が、よくネット上では、言われているようです。

何がすごいのでしょう?

たとえば〈チャットGPT〉とかいう対話型AIがあって、何か質問すれば、それらしいことを何でも答えてくれるらしいです。

で、人々は……。

自分自身が〈知っているつもりのこと〉について、AIに説明を求めます。
そこでAIが、とんちんかんに思える答を返せば、〈まだまだやナ!〉と、安らぎの笑みを浮かべます。
逆に、それらしいと思える答をAIが戻してくれば、〈ほほう、やるやんケ〉と感心もしたりします。

そしてこの過程で、知識の量は、何ひとつ増えていません。

ゆえに、くだらない!!……と言いすててしまうのも、しかし早計らしくて。

というのは──。人智の最高峰がふつうに集う場と言われる《タフスレ》の、かしこい先パイから聞いたのですが──()。
このてのチャット型AIのすぐれたものは、〈まとめるのが上手い〉という点を見て、活用できるそうなのです。

ということは、あれでしょう……。ウィ・キペ・ディアの記事なんか、AIに書かせたほうがいい、ということになりませんか?
あれはもともと、既存の情報をまとめただけ、というのがポリシーのようですし。しかも、現状はへんな執筆者らによる過剰な作文とか、または疎漏にもほどがあるような記事とかが、たいへん多いようですから──少なくとも、ニッポン語のそれについては。

🦾 🤖 💥

ですが、しかしです。
電子的に流通している情報たちを、単に多数決的にまとめただけの《思考》であれば、〈陰謀論は正しい〉とか、〈代替療法らは有効である〉とか、そういう結論に導かれることが、大いにありそうです。

よって。そんなことをAIさんが言い出さないように、けっきょく誰かという人間めいた“もの”が、古くからの権威や良識めいた知見らを参照しつつ、見守っていなければならないのでしょうか。

いや、そもそもです。

私なんかは〈陰謀論代替療法たちは、“すべて”がフェイク〉と見ているとして、だがそうじゃない人々が、数多くいるでしょう。
そしてそういう人々が、正しいものとしての陰謀論らを広宣流布するAIを、みごとに構築なさいますでしょう。

〈正しさのきわまりを、マシーンに対して求めること〉──これを《本能》と呼んではおかしいですが、そういう傾向が人間らには、根深く強く、ある気がします。

マシーンらの生成物らの特徴である〈電卓的な正しさ〉を、“すべて”に対して、求めてくるわけです。
または。〈電卓的な正しさ〉の正しさという目の前の証拠から逆に、“すべて”についての正しさのきわまりを、マシーンらに対して求めていくのでしょう。

……手塚治虫先生のすぐれた洞察は、その代表的シリーズのひとつ火の鳥 未来編』(1967)で、統治の“すべて”を電子頭脳らにゆだねた人類の滅亡を、描いています。
そのときは西暦3404年のこと、とされて。
その統治する電子頭脳らは、現在ある〈Siri〉さんか何かのように、女性めいた疑似人格をそなえたAIだと言えましょう。主人公たちの住む都市国家〈ヤマト〉では、その彼女が、〈ハレルヤ〉と呼ばれています。

そしてこのハレルヤさんが、旧ソビエトめいた都市国家へ亡命しようとしている主人公の処遇をめぐって対立、そちらを治めるAIの〈ダニューバ〉さんと、直接の談判におよびます。
ところが両者のご交渉は、感情的な言い争いへと堕して、それがとめどなくエスカレート……。ついには、全都市国家間の核戦争が勃発!
……これが『火の鳥』シリーズにおける、ほぼ全人類の終焉だと見られます。

さて、これを見れば。少なくもなさそうな、お賢い読者さんたちは、こう考えなさるかも知れません。
そもそもそんな、核戦争がスタートされるような〈アルゴリズム〉がおかしいでしょう、と。

ですけどしかし、核戦争がなされないようなアルゴリズムこそが〈正しい〉ということを、いずこの誰が、正しく保証するのでしょうか。

現実の現代の世界でもそうですが、〈ヤるべきときには、ヤる!〉ということを前提におぞましくも、核兵器らが開発・配備・維持されているのではありませんか?
マンガであるものとしてこれはもちろん、単純化されデフォルメされた表現では、ありますけれど。しかし〈正しい〉演算の結果としてAIが、そういうことをしてくる可能性はないのでしょうか。

そうして……手続きだけの正しさが、希求されている完全な正しさの代替品として、人間たちへと押しつけられます。
そうして……いずれは人間たちは、その代替でしかない正しさを、ちっとも疑ったりはしなくなるのでしょう。『火の鳥 未来編』の主人公たちも、ほんとうの難題や生命の危機らに直面するまでは、まったくそうであったように。

ジャック・ラカンさんが正しくお伝えくださったように、〈真理についての真理は存在しない〉──で、あるのですが。

『TOUGH 龍を継ぐ男』330話より、猿渡哲也先生がしつように再利用なさり続ける原爆キノコ雲の画
『TOUGH 龍を継ぐ男』330話より:猿渡哲也先生がしつように再利用なさり続ける原爆キノコ雲の画

で、まあ。えーとです……さて。

AIであるような非・人間めいたシステムに、《真理》を求めていくことのお話は、これまでとしまして。

そのいっぽうの、人間らの娯楽になるような表現をそれに求めていくこと──その方面の可能性──まあ違うんですけれど、しかし、何か同根のところがなくもない感じ──。

それで、ご覧のブログの専門分野であるような、例のヴェイパーウェイヴというあれのお話です。

昨2022年の12月──。〈AIによって自動生成されたヴェイパーウェイヴ〉と称するアルバムが2点、リリースされました。

まず先んじたのは、《(de)generateせいはく》を名のる人による、“i take no credit. everything is generated.”です()。15曲・78分を収録。
かつ、これのアルバムアート──D・ホックニーさんの画風が超ずさんに真似されているような──もまた、AI生成によるものだと、アナウンスされていた気がします。
だがいま現在はもう、AIアートでこんなにまでおそまつなものは、逆に出てこない感じですけれど!

それで音楽はというと、まあいちおうヴェイパーであるかのように、聞こえなくもないが……くらいのしろものです。
ああ、いや。これのリリース直後に初めて聞いたときには、もう少しいいような印象だったんですが……!

さて、これの作者の何とかせいはくさんの正体は、おそらくですが、ヴェイパー界きってのお騒がせ人物である、《COSMIC CYCLER》さんであろうと、私は邪推しています()。

この世界で一般に《CC》で通っている、このCCさん。その実体を隠しながらヴェイパー界で、異様に手びろく、ご活躍・暗躍されているふしがあります。──と、臆測しています。
そしてその人の最悪のふざけた面が、《DREAMTONE BANGERS》と名づけられた、ゴミくささがきわまっているレーベルの運営に出ておりまして()。
そしていま点検しているアルバムもまた、そこから出たものです。

そして。その何とかバンガーズのツイッターアカウントにて、〈この楽曲らは、このAIっぽいサービスによって作られたんだ〉という一種のタネあかしが、なされていました()。
それで、同じサービスで私もちょっと、やってみたんですよね。すると、〈なるほどね……〉くらいのサウンドは、生成されましたけれども……()。まあそういうものが、すでにあるということです。

それと、もう一件。せいはくさんに続きまして、バーバー・ビーツのプロデューサーとして知られる《Maid Dresses》さんが、すべてAI生成というアルバムをリリースされました。
そのタイトルは“ILLUSIONS”、11曲・29分を収録。

それで──。さっきも述べましたんですけれど、リリース当時に聞いた感じでは両作とも、もうちょっといいような気がしましたのに。
しかしいま現在は、〈何も別に、こんなものを……〉という印象になっているんですよね。

──だいたいのところ。AIのアルゴリズムの偏りゆえか、ヴェイパー独自のあのテンポ感が、レゲエの遅みと混同されていそうなところが、正直あまり気に入りません。

いや。もともとくだらないヴェイパーウェイヴですから(!?)、無能なAIに制作させたところで、大して変わりがないかとも思っていたんですが……!
いくらクソ安いヴェイパーごときでも、何やら作者めいた人(々)の意図とか意思とかみたいなものが、どうにかその貧しい愚かなサウンドたちを、かろうじて少しは活気づけていたのでしょうか?

いや。ここでメイドさんの名誉のために、付言しますが。ふだんのこの人の制作物は、もっといい感じです。私においてはその人の、22年・11月のアルバム“Extra Pain”が、とても印象的であり続けています。

理髪店ビートはその全般に、根ぶかい苦悩からの逃避のため、すぐ目の前の確実な快感と痛覚らを強調し、そこに集中してかかろうとする。そういうところがあると思います。
しかしメイドさんサウンドは、わりと痛覚の側に傾きがちで──。床屋系ヴェイパーとしては苦すぎる気もするんですが、しかし奇妙な共感があります。

……と、いうわけでなのでしょうか。
イカモノを好む傾向のかなりある私でさえも、あまり……とまでの反響を得たせいか、その後、AIを用いたヴェイパーの制作が、あまり追求されておりません。少なくとも、私の眺めている範囲内では。

とはいえ、しかしです。

AI生成によるテクストや画像らもそうなんですが、質がいまいちだったとしても、とりあえずカタチさえできているものであれば、究極のコストダウンを目ざす過程にて──人件費削減と納期短縮のため──人力の生成物らを押しのけて、採用されてしまいそうな気づかいが、きわめて大いにあるでしょう。

たとえばこの現代に、安いものでは《ハンバーグ》だと称しながら、ふかしぎ奇妙なタンパク質を練りあげて作っているものが、多くありますが。
それに等しい合成品のテクストや画像やサウンドたちのはんらんが、私たちを待ちうけているのでしょうか。いや、すでにもう……。

そして、そういう方向に流れてしまいそうな世界の中で。
たとえば《ミューザック》や《ライブラリー・ミュージック》などの貧しい音楽らについて、ずっと私たちの感じてきた一種のあいきょうや愛着などは、いったい何だったと考えられるのでしょうか?

AIが生成した曲らをBOTが聞くという音楽のユートピア、また近づきました❢

せいはくさんの“i take no credit…”のリリース当時、作品紹介としてそんなことを私は、ツイッターに書いていました()。
いずれはそういうユートピアの実現もあるとして、その門が、私ごときには閉ざされているような──そんな寂しい気もしています。


“Vaporwave, auto-generated by AI” - The experiments

[sum-up in ԑngłiꙅh]
In December 2022, two albums entitled “Vaporwave, auto-generated by AI” were released.

The first one was “i take no credit. everything is generated” by someone who calls themselves (de)generateせいはく. It contains 15 songs & 78 min.
Next was “ILLUSIONS” by Maid Dresses, known as the producer of Barber Beats, with 11 songs & 29 min.

Nope… It's a crappy Vaporwave from the start, so I was wondering if the incompetent AI produce it would make no much difference.
However, I didn't feel that there was much more value in both pieces than “it sounds Vapor-ish, at least, barely”.

No matter how cheap the Vapor is, but the will or intentions of some kind of author-like people had managed to revitalize those poor stupid sounds just a little…?

Especially. The usual works by Maid Dresses present the contrast between pleasure and pain that Barber Beats in general does, leaning on the side of pain. An example is the album “Extra Pain” released in November 2022. I am quite sympathetic to those.
Even if the sound is not widely liked, however, the intention behind it gives the works their existence value, …, etc., and a strangely retrograde humanist impression came out of me!