エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

❦✩✰✭♤♡♧♢✭✰✩❦: vaginal cut (2022) - 罪なきものに、与える罰

いや、その人の使用しているステージネームらが、あまりにも多すぎて……。
まあ総称としては現在、《eljen.wmv》を名のっている感じなのですが……()。
しかし、つい数ヶ月前まではその総称が、《顔のない音楽》だったと思います。

今後もちょくちょく変わるのかも知れません、そういうヴェイパーウェイヴのプロデューサーが、ポーランドのトルン市で活動しているようです。

……それもまあ、ほんのさいきん、2021年の秋から活動中のようなので、まだ《歴》は一年間にも満たない感じ。ではありながら、すでにこの人による作品らの数が、とても膨大です。
いま現在Bandcampに出ているものらを数えてみると、アルバムと呼べるものが89作、そしてそれらの含むトラックの数は353個、というからもう実に!

そしてそれらの作品に付された芸名のあれこれが、えーと、21種類くらいになっている風。いやはやですね!

それやこれや、この人──いま仮に《エルジェンさん》と呼びます──について、説明めいたことらを書こうとしてみたのですが。ようするに……。
とんでもない量の芸名らを使い分けながら、スラッシュウェイヴを中心に、もろもろのサブジャンル──ドリームトーン、シグナルウェイヴ、フューチャーファンク、ついでにハーシュノイズ(!)などなど──のヴェイパー関係トラックらを量産しすぎているお人、と言えそうです。

そして、ノイズとかは考慮の外に置きつつも……。エルジェンさんによるヴェイパー系の作品たちが、悪くはないけどもうひとつかな、と感じていたことは白状します。
どれもそれなりには成立しており、聞くにたえないようなものはめったにないのですが、しかしひと味足りない気が、と。

しかし、そして、ところが。
この人の2022年7月・発の最新めいた作、《❦✩✰✭♤♡♧♢✭✰✩❦》といういやな名義によるEPサイズのアルバムが、いやなタイトルを付された、“vaginal cut”です。全3曲・約8分を収録。

そしてサウンド面を言うと、この“vaginal cut”は、エルジェンさん初のハードヴェイパー()。しかしそんなことより、アルバムアート等のどうしようもなさが、まず衝撃的ですけれど!

(あまりやりたくないことですが、差しつかえがなくはない気もするので、ここでは画像をモザイク処理の上で掲載していることをお許しください)

Softener: Calm (2021) - Bandcamp
夢のショー (eljen.wmv): 弁財天の門 (2022) - Bandcamp
全5曲・約4時間というドリーム
トーンの大作!

近ごろ流行ってもいないハードヴェイパー──やりたいことだけやってとうとつに終わってしまう断片ら三つ──、かつまたどうしようもないカバーアート、そして不快なタイトル。さらに、いちいち書き写しませんけれど、各曲のタイトルらも悪趣味です。

そのような今作にふれて、初めて私は、エルジェンさんに強く共感を覚えたんですよね。
そのいちばんの理由は、楽曲らが意外にいいというか、初めてこの人のオリジナリティ──出さなければやまない音──、これなのかな、という思いこみをきたしたんですけれど。

このアルバムのトータルに込められたフィーリング──おそらくは、何かと“すべて”が頭にきているということ──を、ノイズとかにしてしまえば、ちょっとかんたんのような気がします。
そうではなくて、ハードにしても、ヴェイパーにおさめているところに価値があります。今21世紀のパンクロックであるヴェイパーとして、あるべき姿のひとつです。


❦✩✰✭♤♡♧♢✭✰✩❦ (eljen.wmv): vaginal cut (2022) - everything/anything is disgusting

[sum-up in ԑngłiꙅԧ]
A Vaporwave producer who now goes by the name eljen.wmv, is reportedly from Torun, Poland ().

This person seems to have started his activities in the fall of 2021, but has already released a tremendous amount of works.
Using a multitude of stage names, eljen has been churning out tracks in various Vaporwave subgenres, with a focus on Slushwave, and Dreamtone, Signalwave, Futurefunk and Harsh noise (!), etc.

Despite such a remarkable existence, however, I never felt that his works had any great outstanding merits. They were not bad, but I felt they were not that outstanding, to be honest.

But then.
His latest work, released in July 2022, an EP-size album under the obnoxious name "❦✩✰✭♤♡♧♢✭✰❦❦" is the obnoxiously titled "vaginal cut". It contains three songs, eight minutes in total ().

To look at first, the album art is in bad taste. On the other hand, the sound is a Hardvapour, a first for eljen.wmv. Three fragments that just do what they want to do and end abruptly.

And when I heard this, for the first time, I felt a strong sympathy for eljen.
The main reason for this is that the music is surprisingly good, and for the first time, I was able to feel the originality of eljen, the sound that this person have to produce.

The total feeling of this album, perhaps it is that everything/anything is disgusting irritating vexing, and it seems easy to express it with something like noise.
Not so, the value lies in the fact that it is hard but Vaporwave. This is one of the ideal forms, Vaporwave as Punk Rock in the 21st century.