エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

《rabbithole》 YouTube ch. - 理髪店ビートの栄光、またそこに落ちる陰影

《rabbithole》、ウサギさんの穴──それは、ヴェイパーウェイヴのストリーム専門のYouTubeチャンネルです。
これを運営なさっているのは、トルコに在住される方であるもよう()。そしてそのチャンネルが、現在シーンの注目の存在である、と言えそうなのです。

このウサギの穴の掘削……ラビットホール・チャンネルの創設から現在まで、ほんのわずか2〜3ヶ月の間に、そこへきわめて大量の動画が投稿されています。およそ、200本以上でしょう。短いものは少なくて、ほとんどがアルバム単位の丸揚げです。

しかも、そのセレクションに強めの特色があります。
動画らのたぶん七割くらいまでが、《バーバー・ビーツ/Barber Beats》──私たちの言う理髪店ビート、床屋系ヴェイパー作品なのです()。

ちなみにこのラビットさんからの動画で、現在までの最大のヒットは、われらがアイドル──かつヒーローにしてヴィラン《OSCOB》さんによる初の床屋系アルバム傑作、“praise the sun god”です()。
これがアップロードから約3週間で、視聴回数が7万オーバーへ! かのOSCOBさん本人も、これにはすなおに、ごマン悦であられるもよう……〈グェッヘヘッヘヘヘッ、ありがとよっ〉とばかりに。

あ、話を戻し、しかもです。
私なんかも床屋系は大好物で、わりと熱心に漁ったり掘ったり、している気がしますのですが……。
だがしかし、ラビットさんの発掘力にはきわめて舌をまき、大悦びで脱帽します!
〈いまだ現在マイナーであるこれたちを、よくまあ見つけてくるものだ!〉と、日々感服させられているのです。

たとえばの一例ですが、ペルーの人によるらしいバンド、Memoria Oculta》……()。
この床屋バンドは、今2022年の春から、あれこれとリリースを始めたばかりのようです。活動歴は、まだほんの3ヶ月弱か、と見られそう。
そうであれば、いまだ名が通っていない──まさに隠された、“オカルト”な存在であったとしても、ふしぎはありません。いやようするに、私が存じませんでした。

しかしそのレベルのものを、やすやすと掘りだして広く世にご紹介されている、ラビットさんがおられる……というわけです。

しかもです。各動画の作りも実にしっかりしていて、迷うようなところが何もありません。
きわめて大したチャンネルです! ぜひためらいなくサブし、とても愉しんでください。

──そして。

こうしてラビット穴の動画たちを次から次へ視聴したりしていると、いつしか私は、恐ろしみを少し感じてしまうんですよね。逆に。
つまり。この《穴》の中にあるものたちが《音楽》そのものであり、他には何も要らないかのような気がしてくる……そういう怖さです。

いや。もしそこに床屋しかないとしたら、少しは気分を変えたくなることも、ありそうなのですが。
けどしかし、残りの三割の他種ヴェイパーたちもまた、深く共感できるセレクションであってみれば?
たぶんラビさんと私とは、この分野での嗜好や趣味などが、近親的すぎるのかも知れませんね! イェイッ

さてここまでは、すごくいいニュースです。
そして残念ながら以下、理髪店のつながりで、ひとつ哀しいニュースをもお伝えせねばなりません。

少しでも床屋ビートに興味をお持ちである方々は、必ずや、ご存じでしょう。アーティスト《Macroblank》さんの名を、そしてそのすぐれたサウンドを()。
たびたびお伝えしていますように、バーバー・ビーツというサブジャンル名は当初、このマクロブランクさんの作品らを呼ぶために、生みだされたものです。

Macroblank: dungeon of lust (2022) - YouTube
Macroblank: dungeon of lust (2022) - YouTube
このアルバムからも1曲が削除された…

まず床屋系のスタイルの、ほぼ“すべて”──それは、かの偉大な《haircuts for men》さんによって、独自に開発されました()。2014〜18年くらいの間に。
そしてそのスタイルをマクロさんが、ただ単に踏襲したのではなく、さらに洗練させていったこと。それが、この理髪店ビートをいっこのジャンルにまで成長させました。

私なんかもそのデビュー当時から、大好きで注目していましたけれど。
しかもこの1年ほどの間に、マクロさんの評判がヴェイパーかいわいの垣根を越え、大きく拡がりつつある手ごたえあり! そこにまた、小さくはない悦びと驚きを感じています。

じっさい、ヴェイパーの姉妹&兄弟らの温かくやさしみあふれるシーンから、その外側にまで名をはせるようなアーティストらが、近年は少なくなっています。マクロブランクさんは、この3年ほどの間では、その数少ないひとりでしょう。
そしてそれが、“理髪店ビートという新ジャンルの旗手として”、です。これにより、新たな《美学》の開発という一大タスクが、どれほど重要で必須であることか──という定理がまた強く知れます。わかりみの深さ!

と、ああ、そこまでは実によかったのですが……。そのようにして、大きな栄光に近づきつつあるマクロさんから、昨日の未明(日本時間・2022年6月18日3時)、悲報がもたらされました()。

私のアルバムの3作と、あわせていくつかのトラックたちが、〔著作権関係のクレームを受けた結果、Bandcampにおいて、〕テイクダウンされました。
残念ですがおそらくこれらは、二度と陽の目を見ないでしょう。デジタルでも、フィジカルでも。

ああ、いや……。先日のサンプリング関係の記事でも述べましたが、こういうことはヴェイパーウェイヴで、常にありうると思っているのですよね()。

とくに私たちのバーバー・ビーツは、〈素材らにあまり大きく手を加えはしない〉ということが、その一大特徴です。それはもう、ヘアカッツさんがその原型を作成なされたときからの、伝統として。
であるにも、かかわらず──ちょっとスローダウンして音質をボヤかしているだけなのに──素材らよりも、ずっとすばらしい響きを実現! そのことを大きな誇りとしながら、私どもは愉しんでいます。

かくて。始祖ヘアカッツさん以来、私たちはサウンドの盗みを堂々と誇り、かつまた、略奪者らに栄光の注がれることさえを求める!
とは、まったくこのクソ床屋どもの所業らがひどめですが。しかし音がいいですから、その“すべて”が、赦され賛美されなければなりません。

──ですけれど、そういうわけなので、素材がかんたんにバレやすく、そして文句を言われやすいのです。床屋系は。
もうずいぶん過去のことになりましたけれど、ご本尊のヘアカッツさん自身が、すでに一発きついのを喰らっておられますしね!(

Maykretch: 中世のメロディー (2022) - YouTube
Maykretch: 中世のメロディー (2022) - YouTube
こちらもペルーの新進の床屋さん
独自の哀愁フィーリングを提示!

そういえば。これは、確かもう半年くらい前のことですが──。

Redditのヴェイパー板に、〈バーバー・ビーツはパクってるだけにもほどがある!〉、といった趣旨のスレッドが立って、少しくらい話題になりました。
つまんなそうと思ったので私は見ていませんが、論戦がやや、盛りあがっていたようです。
いっぽうのこちらのサイドでは、〈うっせーなヴェイパーだからそーいうもんだろうが悪ィかよ!〉くらいの強固なる信念で、評決が満場一致していたかに思えたのですが……。

しかし実は、意外とそうでもないのかも知れません。
このヴェイパーウェイヴの世界の内側にさえも、理髪師らに対する懐疑的な見方は、存在しなくもない、ということです。いかにサンプリングはなされるべきか、そこらの意見がいろいろで。

とは、考えるようなところがありますが、さいごにまた少し朗報です。

テイクダウンされたもの&されていないもの、マクロブランクさんの作品らの“すべて”は、ご本人がホストする某サーバからダウンロードが可能です()。
かつその他にも、YouTubeやarchive.orgらに、そのサウンドがあるでしょう()。まあ別に商売じゃなくて《アート》ですから、それでいいと……。

……いや、いいのでしょうか……?


“rabbithole” YouTube ch. - The Glory of Barber Beats, and the Shadows that Fall There

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
A YouTube channel called 𝙧𝙖𝙗𝙗𝙞𝙩𝙝𝙤𝙡𝙚 should be on your radar ().
It is a channel dedicated to vaporwave streams, and in just three months since its creation, it has uploaded a large number of videos. Probably more than 200 of them. And there are few short videos; most of the content is full albums.

Moreover, the channel's selection has a significant feature. Among the Vaporwave variety, Barber Beats account for about 70% of the videos.

Incidentally, the biggest hit of the rabbithole's videos to date is "praise the sun god," the first Barber Beats album masterpiece by our Idol - Hero - The Baddest Villain, OSCOB.
Within 3 weeks of being uploaded, it was viewed over 70,000 times! OSCOB himself seems to be very pleased with this, "Hehehehe!".

...Back to the story. rabbit's selection of Barber Beats is not only tasteful, but also unearthed a number of things that I had never heard of before.
Take Memoria Oculta, a band apparently from Peru. The band itself has only been active for about three months, but I can see that it is very promising.
And rabbithole easily discovers such fresh, but still little-known acts, and introduces them to a wide audience. It's a wonderful thing!

I believe that all lovers of Barber Beats, as well as fans of Vaporwave at large, should subscribe to this channel without hesitation, and have a great time doing so.

However, following those good news, I have to tell you some sad news about Barber Beats...

Macroblank, as we all know, is the foremost authority on Barber Beats. He is now gaining a reputation beyond the Vaporwave scene, gaining recognition from a fairly broad section of the underground music scene, Yay!
However, Blank himself announced earlier today (June 18 in Japan) that some of his works have been taken down from Bandcamp due to copyright claims ().

One of the main characteristics of Barber Beats, is that we "don't make too many changes to the material". This has been the tradition since our haircuts for men, the Barber King.
And yet, in spite of that - even though we only have slowed it down a bit and blurred the sound quality - it sounds much better than the materials! We take great pride in this and enjoy it.

But because of this, the materials are easily exposed, and it is easy for people to complain about them... On Barber Beats.

Fortunately, all of Macroblank's works are available for download from a certain storage server ().
And besides, you can find the sounds on YouTube and archive.org (). Not in business, we are involved in Art, so it's okay...

...No, is that okay...!?