ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

OSCOB: 宇宙ステーションV (2021), 帰宅 (2020) - 白さに輝くミスティなスペース

《OSCOB》──この名前を仮に《オスコブ》と読んでよいことにして、彼はドイツ在住を主張しているヴェイパーウェイヴのアーティストです。
2014年から活動中であり、ヴェイパーのサブジャンルほとんどのスタイルを手がけ、シーンでも一目置かれる存在のようです()。

そして『宇宙ステーションV』は2021年5月リリースの、オスコブさんの最新アルバム。タイトル通りにスペーシィなイメージをかきたてる、チルアウト寄りのヴェイパーウェイヴ作品です。
全7曲・約39分を収録、ローファイですけどきれいな響きで、ゆったりと愉しむことができるでしょう。全般的なふんいきの明るさが、この《アンビエント・ヴェイパー》というジャンルの中ではレアであり貴重です!

で、さて──。ここから少し、お話が戻りまして──。

ずいぶん前にもこの場にて、オスコブさんのアルバムをご紹介したことがあります。いまはすでに遠い2018年、そのときの作品は、ハードヴェイパーでした()。
というかむしろ、インダス・ノイズ寸前の作品で……。当時の私の印象は、あまりよくなかったみたいです()。

しかし、それから短くもない年月が、過ぎて。シーンの空気も変わり、そしてオスコブさんの方向性も変わりました。
で、彼の近年の作品らはこうした、耳にやさしいアンビエント・ヴェイパーもしくはチルアウト的なものになってきているのです。

順を追ってそれらをチェックしますと、まずは2020年8月のアルバム、“Tales from the Death Frontier”
ご本人の説明によりますと、これは1999年のプレイステーションRPGのサントラを、ヴェイパーへ加工したものだそうです。全19曲・約58分を収録。

もとはもっと勇壮な音楽だったのかも知れませんが、しかしそういうふんいきが、もはやおなじみの《ヴェイパー処理》によって、すっかり脱け落ちています。
そうして私たちに聞こえているのは、ちょっと神秘的な感じもあるチルアウト系、そしてニューエイジ風味のヴェイパーです。

──ですが、実を言うと。このアルバム『デス・フロンティア』サウンドには、少しむぞうさな作り、という印象もなくはありません。

いや、まず、もとの楽曲らを、モヤモヤの彼方のヴァイパー空間へと送り込んでいくローファイ加工。その手ぎわのすばらしさは、実に確かです。
しかしその細部を傾聴してみると、意外にゴツゴツした要素が残っている。また、密度の低いらしきところもなくはない。
よってこれは、ものすごい集中力で作り込んだ作品ではない、ようにも思えます。

けれども。そういうチカラの抜け方が、ここでは逆に効果的で、私たちの側のリラックスできることに貢献しているのでしょう。
かつ、ここでオスコブさんは、彼の新境地の入り口に立ったのかも知れません。

そして2020年9月の『帰宅』が、『デス・フロンティア』に続いたアルバムです。これがかなりの大作で、全5曲ですがその演奏時間は実に、約3時間半(!)。

しかし重厚さがまったくなくて、白く輝くようなリバーブ音のミストにやさしく包まれた、明るく聞きやすいヴェイパー作品です。
さいしょのトラックを3分ほど聞いて、もしお気に召したら、それに続く3時間、たいくつすることがあなたにはないでしょう! 読書や睡眠のバックグラウンドに、とても最適、と推せんします。

そしてこのサウンドを、ついつい《ドローン的》と言ってしまいそうですが。

しかしよく聞いてみれば、展開のスローさがきわまりつつも、メロディックかつリズミックな音楽である、と分かるでしょう。であれば、ドローンではありません。
これに似ている音楽はというと、ブライアン・イーノさんの歴史的名作『サーズデイ・アフタヌーン1984)が、ちょっと想い出されます()。あれを、もっともっとモヤかしたような感じが。

で、この『帰宅』に続いたのが、さいしょにご紹介の最新作、『宇宙ステーションV』。トーンの明るさに引き続いている部分がありますが、スケールのあまりに特大な『帰宅』に比して、そのコンパクトさを愛することができそうです!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
OSCOB is a Vaporwave artist who claims to live in Germany. He has been active since 2014, during which time he has worked on most of the Vapor sub-genre styles and seems to be respected by the scene.

And 『宇宙ステーションV』 (Space Station V) is OSCOB's latest album released in May 2021. It is a chill-out-oriented Vaporwave work that creates a spacey image as the title suggests.
It contains 7 songs and about 39 minutes, and although it is lo-fi, it has a beautiful sound and you can enjoy it relaxedly. The overall brightness is rare and precious in this Ambient-Vapor scene!

And in contrast to the relatively compact 『宇宙ステーションV』, OSCOB's previous work, the 2020 album 『帰宅』 (Homecoming) is a large-scale work with a total of 5 songs and a playing time of about 3 and a half hours!
But there is no heaviness. It is a bright and easy-to-hear Vapor work that is gently wrapped in a mist of reverb sound that shines white.
Listen to the first track for about 3 minutes and if you like it, you won't get bored for the next 3 hours! We also recommend listening it!