ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

DreamSphere, V.A.: TIDE-010 - 銀河間 (2021) - 《ドリームトーン》とは?

このヴェイパーウェイヴみたいな世界を眺めていると、さまざまなプチ・ムーブメントらが、そこに次々と興ってはすたれていく──ということに気がつくような気がします。
そして今回ご紹介しますのは、《Dreamtone》、ドリームトーンと呼ばれる超マイクロ級の新興サブジャンルです()。

ただし、このミクロでナノピコな運動が、ことし末くらいにはビッグなムーブメントになっていないとも限りません。まあ、そうまではならないと予想しますが。

端的に言うならドリームトーンとは、むやみな長尺のドローン系チルアウトのようです。曲調のきょくたんなフラットさを誇り、あまり展開らしい展開を持ちません。
このサウンドは、安らかな夢から導き出されたものなのか、またはリスナーらを安らかな眠りに誘おうとしているものなのか……。おそらくは、そのどちらかでしょう。

そして。このスクールの奇妙に目だつ特徴のひとつは、各トラックの演奏時間が、へんにきりのいいジャストの数字になっていることです。最短で10分、平均的には30分、長ければ50分、などなどなど。端数なし、明らかに意図的な操作です。
どういうつごうで、そうなっているのでしょう? どうせ展開のない音楽ですから、10分でも50分でも同じだし、機械的なきりのよさで処理──といった意図なのでしょうか?

……そこらに私はヴェイパーウェイヴ特有の、不敵なシニシズムニヒリズムを感じてしまうんですよね!
楽曲の演奏時間などというものは、それ自体の内部から決まってくるような、常識──それを、むだに否定しています。《内部》という幻想への否定でしょうか?
そういう構えのいやな感じが、このドリームトーンというプチ・ジャンルを、通常のスタティックでカーム(calm)なドローン系チルアウトとは、また別のものにしているのでしょうか。

で、さて……。

《DreamSphere》は、〈ネット上初めてのドリームトーン音楽レーベル〉を自称するカンパニーです。2020年・秋から活動中のようです()。
そして、“TIDE-010 - 銀河間”は、今2021年7月・発の、このレーベル初のコンピレーションです。ご本人らが言われるように、〈これがドリームトーンだ!〉という宣言と、受けとめうるでしょう。タイトル中の“TIDE-010”は、品番です。

ところで。

このドリームトーン全般について、私が強く思っているのは、〈長すぎて、ことばを喪ってしまう!〉ということなんですよね。
いや、表面的には〈長すぎて〉という気がするのですが──最頻の尺が30分間ですから──。でも実は、また別の理由があるのかも知れません。
何となく気持ちいい感じはありながら、しかしふしぎと、〈いま鳴っているこのサウンドに集中〉、ということができません。分析的に聞くことができないし、構造が把握できないし、ゆえにことばが出てこない。

〈むやみに長いドローン系アンビエント〉と言うなら、私が長年愛聴しつづけているスティーヴ・ローチさんの、“Immersion”シリーズあたりもそうですが。……しかし何か、そういう親しい響きとは別の性質を、ドリームトーンには感じています。

かのブライアン・イーノさんは、〈アンビエントとは、傾聴を求めない音楽である〉、ほどのことを言われました()。そのいっぽう、私たちのドリームトーンは、〈傾聴をすり抜けていく音楽〉だったりするのでしょうか。
何かそこには構造的に、聞き手の集中をかわしていくところがあるのではないか……。そんな気さえもしています。いかが思われますか?

ともあれ。

ドリームスフィアによる“銀河間”、これは全19曲を収録したオムニバスです。そのすべてのトラックの演奏時間が10分ジャストなので(!)、合計すれば3時間10分。
その10分間とは、ドリームトーンで考えられるもっとも短い演奏時間だと思われます。ショーケース的なオムニバスなので、可能な限りコンパクトになっているのかと。

そして、この可能である最短の10分間でさえ、たちまち注意も集中もそらされて、よく分からなくなってしまいます。そして残るのは、〈何となく気持ちいい音を聞いたような気もする〉という印象だけなので、おすすめです
つまり。私たちの日常の《夢》という営みは、目ざめたときに〈何となくいい夢をみた気もする〉、という印象だけを残せば成功ですから、そうなのです。フロイトさんに強くかぶれている立場から、これは言えます。

……とはいえ。これもドローン系なのですが、さいごのほうに入っている2曲くらいは、ちょっと耳にやさしくない響きなのでどうかな、とは思いました。

そして続いては、もはや信頼のレーベルであると言える《global pattern》から、ドリームトーン運動に協賛していくコンピレーション、“GLOBAL DREAM PATTERN”をご紹介。

これは全15曲を収録、演奏時間は約9時間半(!)という、“銀河間”よりもいっそうトゥーマッチなアルバムです。オゥ、イェイッ
そして、両方のコレクションに参加しているアーティストらは……。意外と少なく、ああ、たぶん3組だけと見られます。

このグローバルのコンピレーションも聞きごたえ十分ですが、しかし、コアなドリームトーンであるらしきものは、やはりご本家による“銀河間”です。
グローバルのほうのドリームには、彼らが得意としているスラッシュウェイヴ()、もしくはドリームパンク()、それらからのアプローチ、という印象が目だつんですよね。

その典型が、私が強くリスペクトしている《カゴシマ・タンジェリン》さん()、彼によるラストのトラックです。
“zzz”というタイトルのついたそれは44分間もの力作で、すごくいいとは思うのですが。しかし、ドリームトーンということばを求めてはいないような気がします。

それにしても……。

このムーブメント──ドリームトーン。これを大いに肯定的に、受けとめたくはあるんですが。しかし、楽曲らの長さはほどほどにして欲しいな、とは思うんですよね!
10分ちょっきりとは言いませんが、できれば1トラック20分間くらいにとどめていただきたくて。40分間が4曲入りのアルバムみたいなもの、聞かない前からくたびれてしまう……という、実に根気のない私からすれば!

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
Dreamtone is one of the micro genres that is currently buzzing around the Vaporwave scene in this summer of 2021.
Simply put, it sounds like an unreasonably long drone-style chillout music.
But I don't think it's just that.

And DreamSphere is a company that calls itself “The Internet's first Dreamtone music label”. It seems that it has been active since the fall of 2020.
And “銀河間 (Intergalactic)” from DreamSphere, is an omnibus album containing all 19 songs. The playing time of all the tracks is just 10 minutes (!), So the total is 3 hours and 10 mins.
10 mins is the shortest playing time possible in Dreamtone, I think. It's an album as a show-case, so they are maybe.

…A strange feature of Dreamtone is that the playing time of each track is a very nice and just number. 10 mins or 20 mins if short, 50 mins if long, and so on.
What are they thinking and doing so? It's music that doesn't develop anyway, so is it the same for 10 mins or 50 mins?

That's where I sense the fearless cynicism and nihilism that is unique to Vaperwave!

And another feature of Dreamtone is the mysterious feeling that I can't concentrate on listening for some reason.
Even the shortest 10 minutes of a Dreamtone can quickly divert my attention and focus and obscure me. All that remains is the impression that I've heard a pleasant sound maybe, so I recommend this “銀河間”.
In short. Because our daily activities of dreaming are successful if it leaves us the impression that we had a good dream maybe, when we wake up. I can say this from the standpoint of being strongly devoted to Dr. Freud!