ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

ツイン・ピークスに捧げる Vaporwave 等 - 焦がれつづけよう、《世界一美しい死体》

《NO PROBLEMA TAPES》は、チリのヴェイパーウェイヴ関連のレーベルです。ラテンアメリカのヴェイパー系レーベルとしては、ここ数年もっともアクティブな部分だと見られるでしょう()。

そしてこのノー・プロブレマ・テープスを、昨2020年には、《ドリームパンク》のめざましい巨大な傑作オムニバスの出もととして、ご紹介しました()。あれ、よかったですね!

そして、こんどもオムニバスなのですが──。

〈ブラック・ロッジからのサウンドツイン・ピークスに捧げる〉──という、テーマ性は実に明快ですが、しかしタイトルが長く、記事的に収まりのよくないシリーズ。
これの第1弾が2019年に出ていて、その好評にこたえ、今2021年5月に第2弾がリリース。これら2作をまとめて、強く賞賛したいです。

たびたび私は述べている気がしますが、《デヴィッド・リンチ系》のサウンドが大好物ですからっ!(

……ですが、さて? このオムニバスのシリーズがまた、なかなか巨大なものでして……。
まずその第1弾は、全25曲・約104分を収録。さらに第2弾は、全42曲・約3時間という、とても聞きごたえがすばらしいものになっています!

かつその内容が、ヴェイパーウェイヴ一色というわけでもありません。たぶんヴェイパーは半分と少しくらいで、それ以外に、インダストリアル/サウンドコラージュ/IDM──である感じの楽曲らが、含有されています。

それで。前のこのレーベルの、ドリ・パン大会のときも思いましたが。ここまでも内容にバラエティのある巨大なものを、ひとことでこうだとは、とても言えません。
もちろん、あのリンチさん世界の、エロス・享楽・バイオレンス、そしてそれらの神秘……。その方面へ寄せていこうという意図は、そこに遍在していそうなのですが。

では。まず、私たちの心の一部が永遠に、あのツイン・ピークスにとどまりつづけていることを確認しつつ……。
そして、とくに〈これは!〉と、私の印象に残った楽曲らをご紹介します。

まず第1集からは、21曲めの、“River of Crows”。全体がふわふわとした快いトーンで、さいしょ沈うつ気味なメロディに始まり、しかしそこから〈憧れ〉の上行音形に発展します。ストレートにすばらしい音楽です!

だが、この楽曲は、もともとのサントラにあったものなのだろうか──? そうも考えて私は、『〜最期の7日間』(1992)までのオリジナルらを調べてみました。しかし、分かりませんでした! いかがでしたか

あ、さて。このトラックを演奏している《Hollowlove》は、カナダのエレクトロポップのバンドです()。強く興味を持ちましたが、しかし現在まで、この曲が最新作となっているもよう。彼らの再起が、切に望まれます!

そして第2集からは、その28曲め、“oblɒW Ꮈo ʜƚɒɘᗡ ɘʜT”。演奏するのは、もはやヴェイパー界のちょっとした顔である《My Sister's Fugazi Shirt》さんです()。
前にもちらり、このフガジ・シャツさんを、ご紹介しましたよね()。

これは超おなじみのテーマ曲のカバーですが、しかしイントロからして恐ろしく気の抜けたサウンドで、逆にびっくりさせられます。センセーショナル!
しかも何なのでしょう、カートゥーン的なサウンドや、アニメ声の〈あら〜っ?〉というニホン語めいたサンプルまで入って、脱力は深まるばかり……。

で、ほんとうにバカみたいですが、でもそれがいいんですよね。こういうウィットある音楽(?)を、常に支持します、ヴェイパー的な立場から。

なお、タイトル中の《ウォルド》は、劇中に登場する九官鳥くんの名前です(シーズン1・第6話)。かわいそうに悪ものに撃たれて死んでしまう、その彼の生前の〈キィーッ、キィーッ〉という鳴き声もまた、このトラックに挿入されている感じ。

鳥のまさに死なんとする、その鳴くや、哀し。

という、古代中国のことわざもあるようです。まあそれはともかく。

それともうひとつ私から、〈いいかげんにしま賞〉を、授けたいトラックがあります。
それは第2集の21曲め、「ピーク間」。演奏するのは、近ごろ私の中で注目株となっているヴェイパーの人、《絡み合った運命》さんです()。

……ですがこの、6分50秒のトラック、「ピーク間」。タイトル以外は、あまりテーマに関係がない感じなんですよね!
何か分かりませんが、古いJポップの楽曲をまる使いした、《スラッシュウェイヴ》です()。というか、歌詞をたよりにいま調べたら、その素材を知ることはできましたが……()。

で、これが、原曲の失恋ソング──その哀切さを《ヴェイパー加工》によって、さらに増幅しているトラックです。心にひびくものは、そうとうに深くあるのですけれど。

だからといって、ツイン・ピークスと関係ねーじゃねーかよえーっ、という気はするんですよね!
苦しまぎれに言えば、1993年という原曲の出たタイミングが、まあ時代的にシンクロしているのでしょうか。

と、何かふに落ちないところもありますが、しかしエモーショナルに押しきられてしまったので、私の負けです。ふにふに
まじめに言ったらその次の22曲め、「黒と白のロッジ迷路」、明晰夢のキャッチャー》さんによるドローン風アンビエント・ヴェイパー──何らかの原曲を超きょくたんに引き延ばした7分間──なんかもいいのですけど()。

そういうことですから、私たちはきょうもまた眠りの中で……。美しいローラと再会し、そしてブラック・ロッジか《赤いカーテンの部屋》を再訪したらよいでしょう。
そしてこのオムニバス2作、インダスめいた部位以外は、そっくり愉しめますので。リンチ界をしたうあなたは、ぜひご一聴を、と!

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
NO PROBLEMA TAPES, a Chilean label related to Vaporwave. And introducing the collections of tracks dedicated to Twin Peaks released by them.
Following the first collection in 2019, the second was released in this 2021. Together, it's a fairly large collection of works.
First of all, the first collection contains a total of 25 songs and about 104 minutes. Furthermore, the second is a very volumey one with 42 songs in total and about 3 hours!

And the contents are not limited to Vaporwave. Include Industrial, Sound Collage, and tracks like IDM, et al.
And it can be said that it is a selection that can be enjoyed a lot except for Industrial.

Among them, I would like to mention some of the tracks that moved me.

First, from the first collection, "River of Crows".
The song, in which starting with the melancholic melody and then goes up to the height of longing and craving, is really wonderful. In addition, the overall sound quality, which is extremely soft, further enhances the mood.
The creator of this track, Hollowlove, is a Canadian Electro-Pop band. I was very interested in it, but to date, this song seems to be their latest work.

Then from the second collection, "oblɒW Ꮈo ʜƚɒɘᗡɘʜT". The performer is My Sister's Fugazi Shirt, who is already a hot person in the Vapor world.

And this is a cover of the famous Twin Peaks theme, but the sound is horribly weak from the intro. So, on the contrary, it is surprising, sensational!
Moreover, it includes cartoon-like sounds and a sample of the anime voice "Ah?". Weakness just deepens ...
So, it looks foolish, ridiculous, but it's good. I always support this kind of wit music, from a Vaporist standpoint.

Finally, from the second, 「ピーク間」 (Between Peaks). The performer is 絡み合った運命 (Intertwined Fate), a Vapor person who has become a hot stock in me these days.
And this 6 minutes 50 seconds song 「ピーク間」, other than the title, it doesn't seem to have much to do with Twin Peaks! It’s a Slushwave track made entirely from an old J-pop song.
However, I was so impressed by the sadness of the tone. So there is no choice but to surrender! Yeah.