ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave, Désir Duplication Répétition ─

V.A.: This Is Dreampunk vol. 1 (2020) - ヴェイパーウェイヴの経済性(のなさ)?

2016年をピークとする第2次のヴェイパー・ブーム、その立役者のひとりと目されるクリエイター、《HKE》。その彼の興した企業であるドリームカタログ社が廃業へ、という話を2週間ほど前にお伝えした()。

……そんでそれからどうなっとるんかいな、と思っていま、ドリ・カタ社のHPを見に行ったら、これがすかさず不通()。
まあこういうの、翌日くらいに復旧してることもなくはないので、あわててどうこう言わぬほうがよさげ。とは思いながら、もう3日くらい見れない状態。

そのいっぽうで企業とはやや別の、Bandcamp上のドリ・カタの活動は、健在であるもよう()。その最新のリリースは11月26日・発のオムニバス、“This Is Dreampunk vol. 1”

【追記】 追って現在(12月3日)、ドリ・カタ社のWebサイトは復旧している。

ここらで、自分は考える。ヴェイパーウェイヴとかいう塵芥(ちりあくた)の世界から出てきて、そこで成功を収めたクリエイターら(の一部)が、ごりっぱなアーティストか何かに成り上がろう(?)、みたいに見えている動きについて……。
ハッキリ言えばそうした動きって、より多くの名声と収益を求めてのものと、邪推してるけれど。しかし、そこは別に否定しない。

ただ、ヴェイパーウェイヴっていう音楽みたいのを何かアレして、ンな大きな名声や収益を得ようっていう試みが、成功しそうって気がしないんだよね。
いや、成功したなら悦ばしいとは思うんだが、しかしどうだろう?

──だいたいのところヴェイパーウェイヴなんて、たかがネット上のネタとかヨタとかミームとかとして、ついつい生まれてきちゃったもんだと思うんだけど。

だからこその、匿名性、不敵なサンプリングの横行、けしからぬアイロニーと悪フザケ、よってたかっての集合知ならぬ《集合恥》、そして99%無償での流通。

で、そういうアナーキーさがエキサイティングだったからこそ、そんな煉獄の一丁目から、ゆかいな音楽(めいたサウンドら)が生産されてきたんだと思うんだけど。

と、そんなところから出てきて……。それがいっちょまえくさい〈アーティスト〉にでもなろうとしてか、いろいろなところで態度を変えていくことは、もちろん個人の自由。
──というか、いっこも悪くはない。
ただそんなでは、もはや《ヴェイパーウェイヴ》とは違うみたいっスねえ、という気も。

じっさい正直なものでHKE先生なんか、もう3年くらい前から《ヴェイパーウェイヴ》ということばを、自分からは使ってないと思う。かつ音楽的にもそんな時期から、ほとんどヴェイパーじゃないみたいだし。
そしてヴェイパーの代わりに出してきたキーワードが、そろそろおなじみの《ドリームパンク》だってワケだ()。

と、ここまで話を引っ張ってから、さきにご紹介のドリームパンク大会・第1弾の感想文。全10曲・約43分を収録、内容はおおむね陰気くさいIDM、もしくはチルアウト。
各トラックたちが、コンパクトで緊密なのがよい。珍しく、ちゃんと作ってきたものと感じられる。会社をたたんだのをきっかけに、ボスのHKE&ご一同が、何か吹っ切れたのかッ?
この水準ならば、ぜひ第2弾も出て欲しい。いや、自分が常に求めてやまぬ俗悪でおげれつな《ヴェイパーウェイヴ》とはちょっと違うようだが、しかし聞く悦びがある。

それとまあ。目についちゃっている〈動き〉として、こちらもまた第2次ブームの立役者であった、《t e l e p a t h テレパシー能力者》のご活動について()。
かの名作『新しい日の誕生』(2015)を生み出したユニット《2814》で、HKEとタッグを組んでいたテレパさん。この方が近ごろ、《Virtual Dream Plaza》という企業を興し、何かいろいろなものを販売しようとしておられる()。

それもいいけど行き方はだいたい、ひところのHKE氏と同じ。まずはヴェイパーウェイヴということばを棄てて、そしてその方法やアチチュードをも棄てて……。さらにはテレパシーの芸名をも棄て気味なのが、けっこういさぎよいと思うけど。
それで近ごろの音楽方面は、何だか虚ろに前向きめかしたニューエイジ系チルアウトみたいなものを……。いいんスかコレ。

さらについでに見ておくと、《Hiraeth Records》を興した《猫 シ Corp.》氏にしても、多少くらいはメジャー化やビジネス志向みたいな意図ありげ()。
ただし猫シさんは、オレたちの《ヴェイパーウェイヴ》というスローガンを引っ込めてなどはいない。そこは違う。

けれどそのぬこシたん、2019年7月のテレさんとの合作以来、あまり本格的と呼べそうな作品のリリースがないもよう。これってやっぱり、〈もはやサンプリングはしない〉みたいな縛りに苦しんじゃってんスか、といった邪推が自分の中に生じがち。
そういえば数日前、ぬこ氏のリミックス・ワークのすばらしさを礼賛する記事を書いたけど()、やはりああいうことをなさったら天下一ッ。しかし、純粋な自作では……っていうこともあるの?

〈もっとヴェイパーを(企業めかして)ちゃんとやっていく〉、ということを否定とかはしない。ただ現状、メジャーな方面への浮上を図って、逆に制作のパワーを喪ってるだけの例が、少なくないっぽくない?

そこらを惜しみ、また危惧しちゃうんだよね、自分は。

いっぽう、企業としてのドリ・カタを投げ出そうとしているHKE&その一党に、オレの見た感じ質的な再上昇のふんいきがある──、ようにも思ったり。

かくのごとき駄文もそろそろ終わりに近づいたので、逆に〈成功例〉をも挙げておく。ヴェイパーウェイヴの《ESPRIT空想》であったジョージ・クラントンが、いちばんうまいことやって、いまや一般インディ音楽界のちょっとした人になっていそう()。その身の振り方に、巧みさを感じさせる。
ただし何となく、この人はさいしょから少し違ってたみたいな……。うちらに特有のヘンな屈折が、あまりないみたいだし……。しかもイケメンでやがるし、唄えるし(!)。まあタトゥーとかを誇示してはいないようなところが、こっち系ではありつつ。

それと。ひとつ指摘すると、草創期から第1次ブーム(2013年)ごろのヴェイパーのスター的プレイヤーたち──、ヴェクトロイドのラモーナさんや《インターネットクラブ》、《骨架的》、《インフィニティ・フリケンシーズ》──、ああいう方々でことさらに、ヴェイパーウェイヴのスローガンとアチチュードを放棄した人はいないと思う。

なぜって、彼たちが《ヴェイパーウェイヴ》であるからだ

それに対し、続いた世代のクリエイターたちが、自分らの発明品ではないヴェイパーウェイヴを、棄てようと思えば棄てられる。──だとしても、分からぬではないが。

で、結論。保守的なようだけどヴェイパーの外形的な在り方は、とりあえず旧来の現状でいいんじゃないかと思ってるんだよね。フランス哲人モンテーニュさん方式の判断で。
そして外形的な在り方を整えようとするより、制作方面の改善やイノヴェーションにまい進したほうがいいのでは、って気はするんだけど……。まあ、外野だから言えるようなことなんだろうけど!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Dream Catalog led by HKE that reports the closure of the company. I was wondering what would happen, but at the end of November 2020, the omnibus album “This Is Dreampunk vol. 1” was released.
This is a total of 10 songs, about 43 minutes recorded. The contents are generally gloomy IDM and Chillout.
It is good that each tracks are compact and tight. It seems to be made properly after a long time. I wonder if the boss HKE & his people could refresh their minds after closing the company.
At this level, I definitely want vol.2 to come out. It seems to be different from the vulgar and obscene Vaporwave that I always seek, but I am delighted to hear it.