エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

V.A.: A Dreampunk Compilation Vol. 1 (2020) - 《ドリームパンク》とは何?

今2020年の今10月・発、《ドリームパンク》の巨大なコンピレーションである、“Visions and Prophetic Dreams: A Dreampunk Compilation Vol. 1”。全82曲・約6時間を収録。

この一週間くらい、時間がある限りず〜っとコレを聞いていて……。いいと思うし、愉しいし飽きないけれど、しかしちょっと疑問に思うところはある。

この選集のお題である《ドリームパンク》とはいったい、“何”なのだろうか?

いままで自分は《ドリームパンク》を、HKE氏と彼の《Dream Catalogue》に集ったグループのスローガン、くらいに考えていた。たとえばドリ・カタ社のホームページの、〈HKEのドリーム宣言〉みたいな記事が、そんなことをウタっていそう()。

「ドリームパンクは、このますますシュールな夢の世界の現実に住む地下の人々のための夢の音楽です」

自分の思い込みをもうちょっと具体的に言うと、こういうことなのかと。
《現実》と呼ばれるクソゲー無理ゲーなどは放棄して、ニッポンの80'sアイドルと夢の世界でメイクラヴでもしていたほうがいい。たぶんそういう、淫夢のためのBGM、みたいなものが目ざされているのかなって。
ってまあ、それは《テレパシー能力者》つぁんの、ある時期の作品らのコンセプトだけど。

ところでいっぽう。ヴェイパーウェイヴの文脈を離れて“Dreampunk”という英単語を調べてみると、これが一種の文芸用語として言われているようなのだった。すなわち、サイバーパンクスチームパンクらに続くべきものとして()。
そして、そういう意味でのドリームパンクのクラシックらは、まず『ふしぎの国のアリス』や『オズの魔法使い』であり、またP.K.ディックの名作らであり。そして、あのギブスンの『ニューロマンサー』──そのへんであるもよう。

ここで自分が〈しまった!〉と思ったのは、別にパンクロックとちょくせつの関連はないっぽい、っていうことだったんだよね。
つまりドリームパンクというコンセプトは、ハードコアパンクやゴシックパンクらの親せきだとも、考えがたい。サウンド的に似ていないどころか、もうぜんぜん。

いや。あまりにも自分が《パンク》であるせいなのか、パンクと言われたらパンクロックのことでしょう、という思い込みが激しく強いんだ。てへへっ。

HKE: The Statement • Dreampunk Mix - 1 Hour (2020) - YouTube
HKE: The Statement • Dreampunk Mix - 1 Hour (2020) - YouTube
これがHKE式のドリームパンク。だが正直
言うと、この選曲にはあまり共感できてない

さて、そもそもの話ヴェイパーウェイヴはむかしから、〈サイバーパンクな近未来的サウンドである〉──などと、よく言われているもので。あまりそういうカッコよさを、自分は感じていないけれど。
だが、その旧習を反復するだけでは何ンだと考えてHKE氏は、彼のエンタープライズの社訓に《ドリームパンク》という、多少は新味のある語を採用したのだろうか?

ところでここから、お話が、ノー・プロブレマからのドリームパンク選集のことへと戻る。
このオムニバスに対して自分の印象がみょうによいのは、非英語圏からの選曲がけっこう多いからかなと、自分はヘンなことを考えてるんだよね。だいたい選曲担当者のひとりである《LIFE2979光》氏が、グァテマラの人だそうだし()。

もともとヴェイパーは、英語でコミュニケートしている世界から生まれたようなもの。かつ、歴史を画すような作品らのほとんどは、その中から登場しているっぽい。
だがしかし、〈いま〉現在の作品らを概観してみると、そうでない中南米や東西ヨーロッパから出てきているものたちも、レベル的にまったく遜色がない。そういう現実が、この選集に、うまく反映されていると考えられる。

その中でも、とくに印象的だったトラックを、ふたつだけご紹介しておくと。

まず、《Golden Living Room & Bathroom Plants》による、“Solar City”。これはむかしのエロゲー(アダルトゲーム)の、メイクラヴのテーマみたいな曲。
次に、《カゴシマ・タンジェリン》と呼ばれるアーティストによる、「朝露」。これは、あのクラシックの「バーバーのアダージョ」を思わせる原曲に、《ヴェイパー処理》を施したようなトラック()。

そして、ざっと調べた感じ、どちらの楽曲もこれが初出しのよう? ことによったらこのコンピレーション収録の82曲すべてが、これ用の新曲らなのだろうか。だとしたら、すごすぎるっ。

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“Visions and Prophetic Dreams: A Dreampunk Compilation Vol. 1” is a huge compilation of dreampunk released by NO PROBLEMA TAPES. It contains a total of 82 tracks and approximately 6 hours of music.
It's a delightful selection that never gets old. I wondered why this was so good, and I wondered if it was because many of the songs were picked up from non-English speaking countries.
Vaporwave was born out of a world that mostly communicates in English. And most of the historic works seem to have appeared from there.
However, looking at the works of today's artists, the works from Central and South America and East and West Europe are not inferior to those from English-speaking countries. This reality is well reflected in this selection.

From the total of 82 tracks, I would like to mention two tracks that were particularly impressive to me.
The first one is “Solar City” by Golden Living Room & Bathroom Plants. This song is like the theme of making love scene from an Eroge (adult game) of 1990's.
The next piece is 「朝露 (Morning Dew)」 by an artist called Kagoshima Tangerine. This song is reminiscent of the classic “Barber's Adagio” with a Vapor treatment.