エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

お役立ちPC講座 - foobar2000の機能で、あらゆる楽曲らをヴェイパーウェイヴ風に鳴らす!

さあ〜っ!! この記事では、ちょっとしたお遊びの手順をご説明いたしちゃうよ!
そのお遊びとは、〈フリーで多機能なPC用音声プレーヤーであるfoobar2000を用いて、ありとあらゆる音楽をヴェイパーウェイヴ風に再生する〉!!

《もくじ》 | 1. こんなチン妙な思いつきにいたった理由はといえば | 2. foobar2000の導入と基本的運用まで | 3. 今回のテストに使う音楽ファイルの入手 | 4. 必要なFB2k用コンポーネントらの入手 | 5. FB2k用コンポーネントらのインストール | 6. ヴェイパー処理用・FB2k用コンポーネントらの設定 | 7. 即席ヴェイパーウェイヴの鑑賞、および結語

1. こんなチン妙な思いつきにいたった理由はといえば
画像:動いているfoobar2000の一例
動いているfoobar2000の一例(見かけは可変)

いままでこの場にて皆さんとご一緒に、《ヴェイパーウェイヴ》を愉しく鑑賞し、かつ、それがどういうものかを考察してきたよね。
そして得られた知見のひとつが、次のようなこと。

何らかの既成の楽曲に対し、自分の言う《ヴェイパー処理》を施せば、それの聞こえは、おおむねヴェイパーウェイヴ風になってしまう。
そしてその《ヴェイパー処理》とは、だいたい次の3つのプロセスである。

  1. 原曲のテンポとピッチを同時に下げる。目やすは30〜70%。
  2. イコライザー(EQ)で、高音と低音をゴソッと削る。
  3. オマケとして、リバーブやフェイズシフター等でフレイヴァリング。

もちろん、たったこれだけのことがヴェイパーの本質だとは考えられない。だがしかし、たったこれだけの処理でヴェイパーっぽく聞こえてくる、という事実もまたある。

そして。こういう処理を再現してみるために、高性能なフリーの音声編集ソフト《Audacity》を使うのはいい方法だ()。たぶん処理の質が高い。
けれど、ほとんどの処理がリアルタイムではできず、手間も時間もかかっちゃうんだよね。こっちサイドの目的が、〈ちょっとヴェイパー処理をしてみたい〉くらいだとすれば、その〈ちょっと〉の感覚に合わない。

そこでっ! 目をつけたのが、《foobar2000》(以下、FB2k)。これの追加コンポーネントを活用すれば、いちいち手間をかけずリアタイで連続的に、いろいろな楽曲をヴェイパー処理してそのサウンドをエンジョイできるんだ!!

んでは、そこまでの手順を以下に。

2. foobar2000の導入と基本的運用まで

FB2kをインストールし、一般的なフォーマットの音声ファイルを鳴らせる状態へ。そこまでの手順は、他サイトの記述を参考にしてたもれ。
いや、別に手抜きじゃない感じ。ひじょうに有名かつ人気のあるソフトなんで、キホンを分かりよく解説しているサイトがいっぱいあるっス。その中でもニホン語で包括的説明があるのは、ここ()、ここ()、あたりか。

ちなみにFB2kは基本的にウィンドウズ用ソフトだが、いまはMac用もある()。Macのことは知らないので確かなことは言えないが、まあ動くんじゃなかろうか。
また、《Wine》という補助ソフトを用いれば、Linuxでも運用可能。現に、うちではUbuntuなんだ。
けど後者について、小さな問題。FB2kの現在の最新バージョンが〈1.6.1〉なんだが、これは現在のWineでは動かないかも。〈1.5.x〉なら大丈夫。まあ細かいことっスね。

かつまた、この記事のPC画面キャプチャ画像ら、その文字やら何やらの見え方が美しくないのも、現在のWineの能力がイマイチなせいでありげ。いずれ改善ありたし!

3. 今回のテストに使う音楽ファイルの入手

もういまどきは、PCなんかで音楽を鳴らすにもストリーミングのみ、という方々がいそう。それはそれでいいが、しかし今回の実験には、ローカルの音楽ファイルが必要のよう。mp3、flac、wav、といった一般的フォーマットらで。
かつこの実験の素材にする音楽として、メロディックで形式重視でテンポがやや速いほうが、効果が分かりやすそうかも?

と考えたら、ユーロビートなんかいいかなと、つい思った。

ということでテキトーに探したので、お手元に何もなければ、マイリトルポニーのヤツをダウンロードしてね! これは購入価格を“$0”とすれば、無料にて入手可能。で、Zipアーカイブをササッと解凍しておじゃれ。

4. 必要なFB2k用コンポーネントらの入手

さて今回の実験ではFB2kに、次の2コのコンポーネントらを新たにインストールする。

  • SoundTouch DSP(ファイルの実体は、foo_dsp_soundtouch.dll)
  • Freeverb DSP(ファイルの実体は、foo_dsp_freeverb.dll)

本来の《DSP》とはリアルタイムで信号処理をする素子のことだが、その挙動をシミュレートするコンポーネントらなんだ。それぞれのあり場所は、ここ()、ここ()。

と、そこまではいいはずだが。しかし困る(かも知れない)のは、DLされるファイルらが、7zおよびRarという、ややレアな圧縮形式で固められていること。
これらの解凍が分からぬ、できぬ、という場合には、7-Zipアーカイバの導入がオススメ()。フリーでしかもオープンソースのソフトなので、完ペキと考えられる。

まあ。ホント言うと、〈固めるにしたって、一般的なPK-Zipで十分じゃろがい!〉とは思うんやけどなブヘヘヘヘ。

5. FB2k用コンポーネントらのインストール
画像:ブツが追加できたComponents欄
成功裡にブツらが追加できた《Components》欄

何やかやして、前記の2コの《.dll》ファイルらを入手できたとする。そうしたら、FB2kのインストールされたフォルダのサブフォルダ、《components》の中にそれらを置く。

だがその、FB2kのインスコされた場所が分からない、っていう人います? 自己判断でヘンなことをしてない限り、Winであれば、〈c:\Program Files\foobar2000\components〉のような構成になってると思うんだけど……。
これがUbuntuであれば、場所はたとえば、〈/home/マシン名/.wine/drive_c/Program Files (x86)/foobar2000/components/〉、みたいになる。が、Macのことは知らないのでスマン。

ここまでができたものとして、そこでFB2kを、(再)起動。そして〈Ctrl + P〉、あるいはプルダウンメニューから〈File → Preference〉。そうして設定画面を開いたら、左側のツリーのいちばん上、《Components》のところをクリック。

そして右側の欄の中を見ると、いま追加した《SoundTouch DSP》および《Freeverb DSP》、それらの名前が見えているのでは? いるはずだがっ!?

6. ヴェイパー処理用・FB2k用コンポーネントらの設定
画像:ブツらの追加された《DSP Manager》欄
ブツらの追加された《DSP Manager》欄

そこまではできたものとすれば、次には左側のツリーから、〈Playback → DSP Manager〉を開く。すると右側の欄が、《Active DSPs》、《Available DSPs》、という2コのワクに分かれているだろう。

そして何もしていない場合、《Active DSPs》のワクの中は空白であるはず。
いっぽう《Available DSPs》のワクの中には、何かがいっぱいある。その中の今回必要なものたちを、順番にダブルクリック、もしくは〈+〉の記号を1クリックして、《Active DSPs》のワクの中に追加する。

追加する順番は、《SoundTouch DSP》、《Equalizer》、《Freeverb DSP》。これは標準的なヴェイパー処理の、〈スローダウン → EQ → オマケにリバーブ〉、という順番に沿う。なお、EQはさいしょからインスコされているはず。
ただ、この順番決め等々は、あとからいくらでも変えられるので、いずれ自分がいいと思うようにしちゃえ。どうであれ、もとの音声ファイル自体は変更も加工もされないので、おきらくに進めよう。

そして、ワリにヴェイパーウェイヴっぽい音になるような、各コンポーネントの設定だぜ。設定するには、《Active DSPs》の各項目の右側の〈…〉をクリックする。

画像:《SoundTouch DSP》のヴェイパー的セッティング
《SoundTouch DSP》のヴェイパー的セッティング

まずさいしょ、スピード変更用の《SoundTouch DSP》。ピッチとテンポを独立に変更可能であるのがカシコいところなんだが、しかしヴェイパー的には、〈Rate adjust〉のところしか触らない。
この〈Rate adjust〉設定は、ピッチとテンポを同時に変更する。とりま、マイナス50%くらいの値が適切。
その下の〈Anti-alias Filter〉は、チェキすればデジタル的な歪みが減ってくれるはず。でも実は、あまり効果が分からない。続くEQ処理で、上下の周波数を削っているせいだろうか。
まあ、ここは気休めでオンにしとけば? たぶん、前記の〈独立に変更〉をなした場合によく効くのかな、と愚考。

次に《Equalizer》のグラフィックEQは、言うところの〈カマボコ型〉にセッティング()。シリアスな曲作りの場合には、もっと攻めたセッティングがイカす場合もありそうだが、でもいまはテスト(お遊び)なので、ややユルめの〈への字型〉に。

さいご《Freeverb DSP》のリバーブ設定はひとまず、すべて中央値にセットするのが無難()。ヘンなセッティングだとカンタンにインダスノイズ系になるので、ちょいと遊んでみてもいいっスよ!

7. 即席ヴェイパーウェイヴの鑑賞、および結語

と、作業らは以上で終了! そしていよいよ、さきに用意したポニーちゃんのユーロビートを再生すると──いや実は、再生しながらでも、セッティングを変更できるんだが──。
……ぬぅむ。もと曲のテンポが160BPMとかいうクソ速さだったりするので──たとえば一般的なハウスなら124BPMあたりなのに──、その半速にしたくらいでは、ヴェイパーそのものみたいな脱力感にはいたっていないかも?

むしろ、インダスっぽくなっているフシもなくはない。だがそれでも、2・3・5・7曲めあたりは、ちょっと感じが出てると考えられる。
なお、こうしてDSPらで処理されたサウンドを、ファイルに出力することもできる。その設定がまた複雑だが、しかしキホンはFB2k解説サイトらにも書かれている〈コンバート機能〉の応用。

他にいろいろと自分が再生してみて、意外にイイと思ったのは、ジャズやクラシックである素材ら。とくに、ハードバップ以前のノスタルジックなジャズあたりで、すごく鳴りがイイのがある。
また、オペラのよくある〈名アリア集〉とかもいい。「歌に生き愛に生き」、「復讐の炎は地獄のように燃え」、「イゾルデの愛の死」、みたいなアレらが。

たとえると、ジャズ/クラシック系音楽のこれでの再生により、《Caretaker》というダークアンビエントのヘンなアーティストがいるんだが()──そして万国の無法アングラ界では、そのヘンな人の評価がすごく高いんだが──。ややそのサウンドにも近い、心細い感じが得られるんだ。
その鳴り方はまるで、20世紀初頭の映画のサントラの想い出たちのような……。または、ゼンマイじかけの蓄音機やオルゴールらの、機構の動作がいまにも止まりそうという状態が、ずう〜っと続いているような……。

そして。
奇妙でチン妙なヴェイパーウェイヴのサウンドが、むしろ《自然》だと聞こえるようになってしまった、おかしい耳。それで聞いていると、ここまでに構築してきたシステムによるチン妙な鳴りが、やはり《自然》かのようにも聞こえてしまう。

で、それこれまでに追求されているヴェイパー処理とは、いったい《何》をなしているものなのだろうか? それは《音楽》を、変質的に愛おしみすぎているのか、あるいは単にじゅうりんしちゃっているのか?