エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

私__バッグ: 視線 (Gaze) (2021) - 〈トランキル〉を求める心、そして…

《私__バッグ》──または《I__bags》を名のっている人は、ヴェイパーウェイヴ的ニュアンスのあるアンビエント音楽のアーティストです()。
そのお住まいは、米カリフォルニアのほうだと伝えられています。

Bandcampでのリリース歴を見る限り、この方の活動は、2021年の後半に集中しています。
そのわずか7ヶ月ほどの間に、6作の充実したアルバムが発表されています。

その作品たちは、いちようにドローン風のスタティックさが基調です。
そしてそこに、あるときにはヴェイパー的な甘苦さが、またあるときにはフォークトロニカ的な素朴さとさわやかさが、加味されています。

かつその、“すべて”について、作り込みの過剰感がない、いじりすぎずにいいものをサラッと提示している、という印象。
ゆえに、聞いていて疲れず、いい意味で存在感が薄い──。つまり正しく、《アンビエント》であるわけです()。

──それで、まあ。

いい感じだということは同じでも、私としたら、ヴェイパー特有の何か危なっかしいふんいきをチラッと匂わせている……そういうものに、とくに強くひかれたりして!
この記事の表題に出ている『視線 (Gaze)』、および『意識 (Consciousness)』、これらのアルバムらが、とくに“そういうもの”だと思います。

そういえば。アンビエントめいた音楽を語る決まり文句に、カーム(calm)であってトランキル(tranquil)──などと、よく申しまして。とてもべんりな用語ですから、私も利用いたしますが。
けれどもアンビエント・ヴェイパーみたいなものであれば、それらと不安(anxiety)との間の危険な綱わたりを、人知れずひそやかに制す──しようとしている、というニュアンスが欲しいですよね?

……というか、本来のイーノさんの元祖にして至高さをきわめた《アンビエント》たちは、まさしくそういうものでした()。
それをあとから便乗して出てきた疑似アンビエントらが、のっぺりした単調な〈ヒーリング・ミュージック〉みたいにしてしまったのでしょうか。

そして。ツイッター等でのお知らせによると、私__バッグさんは、この2022年初頭から活動休止の状態にあるとか()。
いろいろと事情があるようですが。しかし私の娯しみのために、その遠からぬ時期の活動再開を、切に願うのです!

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The person who calls himself 私__バッグ - or I__bags - is an Ambient music artist with Vaporwave nuances. He reportedly lives in California, USA.

According to his Bandcamp releases, his activity is concentrated in the second half of 2021. In that mere seven months or so, six substantial albums have been released.

The tone of these works is uniformly droning static.
And the music is sometimes sweet and bitter like Vaporwave, sometimes naive and breezy like folktronica.

The impression is that "everything" is not overdone, and that the good things are presented without too much fiddling.
In a good sense, it has little presence. In other words, it is Ambient.

For my part, I am particularly attracted to the fact that the works of 私__バッグ have a hint of the dangerous atmosphere peculiar to Vaporwave!
Therefore, I am particularly attracted to the albums 『視線 (Gaze)』 and 『意識 (Consciousness)』, which have such nuances deeply.