《エビルDANCERひかり》を名のるのは、日本人であるらしいシンスウェイヴ(Synthwave)系の音楽プロデューサーです。この2021年から、大いにアクティヴのようです(☆)。
その人が9月の中旬、《補 償 金 B U S I N E S S》というエイリアスで発表したのが、ご紹介します“ADVENTURES OF A DAY I SKIPPED SCHOOL”です。
これはいつもと違い、スタイルがヴェイパーウェイヴのアルバムです。全8曲・約14分を収録します。
それを私は一聴、大いに気に入ってしまったんですよね!
こちらの集中がそれるひまもない、コンパクトでタイトな構成です。全般にすばらしいですが、とくにドラムとかのビートの音がいい。
で、あ、さて。古い話になるのですけれど──いや、ヴェイパーに関連して古い話らがついつい出てしまうのは、やむなしですが──。
1980年代の後半くらいには、ダンス系ポップの世界で、その時代のビートボックスのワイルド&パワフルな鳴りを、最大限に活かして!……というアレンジの方向性がありました。
それを誇張して形容しますと、〈ドグゥーン! ズグヮーン! ダ・ダ・ダ・ダッ!〉のような、ものすごいビートが超ラウドで。
私はそれらを後日に聞いたほうですけど、一時はかなり好んでいました。《Georgio》というソウル/ファンク歌手の楽曲は大部分がそういうサウンドで、中古店をめぐってその全シングルを買い集めたりしましたが……(☆)。
……そして。補償金さんによる“ADVENTURES OF〜”のサウンドには、そんなむやみとパワフルだった時代の楽曲らを素材とし、その騒々しいビート等をマイルドに聞かせてくれている、そういうものを感じたのです。それが錯覚でも別に、いっこうにかまわなくありつつ。
たとえば、このアルバムの3曲め、“SUSHI GATE”──これの原曲がどれほどけたたましい響きだったのか、想像するとすごそうですが。
しかしいま聞こえるものは巧妙にローファイ加工された、温かみの豊かな慰安的サウンドであり。そしてそれが背後に秘めた力強さが、もはや幻影のエコーにすぎないのか、あるいはいまだに何かを担保し保証しているものなのか。
そのあたりの分からなさが……つまり《ヴェイパーウェイヴ》だということなのかな、と、私は思います。
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エビルDANCERひかり (Evil DANCER Hikari) is a Synthwave music producer who seems to be Japanese. It seems to be very active from 2021.
And in mid-September, he announced "ADVENTURES OF A DAY I SKIPPED SCHOOL" under the alias 補 償 金 B U S I N E S S (Compensation B U S I N E S S).
This is an album with a style of Vaporwave. Contains 8 songs, about 14 minutes.
I heard this and loved it a lot!
The composition is compact and tight, leaving no room for the listener's concentration to wander. Overall it's great, but especially the sound of Drums or Beat.
In the late 1980s, arrangements that utilized the wild sounds of beatboxes were very popular in dance-oriented pop music. This work seems to be a modification of such sounds into Vaporwave that is easy on the ears and pleasant to listen to.
Behind the lo-fi, soft sounds you hear are echoes of a time when people were overly powerful.