エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

V.A.: Solarpunk:A possible Future (2021) - 心からなる 誠実さをきわめた偽善

聖ペテルスブルクを根拠とするという《global pattern》は、ヴェイパーウェイヴの実績あるレーベルです()。
主に彼らは、スラッシュウェイヴのリリースにおいて、私に強い印象を残してきました()。例となるアーティストらの名を挙げるなら、たとえば《from tokyo to honolulu》、また《desert sand feels warm at night》など。

そして、“Solarpunk: A possible Future”は、そのグローバル・パターンによる、今2021年3月リリースのオムニバス・アルバムです。全17曲・約89分を収録している、と言えます。
そして。これは単なる寄せ集めではなく、その全体が、《ソーラーパンク》という新しいアチチュード──さもなくばフィロソフィー、美学──、それをプロパガンダしようとするもののようです。

ではその《ソーラーパンク》とは、どういう考えや感じ方なのでしょうか? 彼ら自身の説明によりますと──。

ソーラーパンクは(中略)、より良い世界にどうやってそこにたどり着くことができるかというビジョンです。 私たちの生き方を変え、違った考え方をし、私たち自身と自然より上のあらゆる種類の支配を廃止することは私たちの力です(後略)。

……いや。私なんかは、どうも少々奇妙な性分ですので……。
この宣言につき、〈あなた方は、HKE氏らの唱導する“ドリームパンク”に対抗する商標を手に入れようとしているのでは?〉、みたいな気も少し、いたします()。しかし、それはいいでしょう。

それはそうとして。このアルバムの全体の印象は、〈フェイク臭ふんぷんたるニューエイジ系チルアウト音楽である〉、ということです。その印象をもたらす全体の統一感は、実に大したものです。

そして言うまでもなく、〈フェイク臭ふんぷん〉ということは、批判ではありません。むしろヴェイパーウェイヴであるとすれば、フェイクでなくてはなりません。まじめにシリアスなニューエイジ音楽などをやられては、逆にめいわく千万です。

Second∞Sight: Pillars of Creation (202o) - Bandcamp
Second∞Sight: Pillars of Creation (2020) - Bandcamp
これがまたインチキくさいニューエイジ
チルアウト音楽で……思わずなごみます。

それと、もうひとつ印象的なことは。今アルバム中には、《盗用音楽》としてろこつなトラックがほとんどない、ということです()。
まあ、実のところはサンプリングなのかも知れませんが。しかし私たちに親しい、あのろこつで露悪的なサンプルのタレ流しみたいな挙動が、目だってはおりません。

──で、さて。こういう傾向が現在、ヴェイパーというムーヴメントの中で、どれほどにヴィヴィッドであり、どれほどにインパクトのあるものなのでしょうか?

どちらかといえばヴェイパーウェイヴは、ネガティヴ(もしくは批判的)でシニカルでアナーキーな音楽(もどき)として、現在まで時間を重ねてきました。
そうであるがゆえに、これが現在におけるパンクロックであると言えるでしょう。

それに対して、この《ソーラーパンク》はいかがでしょうか。聞くことの愉しみの多さとはまた別に、少し考えさせられるところがあります。

なお、今アルバムのさいごのトラックは、前記事でご紹介した《Second∞Sight》さんによる、13分を超える大曲です()。これが実はもっとも《盗用音楽》くさく、けっきょくはいつも通りなのか、のような気もしてしまいますが!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
global pattern, which seems to be based in St. Petersburg, is a proven label of Vaporwave. Mostly they have left a strong impression on me with the releases of Slushwave.
And “Solarpunk: A possible Future” is an omnibus album released in March 2021 by global pattern. Contains 17 songs and about 89 minutes.
And. It's not just a jumble, it's all about trying to propaganda a new attitude called Solarpunk.

But that concept is another topic. The overall impression of this album is that it is a new age chill-out music with much of fake odor. The overall sense of unity that gives that impression is really great.

And, needless to say, "fake odor shit" is not a criticism. Rather, if it is Vaporwave, it must be fake.

And another impressive thing. It means that there is no sloppy track in the album as “Plunderphonics”.
Well, they may actually be samplings. However, the behavior that is familiar to us, such as the sloppy and vulgar samples, are not noticeable.

So will our Vaporwave possibly cease to be a shameless music thief and become a serious and positive music movement? No way?