ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave, Désir Duplication Répétition ─

Second∞Sight: 人生の瞬間 (2020) - きょくたんに薄められた望みなさ

《Second∞Sight》、セカンド∞サイトを名のっているヴェイパーウェイヴ・クリエイターは、米オハイオ州クリーブランドの人だそうですが……()。
そしておそらくこの方は、2年くらい前から活動しておられるようですが。

そしてご紹介するアルバム『人生の瞬間』は、2020年3月のリリース作。それがこの21年2月、やや注目されるべきレーベル《Underwater Computing _》から、再発の運びとなりました。
で、少し話題になったりもしたので、私もそれを一聴する機会を得たのです。

さてこのアルバム『人生の瞬間』は、全16曲・約85分を収録。一般ポップやR&Bの、もともとゆるめの楽曲たちを、さらにことさらスローダウン──そうして、私の申します《ヴェイパー処理》でまとめ上げたもののよう()。
ジャンル的には、《スラッシュウェイヴ》ということになるでしょう()。全体のムードと鳴り方の統一感が、実にみごとです。

そして、どういう統一されたムードが作られているかというと?
それがただもうひたすらな、けだるさ、ものうさ、そしてやるせなさ──。これなのです(!!)。

……ここに収録されたトラックたちは、その再生速度を約30%ほど上げてやると、〈もともとはこういう楽曲だったのだろうか?〉とも思える聞こえ方になります。
で、その推測される原曲たちの響きは、そんなにまではウツな感じでもないのですが……。

それがまあ。《ヴェイパー処理》というメソッドの怖ろしさなのでしょうか? それとも、セカンド∞サイトさんの手ぎわがトゥーマッチすばらしいのでしょうか? けだるさ一色のムードにそれらがベットリと染め上げられて、ここに『人生の瞬間』というアルバムになっています。

……ああ! 正直なところ、やるせなさにもほどがあるというもので。ちょっといやだな──と、さすがの私も思います。
《アンニュイ・ムード》などということばが、好ましいような意味にも使われますけれど──きょくたんに薄められた《快楽, plasir》の持続として──。ですがしかし、これはもう、そういうかわいいレベルのお話ではありません。

けれども。

そのような、ものうさしかない倦怠アヴェニューの散策かのようなこのアルバムを、ついうっかりにしたって3回も4回も、なぜなのか聞き通しています。何かそれだけの《質》がここにあるということを、私は行動によって肯定しています。

そして。今アルバムのものうさのピークは14曲めの「ロブ」というトラックで、ここでいつもハッとさせられてしまいます。
あるいはこれの原曲を、他で聞いたことがあるような気もします。ですが、それをちゃんと調べてみようという気にはなれない……ああ、という感じにしかなりません。

ところで。こういうセカンド∞サイトさんの、これ以外の作品はどうなのでしょうか。実はその話題に、あまり私はふれたくないのです。

──とは? このご本人のBandcampページを拝見いたしますと、おそらく何か80コくらいのアルバムが、すでにリリースされているようなのですが(!!)。
いや。いくら私たちのヴェイパーウェイヴが、安易で安直でイージーな音楽(もどき)だとしても、〈活動歴2年くらいで80作ほどのアルバムを生産〉などというウルトラなお話を、聞いたり信じたりすることを私が拒否しています。

そういうわけで、あまり多くはチェックしておりませんが。

ともあれ少し聞いてみた中でひとつ、その現在の最新作に近いアルバム“Aether”は、うってかわってドローン系のアンビエント作品(らしきもの)です。タイトル通りにエーテル的なふんいきの、全10曲・200分以上もの再生時間を誇る大作です。
これはちょっと、どうやって作っているのか、見当がつきません。チートくささが、そんなには感じられません。どうあれ、聞き通すことが困難でないというくらいの《質》は、そこにあるものと思えます。

いやはや。このセカンド∞サイトさんはひょっとすると、私レベルのレビュアーに対しては、すごく大物すぎる、あまりにもスケールの大きなアーティストでおられすぎる、そうなのかも知れません。
が、分かりませんけど〈何かある〉という感じは、大いにいたしますので。その真価は、ぜひ皆さまご自身らが聞いてみた上で……!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
The Vaporwave creator named Second∞Sight is said to be from Cleveland, Ohio, USA. Perhaps this person has been active for about two years.

And the album 『人生の瞬間』 (Moments of Life) was released in March 2020. And in February 2021, it was reissued from the remarkable label Underwater Computing _.
So, it was a little talked about, so I had the opportunity to listen to it.

This album 『人生の瞬間』 contains all 16 songs, about 85 minutes. It seems to be a slowdown of the originally loose songs of general pop and R & B.
In terms of genre, it would be Slushwave. The unity of mood and sound is really amazing.

And the mood of this album, which is totally unified, is too dull, fatigue, lethargy, ennui, exhaustion, stagnation, all of them. The Vapor effect over-enhancees that feeling of the original songs. Oh no...!
However, for some reason, there is a lot of attraction. Tired of it, I listen to it again and again. A quite strange masterpiece!