ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave, Désir Duplication Répétition ─

3D BLAST: Music, Here To Stay (2021) - 成功していくヴェイパーウェイヴ

ミシガン州デトロイトに在住だというヴェイパーウェイヴ的クリエイター、《3D BLAST》。2015年からご活躍であるようです()。
この3Dブラストさんの名は、ヴェイパーというよりも《フューチャーファンク》の成功したプロデューサーとして、すでに広く知られているでしょう()。

そして、そのフューチャーファンクで成功しているレーベル《business casual》から、本年1月末にリリースされた3Dブラストさんの最新アルバムが、“Music: Here To Stay”です。
彼のフルアルバムとして2019年以来の作品であり、全9曲・約36分を収録しています。

そしてビズ・カズ社のWebページによると、このアルバムは限定250枚のヴィニール盤が、すでに完売しているとか。これがまたこの世界では、かなり大した成功だと言えるでしょう。

ところで?
実を言いますと私は、この3Dさんの諸作品について先日まで、〈まあ、フューチャーファンクですよね〉──くらいの印象しかありませんでした。私たちのヴェイパーウェイヴであるよりは。

その私が3Dさんの、この新作『ミュージック:ヒア・トゥ・ステイ』に、注目した理由は──。
それは今作が、おなじみのヴェイパー関係ポータルサイトユートピア・ディストリクト》のレビューにおいて、5/5点という大成功を収めていることに、思わず目を見はったためなのでした()。

……いや、その。……ヴェイパー作品らに点数をつけ、5点が満点だとして、かの『チャック・パースンズ・エコジャムズ Vol. 1』や『フローラル・ショップ』らが、その5点だとしましょう。そして、もちろん『新しい日の誕生』も。
仮にそういう基準だとすればヴェイパーウェイヴの歴史上、満5点を獲得するようなアルバムは、せいぜい全10作ほどであろうと、私には思えます。

たとえば。私の尊敬してやまない《サンブリーチ》さんのレビューでも、《三つの太陽》と呼ばれる最高の評価を得ているアルバムは、12作のみです()。
いや、それは、2018年秋までのレコードではあるのですが。しかし、それから現在までに満点レベルのアルバムが何か、あったような気はしません。

とはいえ、仮に4点でも、かなりいい作品であることは間違いありません。それらの作品の存在は、私たちの幸福です。大いなる感謝と敬意で迎えましょう。
しかし。満5点の作品ともなれば、その登場がショッキングな《事件》に他ならず、かつまたヴェイパーウェイヴへの認識そのものを大きく変えてしまう──、そのくらいのものでなければならないでしょう。

そして?
いったいどれほどのものなのか──、という思いで私は、この3Dさんの新作『ミュージック:ヒア・トゥ・ステイ』に聞き入ったのですが。

3D BLAST: Pioneer (2015) - Bandcamp
3D BLAST: Pioneer (2015) - Bandcamp
3Dブラストさんの初期アルバムです。
サンブリーチによる評価は、3/6点です。

素早く結論から述べますと、私による評価で、このアルバムは4/5点です。かなりいい、ということです。
さらにかってな評価をつけ加えると、いままで私の中で3Dブラストさんは、よくて3点レベルのフューチャーファンク(以下、F・F)のプロデューサーでした。それがF・F色の薄まりのせいもあって、4点へのレベルアップを遂げた、とも言えます。

従来までの3DさんのF・F作品とは異なり、今アルバムのタッチは、《death's dynamic shroud.wmv》の傑作たちを思わせるところがあります()。
その《DDSW》をご紹介した記事で述べた、2〜3種類以上のサンプルソースを混ぜ込んでいくような、高度な構成。それが、そのことを思わせるのです。
あまり手間をかけていない感じのヴェイパー作品らが、近ごろ多い中で──それをクールだと思うところもありますが──、この点ははっきり傑出しています。

いっぽうで私が感じるのは、『ミュージック:ヒア・トゥ・ステイ』というこのアルバムに、〈元気がある〉、〈前向き風〉、いっそのこと〈エモい〉、とも言える特徴。
そういえば、そもそもアルバムのタイトルからして、みょうに肯定的ですよね!

が、正直なところ、どうでしょう……。《ヴェイパーウェイヴ》というものを私は、実にたちの悪い、無気力・退廃・シニシズムのきわまり、かとも考えています。
それは相対的には新しいですが、しかし老いさらばえ擦りきれた感性の分泌する、邪悪な音楽(もどき)です。

そして随所に1990年代的なクリシェが飛びかっている今作にも、そういうところが皆無ではありません。ゆえにヴェイパーです。けれど、何か前進でもしそうないきおいが、ふんいきにおいて支配的でしょう。

そしてユートピア地区のレビュアー氏が、〈文句なしにフル5点! 早くも本年のベストワン登場!〉とホットに感激がきわまってしまったのも、おそらく今作のヤングなフィーリングの肯定ムードにライドオンさせられた結果、とは考えられます。
そして否定はできません、そうした受容の仕方を。

そしてこのような、それほど根拠もないような肯定ムードへの転換によってヴェイパーウェイヴも、現在の退勢から成功へのルートに戻るのでしょうか?

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
3D BLAST, an artist who claims to live in Detroit, Michigan, USA. It seems that he has been active since 2015. His name seems to be already widely known as a successful producer of future funk rather than Vaporwave.

And the latest album by 3D BLAST, is “Music: Here To Stay”. It's a release from the successful label business casual of future funk, but the content is getting closer to a full-fledged Vaporwave with the tone of f.f. fading. Yes, I like it.

There are two distinctive features of this album.
First of all, it is a complex and advanced sampling structure reminiscent of the works of death's dynamic shroud.wmv. great!
And the other is the existence of some strange positive mood, the creation of a mysteriously vital vibrant atmosphere.

And I can't say that there isn't something I can't quite sympathize with about the latter feature. However, it can be admitted that it is a very good work!