エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

death's dynamic shroud.wmv: SEAWRLDハートブレーク (2014) - ナオンはイチコロなんじゃよー

フィラデルフィアのヴェイパーウェイヴ・バンドである、《death's dynamic shroud.wmv》)。彼らは何と、3人組の編成だと伝えられている。
ヴェイパーのバンドで2人ならけっこうあるが、しかしトリオとなると、他には知らない。それも臨時のユニットではなく、パーマネントのグループとして()。

と、それを聞いたら? いまここでは《DDSW》と略称するこのバンドは、2014年に集中してモーレツに活動し、その1年間に11作ものアルバムを残したようなんだけど……。
しかもそれらが、すべてフルのアルバムであるばかりか。中でもいちばんの大作『DERELICTタワー』は、全84曲で演奏時間が4時間にもおよぶ(!)──、実にトホーもない、サンブリーチさんの評言によれば、まさに〈ビヒモス〉レベルのモンスターだったんだが……()。

──しかしその激烈なる大量生産も、3人がかりという体制を考えれば、あまりにもムリをきわめた奇跡だとも言いきれない、と考えられるんだろうか?

さらにサンブリさんの話によると、DDSWは、制作にさいしてアナログの処理をけっこう多用してるんだとか。ビニール盤やテープからのサンプリング、アナログ機材らを通しての加工、可能だったらぜひヤリたいことと考えられる。
しかも聞いた感じ、DDSWによるトラックたちは2〜3曲、もしくはもっと多数のソースからのサンプリングを組み合わせたものが多い。かなり手の込んだ構成のものが、目立つ。

──このような手間のかけ方も、3人がかりという体制を考え……(略)。

ところで? いまというときにDDSWの歴史的作品らを取り上げようとしている理由は、ちょくちょくご紹介しているヴェイパーの名門レーベル《B O G U S // COLLECTIVE》、そのシャチョーである《TVVIN_PINEZ_M4LL》氏のツゥーイ卜で、次のような小話を見たからなんだ。

問:ボクのガールフレンドにヴェイパーウェイヴを好きになってもらうには、どうすれば?
答:DDSWの“Butteflies”を、聞かせましょう。コレはゼッタイ効きます!

そんなすばらしい楽曲があるのか、〈ナオンはイチコロじゃよー〉ってか〜、と思ってそれを探してみた。しかしコレが、そうストレートには見つからない。
なぜってBandcampページに書かれた正規のタイトルが、「♧♣︎*~*฿⋃⨢⨣⋵Ȑ⨏ḶȈ⋵§*~*♣︎♧」、というとんでもねェ表記になってるからだッッ!!

が、分かってみれば何でもない(と言えなくもない)、DDSW作品ではもっとも高く評価されてそうなアルバム『SEAWRLDハートブレーク』──マリンレジャー系テーマパークみたいなふんいきをたたえた名作──、その第2曲なのだった。

だがその「バタフライズ」をいま、あらためてじっくり聞き直してみても、とくに女性に対してどうこうって感じはないが……? 曲そのものはいいけど。
オトコふぜいには分からない《何か》がそこに、あるのだろうか。もし、ご自分のガールフレンドをヴェイパー馴致なさろうとしているアナタがいらしたら、ぜひ実験の結果をご報告いただきたいっ。

それはそうと。そんな『神聖モテモテ王国』の《ファーザー》方式の、トンチンカンな《ナオン》攻略研究(?)のついでに、新しく気づいたことがあるんだ。

ってのは。DDSWの楽曲らの多くには、ビデオゲームファイナルファンタジーシリーズで聞いたようなサウンドやメロディの断片らが、けっこう含まれてそう、ということ。

それがまた、はっきり堂々とタレ流しているものは少なくて。前述したDDSW独特の音作りの複雑さ、その中に点在しやがっているのがニクい。
かつ、『FF』なのか何なのかは分からないが、しかしゲーム機から出てる音楽のサンプリングみたいのも頻出するし。

たとえばアルバム『ティーンファンタジーMYSTIC QUEST』第8曲の、「♍︎INT PRO♍︎ DR€SS ✔︎」()。これなんかいちばん堂々と流してるんだけど、それらしくない?
あといま気づいたが、『SEAWRLDハートブレーク』の第8曲「❤︎✯₷⋃☨☨ȈŊǤ ☯Ɲ ℳȀƘȄ-ȔƤ 4Ü✯❤︎」、そして第13曲「♡♡♡再発見する♡♡♡」。
このへんはSNES時代のやつだったっけ? それにしても、タイトルらの表記が目に刺激的〜!

……まあこのグループは、既発アルバムのタイトルらにも、その〈MYSTIC QUEST〉だとか〈シェンムー〉だとか、1990年代ゲームからのワードらをあれこれ出しているし。詳しい人が聞いたら、さらに多くのゲーム系サウンドらが見つかるのかも。
またこうなると、アルバム『失われた時REGRET』のカバーアートの女性が、『FF-VII』のヒロインのエアリスちゃんのようにも見えてくる。ただし印象はちょっと近いが、見比べてみたら細部はけっこう違った(!)。

かつこうなると、かの超大作アルバム『DERELICTタワー』に対する比喩表現も、ビヒモスというよりベヒーモスと、FF風に表記しておくべきか。
とすれば『SEAWRLDハートブレーク』は、海のものなのでリバイアサンか。あ、いや、そこまで言うまでのバケモノ性はないか。

で、しかも? そうやって随所に『FF』っぽさを匂わせているとしても、かと言って、どういうところへ帰結するでもない。
言い直してDDSWのサウンドらは、もとの『FF』シリーズのBGMらがはっきり表現しようとしているような、壮大さだとか叙情性だとか、そういうところへくっきり帰結することはない。それはもう、キッチュであることが明示されているせいもあり。

そうしてただ、DDSWによる音楽は、薄ぼけて色あせながら断片化されたノスタルジーたちと、それらの集積から立ちのぼる欲望の残り香、そんなようなものらの在ることを、うっすら暗示しているだけなのだろうか。……例によって、ね!!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Death's dynamic shroud.wmv is a three-member Vaporwave band from Philadelphia, USA. They concentrated and worked hard on 2014 and seemed to have left 11 full-length albums.
And 『SEAWRLDハートブレーク』 is a masterpiece with an atmosphere like a marine leisure theme park, which is considered to be the best fruit of the year of rich harvest.

When I listened to it (and them) again, I noticed that their works contain many elements of game music, including the famous “Final Fantasy” series.
However, those elements have lost their original meaning in the songs with the unique complexity of DDSW. Do the tracks only slightly imply that there are faint, faded and fragmented nostalgia, and the remnants of desire that rise from their accumulation? …… As usual!!