エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

luxury elite: blue eyeshadow (2021) - 《女王》の絶妙なコントロールと支配

ヴェイパーウェイヴに関わる私たち全員を統べる《女王》、ラグジャリー・エリートさん()。
言うまでもなくこの方は、ごく早い時期からこのジャンルとシーンを支え、そして育んできてくれたヒーローたちのひとりです。

そして“blue eyeshadow”は、彼女の最新のフルアルバムです。2021年8月に、全世界待望の中でリリースされました。全17曲・約53分を収録と、ボリュームもたっぷり!

拝聴しますと、いつもの通りの歓楽の夜の世界──すなわち、《レイトナイト・ローファイ》です()。そもそもそれは、彼女(ら)が創始したサブジャンルです。
ちょっと特徴的かと思ったのは、全編を通し、シンセベースらの響きにアクセントが感じられます。近ごろの音楽ではあまり聞かれないような、〈ギコッ〉、〈グギャッ〉、という1980年代的なサウンドです。グッド!

……ですが? このアルバムがひじょうに聞く愉しみなのですけれど、しかし意外にサウンドが、ノーマル寄りかとも思ったんですよね! やや、異常性に欠けるかのような。

どうでもいいような薄っぺらなフュージョンイージーリスニングなどを、英語では〈ウェザー・ミュージック〉と呼ぶらしいです。──ということを、以前にもお伝えしましたが()。
そしてこのアルバム『ブルー・アイシャドウ』は、単にそういうものとしても、意外に通用してしまいそう……かも知れません。ちょっと音質はよくないが。

そこで、〈こうだったかなあ?〉……と思いながら、ラグさんの過去作らを聞き返していたら、やはりそうではない。異常でした

たとえば、かの歴史的名作、聖ペプシさんとスプリットのアルバム、“LATE NIGHT DELIGHT”(2013)。そこにはもっと、ひどくドロドロとヴェイパーでしかありえないサウンドのおぞましき狂態が、ありありとありました。

たとえば、その第2のトラック、“Mild Seven”。いや、いまはもう、そのタイトルの《マイルドセブン》という商品名からしてノスタルジーのきわまりで、泣けてしまいますけれど。
で、このトラックは、1980年代後半のニホンのポップ曲をサンプリングしているのですが……()。

そのもと曲を聞いてみると、ちょうど前の記事で指摘した、いきなりのビートボックスがドギャ・グギャッと騒々しい系のアレンジです()。いや、それがいいのですが。
そしてラグさんは、それを大はばにググッとスローダウンし、何らかのローファイ加工を施して、きわめて〈マイルド〉化。そして、おそらくイントロのところをループさせています。

それだけの操作からにじみ出る、狂的な欲望のあらわれ。そしてブツリと切られて次のトラックへと瞬時に結ばれる、その終わり方まで完ぺきです。

そしてそうした、少々らんぼうかとさえ思えるような、瞬時&瞬時の楽曲らのつなぎ方──曲間の無音パートがほとんど存在しない、あってもごく短い──そもそも曲の終わり方が、かなりとうとつ気味である──。
この構成は、初期のラグジャリーさんのアルバムらに、しばしば存在した特徴です。そしてその絶妙ならんぼうさが──斬れのある刻み方が──力の行使が──、私たちの被虐心をかきたてて、わが女王への忠誠心をいや増してきたのです。あれがもう最高でした!

かといって? ──別に同じことをずっとしていればいい、とは思いませんので。私たちに下賜される女王の慈愛を信じながら、歓びをもって、とわに服従しつづけます。

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
The Queen of Vaporwave, luxury elite, you know. And “blue eyeshadow” is her latest full-length album, which was released in August 2021, amidst worldwide anticipation. A total of 17 songs, about 53 minutes, plenty of volume!

When I listen to it, it's the same old joyous night world ─ Latenight Lo-Fi. It's a sub-genre that she (they) created in the first place.
What I thought was a little characteristic was the accent on the sound of the synth bass throughout the songs. It's a 1980's sound with hard overtones that you don't often hear in music these days. Good!

But...? I really enjoy listening to this album, but I thought it sounded a bit too normal.
So I went back and listened to some of her older albums, and the insanity is still amazing.
The split album with Saint Pepsi, "Late Night Delight" (2013), which can only be called a classic. The second track, "Mild Seven", sampled a Japanese pop song from the late 1980's, and the sharpness of the processing gave me chills all over again.

One of the characteristics of these early luxury elite is that the end of the song is very dogmatic, and the song leads into the next one with almost no silence. I really liked the wildness of it.
However, what about it? ─ I don't think it's enough to do the same thing all the time. We will continue to obey forever with joy, believing in the Queen's mercy that is bestowed upon us.