エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

チヘイ・ハタケヤマ: Void XXII (2021) - 《私》というベイビーを安眠させる音楽

《Chihei Hatakeyama》──畠山地平さんについては、すでにご存じの方が多いでしょう()。

アンビエント音楽の分野にてチヘイさんは、ゆうにニッポンを代表している最良のアーティストであろうと、私は考えています()。
2006年のデビューアルバムである“Minima Moralia”から現在まで、チヘイさんの音楽に失望させられた記憶が、まったくありません。ぜんぶいい。

その音楽性をひとことで言おうとするなら、ドローン・スタイルのアンビエントです。きわめてジェントルな響きらが折り重なって、やすらぎをこうむると同時に、ふくよかな変化の味わい。飽きさせることがありません。

……いや、はるかに遠い記憶を喚び起こそうとしてみると、かなりの過去にはフォークトロニカ的な作品も、チヘイさんにあった気がするのですが。
じっさい、チヘイ氏の音楽のベースはギターやピアノらの生演奏だそうなので、そのあとの高度な音声処理のプロセスを省いたら、わりにフォーク的なものらが残るのかも知れませんが。

ともあれ実に、〈実用的〉な作品たちがあります。アンビエントのエッセンスは、やさしみ実用性・そしてシステム志向、と信じている私にとって、ひとつの理想の姿なのです。

さっき調べていたらチヘイ氏の、ことし2月のインタビュー記事が見つかりました()。その中の、きわめて興味深いところを引用します。

私の最初の音楽的記憶は、私が幼稚園にいたときです。地元のスーパーで新井由実が演奏した「卒業写真」の曲はとても印象的でした。当時は誰のアーティストなのか、どんな曲なのかわからなかったので、後の人生でそれを理解したときはワクワクしました。

そうです! 《スーパーのBGM》こそが、私が何百回も強く訴えておりますように、“すべて”の母であり父であるのです! イェイッ

なお、グーグル翻訳が誤っていますが正しくは、“荒井” or 松任谷由実さんによる、「卒業写真」(1975)。あのミディアムスローの快いトラックに、私たちの地元のスーパーマーケットのアンビエンスが付加されたら、さらにどれだけすばらしいことか! たまりませんね!

……そして、ご紹介する“Void XXII”は、チヘイ氏の2013年から継続中である“Void”シリーズの、第22弾であり最新作です。全10曲・約37分を収録。

チヘイさんのアルバムとしては、やや短めのトラックらを多く含むものです。ここ数年のヴォイド・シリーズは、わりといつもそうですが。
ゆえに訴えかけているニュアンスは、《持続》の粘り強さよりも、《変化》というか、響きのはば広さ。ですから親しみやすくもあり、ドローン系アンビエントへの入門用としても、みごとに機能することでしょう!

──ところで? なぜふと急に、すでにじゅうぶんフェイマスかとも思われる、チヘイさんのご紹介におよんだのかというと。

Chihei Hatakeyama: Autumn Breeze (2020) - Bandcamp
Chihei Hatakeyama: Autumn Breeze (2020) - Bandcamp
意外ですが、三国志の〈秋風五丈原
にインスパイアされたアルバムだとか!

つい数日ほど前ですが、《White Noise for Baby Sleep》みたいな趣向(?)のあることを、初めて知ったんですよね!
うそかまことか、ホワイトノイズの持続を聞かせると、赤ちゃんたちがスヤスヤと寝入ってくれるのだそうです。りくつとしては、〈妊婦さんたちの胎内で、赤ちゃんたちがずっと聞いていたサウンドに、それが似てるから〉、くらいに言われていますが……()。

リィーリィ、Really

で、そうやって利用されるためのホワイトノイズの、10数時間にもおよぶ持続であるトラックらが、各ストリーミングメディアで大量に公開されています。

ちょっと私も聞いてみましたが、しかし、あまり正しい意味での《ホワイトノイズ》ではないものが多いようです。
詳しい説明は省きますが《ノイズ》には、〈シュワーッ〉としたホワイトから〈グォーッ〉というレッドまでのグラデーションがある、とされます。そして出廻っているものは、おおむね明るめの《ピンクノイズ》あたりでしょう。

ですが、まあ。意外に効くのかも知れませんが(!?)、しかし聞くようなサウンドだとも思えない。
自分がいまいち赤ちゃんではないせいか、たとえば、チヘイ氏によるトラックたちのほうが、よっぽど快く眠ることができる……。

ということからチヘイさんのことを、あらためて強く意識してしまったのでした!

関係ないことをちょっと述べますが、赤ちゃんの夜泣きなどに関するご両親らの苦悩──、ということは、人の親でない私にも、少しは想像が可能です。
ゆえに、こんな薄弱な理論にもとづいたホワイトノイズの利用でも、もしも効いたなら大成功、という想いでトライなさったりするのでしょうけれど。

ならばそのさい、かのブライアン・イーノさんに始まり()、そしてこのハタケヤマさんあたりにいたる、アンビエントの豊かにして崇高なる作品たち──が、ことによったらあなたのベイビーらのお気に召さないかどうか? そのあたりをもテストしてくれたら、実に私の深い悦びなのです!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Chihei Hatakeyama is the king of Japanese Ambient music. From his 2006 debut album “Minima Moralia” to the present, I have no memory of being disappointed by Chihei's music.
In a nutshell, his musicality is Drone-style Ambient. The extremely gentle sounds fold over to give you peace of mind, and at the same time, you can enjoy a rich change. You won't get bored. It is supreme.
And I found an article “Interview with Chihei Hatakeyama” in this February (). There he said,

My earliest musical memory is when I was in the kindergarten. I remember the song “Sotsugyou Shashin” by Yumi Arai playing in our local supermarkets which was very memorable.

...That's absolutely right! Supermarket BGM (Muzak) is the mother and father of “everything”, as I have argued hundreds of times!

And the song being said is “卒業写真 / Graduation Photograph” (1975) by Yumi Matsutoya, the queen of City-Pop, which you may know. How great it would be if we added the ambience of our local supermarket to that medium-slow joyful track! Irresistible!