ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

radiant memory: memory maps (2020) - 面白くもないし、つまらなくもな……。

《Internet-Stories》というヴェイパーウェイヴのレーベル、何か違う世界を見ている風があり、その存在感がぶきみだと思う()。いや、まあ、たぶんいい意味で。

そもそもその名の〈インターネットの物語〉って、どういうお話なんだろうか?

それがまさか〈ARPANETの誕生〉とか〈TCP/IPがどうこう〉ってな高尚なお話だとも思えず、どうせこのケチなネットワーク上にうず巻く……オレらモブの衆のあさましい欲望・願望らの交錯、そのみっともよくはない絵図……だろうかなァ、くらいのことしか思い浮かばないが?

が、そんな臆測はともかく。
そのインタネット・ストリーズからのリリースらで目立ち気味なのが、《Computer Gaze》というサブジャンルに属すかも、っていう作品たち。

そのコンピュータゲイズとは、もともとは、ヴェイパー最初期からの重要なアーティスト《Infinity Frequencies》が、自分の作風に与えた名前だと考えている()。それが現在はヴェイパーのサブジャンル、またはそのひとつのスタイル、のように言われなくもない。

じゃあそのコン・ゲーとはどんなスタイルなのか、というと。

まず、基本的な構成が断片形式で、1トラックが40から90秒くらい。
そして出どこのつかめぬ安いイージーリスニングやCMソングらの素材をローファイ化し、いっこも面白くもない深夜テレビを用もなく独りただ眺めている、そんなムードを作る。
その深夜テレビにしても、1980-90年代のローカル局っぽいふんいきが出せればいっそう好ましい──、のかも知れない。じっさい、それ風なサンプルがけっこう聞こえているし。

また、素材の面からするとシグナルウェイヴに近いところがあるわけだが()。しかしコン・ゲーが独自だと感じられるのは、〈下げる、落とす、フラットさへの志向〉への固執があり気味で。

というわけで、もぉ〜テンサゲもあんまりだし。また、言うほどのコンピュータ要素がどこにあるのかも分からないんだけど。
がしかし何か、このテンションの下がりきったダウナーの世界に、奇妙きわまるふしぎな心地よさが、ないとは言えない。

と、こんなことを書いていて思い出したのは……。またオレが古いことを言うけど、ニッポンのポストパンク的なバンド《突然段ボール》の、まあたぶん代表曲「変なパーマネント」(1980)のことなのだった()。

面白くもないし つまらなくもない
楽しくもないし 哀しくもない

……だからどうした、と? 別にこれをすばらしい楽曲だとか言わないし、そもそもこのリフレインの歌詞だけぼんやり憶えてて、曲名なんかはさっきまで忘れてたんだ。
しかし、まあこの……。とくに面白くもなく過ぎていく時間を、わざわざ捉えて対象化してみようという酔狂なアチチュードが、ことによったら先進的だったのかも?

話を戻し。さて、いま現在のインタネット・ストリーズの最新作が、そのコン・ゲーだと自分は思う。それが《radiant memory》によるアルバム“memory maps”、2020年9月リリース。
これがけっこうつきつめた、コアなコンピュータゲイズのように聞こえる。全7曲で約9分という超コンパクトな構成からして、かなり本気くさい。

かといって、この〈面白くもないし、つまらなくもない〉的な時間の凝縮を、どう受けとめたらいいのか。
むしろそういう面白くもなく過ぎていった時間らが、いつかレイディアントに輝くすてきなメモリーになることを、今作は先取りしているのだろうか。というか、すでに《──である。》であるのだろうか。

ところで。このレイディアント・メモリーと同じ9月のインタネット・ストリーズ作品が、《サ ガ》による『晴天』。実はこれもコン・ゲー扱いで、ペアでご紹介するつもりだったんだけど。
しかしよくよく聞いてみたら、これはコン・ゲーじゃない。そんなにはテンションを落としてないし、また断片性をつきつめてもいない(全10曲・約21分)。

けれどひじょうに愉しいアルバムなので、あわせてご推薦いたしておきます。方法的にはレイトナイト系に近いが()、しかし『晴天』というだけにムードが明るく白昼的。

そしてレイディアント・メモリーにしろサガにしろ、その作品はいまのところ、これら1コずつだけのよう。ぶきみな存在感を放っているインタネット・ストリーズから、彼らのまたのリリースが……あればいいと思うが……!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
The Vaporwave label “Internet-Stories” seems to be looking at something different, and its presence is eerie. No, well, maybe in a good way.
And my impression is that in their releases, what could be called “Computer Gaze” stands out. Computer Gaze is the name given to his style by an important artist from the earliest days of Vaporwave, Infinity Frequencies. But now it's being modestly described as a style.

And the feature of the style called Computer Gaze is that the sounds like fragments of TV commercials are first lo-fied and looped. And in fragmented form, it creates an indescribable low tension and a mood that makes you feel like you alone are just watching late-night TV, which isn't fun at all.

And the current latest release of Internet-Stories, the album by radiant memory, “memory maps”. This sounds like a pretty tight, core Computer Gaze. It's quite serious because of the ultra-compact composition of about 9 minutes for all 7 songs.
And for some reason, this terrible rejection of excitements is fascinating.