ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

Vaporwave的な記事たち - 《ビッグ・スリー》の誕生、リミナルスペース、そして幽霊学

全国一千万ヴェイパーウェイヴ・ファンの皆さま、お待たせいたしました!
ヴェイパーウェイヴに関連し、私がすてきだと感じた記事たち3本を、以下にご紹介します。まいりましょう!

  • みしんさん: Vaporwave史 2008-2011年(仮) - note(

ヴェイパーウェイヴの前史ということになる2008年から、ジャンルとしてヴェイパーがほぼ確立された11年まで、その主な流れがコンパクトに紹介されています。

すなわち。2009年に動画集『メモリー・ヴァーグ』、そして10年にアルバム『チャック・パースンのエコージャムズ 第1集』という、ダニエル・ロパティンさん(Oneohtrix Point Never)の先駆的で決定的な作品らがあり……()。
続いて2011年、ジェームズ・フェラーロさんの『ファーサイド・バーチャル』が、ユートピアン系ヴェイパーの元祖として登場し……()。

そして同年末、ラモーナ・ゼイヴィアさんのマッキントッシュ・プラス『フローラル・ショップ』が、いま誰もが知る《ヴェイパーウェイヴ》のサウンドとイメージ──その原型を、世界に提示しました。そこまでのお話です。イェイッ

なお、このあとにご紹介するイール_フェイスさんのエッセイは、『エコージャムズ 第1集』、『ファーサイド・バーチャル』、『フローラル・ショップ』らをまとめ、初期ヴェイパーの三大名作、“The Big Three”と呼んでいます。

さらにこれから続編、2012年以降のヴェイパー史が書かれる予定であるようなので、私は楽しみにしています!

  • アシャータさん: 街中でmallsoft体験を探したらLiminalSpaceを引き当ててしまった話し。 - note(

《リミナルスペース》──ということばが、近ごろ少し流行り気味です。いや、日かげの世界ばかりを見ている私ども、その中だけのことかも知れませんが()。

そういえば。ミハイル・バフチンさんがドストエフスキー作品のことを、《踊り場の文学》と、形容していた気がしますけれど──つまり、通常は移行の過程でしかないような場所や時間らに、なぜか重要なイベントらが起こりがちという意味で──。
しかし、ただいま確認できないことが、実に遺憾です。

【追記】
ドストエフスキー作品における「敷居」「階段」「踊り場」などの重要性に着目して、これらを「カーニバル的空間」と名づけたのはバフチンである〉(
……だそうなので、それほどひどいうそは言っていなかったように思います。

ともあれ。そんなお話を読んでも読まなくても、そんな階段の踊り場、ろうかのつき当たり、また空き部屋や空き地のたぐい……。そうした《意味の空白》をなし気味のゾーンらを、いつも少し気にしながら、生きてきました。

385North: ショッピング at Yokohama Mall (2019) - Bandcamp
385North: ショッピング at Yokohama Mall (2019) - Bandcamp
これも私が好きなモールソフトです

さてご紹介する記事の著者・アシャータさんは、私どものフェイヴァリットなサウンドである《モールソフト》)──、それ的な空間を実世界に求めて、廃墟化しつつある〈船の科学館〉、およびオフの日の〈東京ビッグサイト〉らを、ご訪問されました。
ところがそこにあったのは、むしろ《リミナルスペース》のド濃いしろもの。よく言われる、その〈不気味さ〉と恐ろしさが、あまりにも高じていたもの……。

……であった……という、冒険の記録です。各スペースたちの凄絶な不気味さを伝える貴重な動画も掲載された、賞賛すべき記事です!

いやさて、私なんかのイメージしているモールソフトは、まさに《スーパーのBGM》にすぎなくて。だからスーパー的な施設に足を踏みいれるたびに、耳をちょっとすませ、そのあさはかな選曲を愉しむのですが。

いっぽうアシャータさんの場合、その旺盛な行動力があだになって、過剰な恐怖を味わってしまったのでしょうか。いや、〈そうではない〉と言いきれるよう、この冒険をぜひ皆さんも共有してください!

  • Eel_Faceさん: “ヴェイパーウェイヴ:悪魔ばらい” - Agora Road's (

イール_フェイスさんは、どこか英語圏の大学生。そして彼によるエッセイ『ヴェイパーウェイヴ:悪魔ばらい』は、〈カルチュラル・スタディーズ〉科目のレポートとして、大学に提出されたものであるそうです。
そしてそれが、ヴェイパー仲間の集まるフォーラム《Agora Road's Macintosh Cafe》にポストされ、私にも拝読する機会が得られました()。

これはもう学術論文のようなものなので、読みこなすのが、ややたいへん。というか、〈ヴェイパーもすでに学術の対象かよ〉ということで、私どもも少し鼻が高い。あ、いや。

文中のキーワードのひとつが、“hauntology”なのですが。〈幽霊学とは何じゃ〜?〉と思いましたけれど、これは《憑在論》と訳されている、デリダさんの用語であるようです。
〈たとえ死者であろうと、作り話や空想であろうと、それらを私たちが意識する限りは、完全にないものとも言えない〉、くらいの哲学論かのようですが。

──20世紀の末あたりに夢みられた《ポストモダン的な未来》みたいなものが、逆に現在は、いまの私たちを眺めかえしている。
この《幽霊》からのまなざしの存在に気がついたとき、ついつい思わず私たちのヴェイパーウェイヴが、始まってしまう。
──おそらくは、そのくらいなお話なのかな、と独り合点しました。

Vaporwaveは「エクソシスト」として理解されており、過去と未来の亡霊を説得すると同時に、これらの亡霊を生み出している状況を批判している。
そうすることで、Vaporwaveは、同時代性や、「ノスタルジア」を構成するものや構成すべきものに関する一般的な概念を批判する、より大きな文化的能力を促進します。

……というイントロはきわめて調子が高いですけれど──イェイッ──、しかし結語のところは、もう少しトーンが懐疑的な感じです。
ではあるとしたところで、しかしヴェイパーウェイヴよりもいいものなんて現在は存在しないので、私たちはこれでいいと思います!

……いや。そんな〈お次のもの〉が存在するとしたら、それこそ《幽霊》として、ですから。そういう《幽霊》からのまなざしを意識しておく必要も、絶無だとは言えないのでしょうか。
そうしてハムレットのように私たちは、《幽霊》によって導かれ、そしてどこへと進みましょう。

[шrαρ-υρ in ԑngłiꙅℏ]
“Vaporwave: Exorcist”, Introducing the essay by Eel_Face ()

Mr. Eel_Face is an university student from some English-speaking country. And his essay, “Vaporwave: Exorcist” was submitted to his university as a report for a Cultural Studies course.
And the essay was posted on Agora Road's Macintosh Cafe, a forum where vaporheads gather, and I had a chance to read it ().

It's like an academic paper, so it's a bit difficult to read and understand. Or rather, we are a little proud of ourselves, because "Vapor is already an academic subject?" Oh yes, no!

One of the keywords in the text is "hauntology," and I thought, "What is it?". It seems to be a Derrida's term.
And it seems to be a philosophical theory that says, "Even if it is the dead, a fiction, or a fantasy, as long as we are aware of them, we cannot say that they are completely absent".

......The "postmodern future" that was dreamed up around the end of the 20th century is now, on the contrary, looking against at us.
When we notice the existence of this gaze from "ghosts", we involuntarily start our vaporwave.
......I thought this may be a story like that perhaps.

Vaporwave is understood as an ‘exorcist’ in that it both convokes the ghosts of past and future whilst being critical of the conditions that produce these ghosts. In doing so, Vaporwave facilitates a greater cultural capacity to critique contemporaneity and popular notions of what can and should constitute ‘nostalgia’.

The intro of the text is very high pitched ─ yeah! ─ but the conclusion is a bit more skeptical in tone.
But we're okay with that, because there's nothing better than Vaporwave right now!

No. If such a "next thing" does exist, it must be a "ghost". And I think it is necessary to be aware of the gaze of such "ghosts".
Then, like Hamlet, we will be guided by the ghosts, and where will we go?