エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

【Kowloon】コカイン商人: 広告を通じて物理的な宇宙を超越する (2020) - いい巨乳 / ボヨヨ〜ン

誕生──! 厳選された最高の素材(サンプル)を、本場のヴェイパー職人が、じっくりとチョップしスクリューいたしました!
めしませ、シグナルウェイヴ! 新・発・売!!

……と、いうわけで《シグナルウェイヴ》──テレビCMを筆頭とするコンパクトでインパクトある音声サンプルらを乱用したヴェイパーウェイヴ──、そのご紹介のお時間です。皆さまのご案内役は、わたくしこと陰気なモドキちゃんでございます。

さあ今回ご紹介するアルバムは、「広告を通じて物理的な宇宙を超越する」。その作者は、米ミシガン州ヘル(Hell)在住を自称する《【Kowloon】コカイン商人》さん。
ちなみに《ヘル》は実在の地名ですが、しかし人口260人ほどの小集落、地獄めいた風変わりな名前のみ有名──だそうなので、いかがなものでございましょう?

さて、この九龍コカイン商人さんは、今2020年・初頭、いきなり3コのアルバムをBandcampに投じたイキオイある新人(らしき人)。それ以前のアピアランスは、18年に《Fictional Girlfriend》のアルバムにゲスト参加()、それしか確認できていない。

で、本人が自作らにシグナルウェイヴのタグを打っているので、たぶんシグナル系なのだろう、と信じておく。
てのはこのコカイン商人、その曲名とアルバム名らはすべて日本語だが、しかし楽曲内にはニッポンの要素がごくわずか。サウンド加工もキツいので、素材が何なのか見当がつかず。言語的には英語が多い気がしたので、たぶんアメリカのCMが中心だったりするのか、と善意で解釈。

そしてシグナル系として、ウチ的には《░▒▓新しいデラックスライフ▓▒░》以来のきびしいサウンド)。もう、グッチャグッチャの大カオス。内容的にはヴェイパーノイズ寄り、と言ってよさそう。

だが、そうでありながら意外に聞きやすく耳になじみ、かつ全編がスピード感に満ちあふれ、すなおにカッコいい、ノレる! 既発のアルバム全3点すべてよい──と、ついベタぼめしてしまう。
ノレるといっても、フューチャーファンクが流用しているディスコ/ハウス系、もしくはレゲエ/尻跳/ドラムン系、そういう既存のノリとは違う、新奇でチン妙なグルーヴ感がある。かつ、2分弱くらいの短い楽曲らの積み重ね、という構成も印象がいい。

そして「素晴らしいバスタブ」、「薬を楽しむ」、「いい巨乳」、といった曲タイトルらも面白ふしぎでナイスなセンス。……いや「いい巨乳」といっても、何がどうしていい巨乳なのかは、まったく分からないけど。
しいて想像するならば、曲の中に「ボヨヨ〜ン」みたいな効果音がちょっと聞こえるところだろうか? いや、こんなワケの分からぬ《音楽》に、楽音と効果音の区別もないんだけどっ。

ところでこのコカインさんの「広告を通じて物理的な宇宙を超越する」、そのBandcampページに掲載された説明文が挑戦的である。

蒸気波の歌が多すぎると、過去を現代の状況のレンズとして使用するのではなく、過去を自分自身のために使用することになります。
今日の世界では、聖ペプシや男性の散髪のようには聞こえません。今日の世界はこんな感じです。

Google翻訳システムの出力)

ヴェイパー界の現状が懐古的に過ぎるのでムシャクシャして、ついヤッた。オレのコレこそがナウでアプ2デートなヴェイパーなので反省していない──などと、コカイン商人は自供しており。……イイぞっ! これくらいナマイキなヤツが出てこないと、シーンは面白くならない。
だがそれにしても、守旧派の代表として、かの聖闘士ペプシ様と並んでヤリ玉に上がるなんて、オレがもっとも好んできた《haircuts for men》ちゃんは、意外と大物だったのか()。まあそれはともかく、また次なる九龍からのたよりが楽しみでならないっ。