エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

うぐいす祥子「ときめきのいけにえ」 - こわいくらいに(?)──ときめき卜ぅ十イ卜!

……あっれっ? コロナウイルスのブーム(衝撃)だかフィーバー(熱病)だか、もう3月も半ばをすぎたのに、ぜんぜん治まらないんですけど?
いや、むしろ。サッカー協会の田島会長まで罹患しちゃったとかで、ぜんぜんシャレにならない様相へ展開中。
そこでもう、どいつもこいつも伝染るからなるべく外へ出るな、ヒマならネットのまんがでも見てやがれ──といった世間の空気もありそう。じゃあちょっと、オレらもそういう方向で。

そこでご紹介する「ときめきのいけにえ」は、マガジンポケット2020年頭からの新連載。隔週・水曜で掲載中。描くうぐいす祥子先生は、「死人の声をきくがよい」(別名義・ひよどり祥子)等で、すでに定評あるホラーまんがの名手。
と、こうして社会にリアルのホラーが蔓延してるとき、まんがのホラーを眺めてみてるってのも、ややオツな気がしない?

地味で目立たない少女・神業寺マリは、交通事故に遭って瀕死だったところを救ったことがきっかけで、クラスで一番人気の男子・花水木シゲルに告白された! でも、マリには素直に喜べない訳がある。それは(後略)

(マガジンポケット掲載の紹介文)

そのワケは何なのかというと、マリちゃんとその一家には、実はとんでもない秘密があるのだった。

すなわち、彼たちはその宏壮な洋風の屋敷の地下に若い娘(たち)を監禁し虐待し、やがては〈いけにえ〉として屠る(!)、そんなことをずっとやっているらしい。かつ、その人肉を喰らうバケモノを飼育したりとか。
で、なぜそんな……そもそも彼らは常人なのか……というあたりの事情は、いまだ明かされていない。ただ、愉しみでそんな残虐非道をなしているのではなく、これは一族の崇高なる使命であり義務なのだ、くらいに言われている感じ。

そのような忌まわしくもドス黒い家風になじめないマリちゃんは、大好きな少女まんがの描き手となることで、いつか家を離れ自立しようと努力している。家長である父から厳命された「世間で目立つな」、という指図をなるべく守りながら。
だがそこへひょんな偶然から、クラス一のイケメンくんとのラヴコメ的な流れが発生。そして、お話が動き出してしまうのだった。

赤い薔薇の花ことばは、「美」「情熱」そして「愛」…

──さてこのお話は、いったい《何》であるのか。現在公開中(第4話の途中)のところまでの感想を言うと。
これは、あのときめきトゥナイト(1982, 池野恋)──言わずと知れた少女まんがの歴史的大傑作、伝統ある少女誌「りぼん」史上の最大ヒット作──そのパロディ、オマージュ、リスペクト、なんかそういうもののように、自分には思われるのだった。

むかしにあちらで描かれた《魔族》とか《魔界》とかは、意外にのどかなノホホンとしたものだったけれど。しかしそれを、ガチで邪悪なものとしてシリアスに描いたら、こういうお話にもなりうる。そういうコンセプトがありげ。

そこらを意識して見てみると、マリちゃん一家の住む洋館のたたずまい、ご両親の風貌、そして《江藤鈴世》を思わせる美少年の弟ちゃん……等々と、両作には符合するところがかなりありそう。
そして現在の最新・第4話の、イケメンくんが路上の捨て猫を拾うエピソード。これがまた、あの《真壁俊》くんのヒーロー的ムーヴ、その意図的な焼き直しくさい。だがしかし今作のネコちゃんは、やがて鈴世もどきの弟ちゃんの手に渡り、そして貪欲なオバケのエサになってしまう(!!)。

かつこのまんがには、おそらく意識的な《昭和》っぽさ、レトロムードがある。スマホやパソコンのような現代的アイテムは描かれておらず、まんが好きのマリちゃんは懐かしいふんいきの書店へと通い、そして彼女のパパが眺めているテレビはブラウン管のやつ。
いや考えてみたら、現代のお話だという断りが別にないようなので、まさに《昭和》の物語であるのかも。そしてそこらが、またアレで。

さあてそういうことで、このお話はこれからどうなるの? マリちゃん一家の秘密の所業は、何ごともなく継続されていくのか? そもそも、この一家の正体や実体は何? そして、マリちゃんとイケメンくんとの恋のゆくえは?
かつ、オレの見方からすれば、今作はそのネタ元「ときナイ」のストーリーラインやエピソードらを、どこまで露骨になぞっていく──もしくはそれと戯れていく──のだろうか、と。楽しみなんだよね!