エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

(青Tux): Guest List ゲストリスト (2018) - 憂愁のヴェイパー・ナイトクラブ

《青Tux》というバンド名は青いタキシードという意味らしいけど、これはヴェイパーウェイヴでありダークジャズでもあるという珍しい方向性のソレ。ダークジャズ(またはドゥームジャズ、ノワールジャズ)については過去記事をご参照されたし()。

Tuxの楽曲は平均2分間ほどの簡潔なものばかりで、それぞれがダークジャズとして果てしなき夜のふんいき、享楽と倦怠のあいまった感じを表現していると考えられる。たばこと酒と、そしてムスクみたいな異性の香りがたち込める音空間。湿り気の強さがまた印象的。

さてこのアルバムの4曲め“Dressed To Impress 濃紺”が、イヤハヤどうにも実によく知っている感じの楽曲。「何だったっけ?」とけっこう考えてしまったが手短に申せば、これは八ービー・八ンコックの大名曲「力ン夕ループ・アイランド」(1964, )の冒頭パート、そのサンプルにスローダウン等のヴェイパー処理を施したもの。
まったくもって大ネタもいいところだ。そしてそこまでの大モノを、パッとすぐには思い出せないオレはどうなのだろうか。
まあそれはいいとして。自分にはそこしか分からなかったが、そのような感じで全編がサンプリング+αで作られているのやも知れず。

かくして、まっとうなダークジャズならいちおう作曲したり演奏したりで作り出す効果を、青Tuxはお手軽省エネでクリエイト成功している、とホメてしまっていいのだろうか。八ンコックの元曲のびみょうなテンションの高さを青Tuxは完全に棄却し、まったくのユルさと憂いの中に落とし込んで、新たな表情をそこに見出させている。これもまたひとつの創造っぽい行為では……と述べるのは強弁なのだろうか。