エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

V.A.: Midnight Radio - Noir Jazz (2016) - 今は、もう暗く…ダークジャズ(ドゥームジャズ)のススメ

追っていくつか、ダークジャズ関連の記事を追加しています。

V.A.: Jazz on Film... The New Wave (2017) - 調べてみよう! ダーク(/ノワール/ドゥーム)ジャズのルーツ(2020-04-14)(
V.A.: Quarantine Doom jazz vol. 2 (2020) - 隔離され たった独りの ダークジャズ(2020-08-29)(

ネクラの皆っさァん、おっはようございま〜っす!! ヒュッヒュ〜!

…いやさてネクラって本来は、表面ではなく《根》が暗い。つまり陽キャを装った人間らがふと見せる暗み、みたいなことを言うんだと思うんだけど。しかしそんなことを考えもしないやつらは放っておいて、貴方とわたしとのインティメートなお話を少し。

ダークジャズ、ドゥームジャズ、はたまたノワールジャズ…。これらはほとんど同じものだとかんたんに考えてしまいたいところだが、実は意外とニュアンスの違いがあったりするのかどうなのか。
とくにドゥーム(doom)、破滅というのは、ただならないことばだ。しかしアンサンブルや音楽そのものが破滅破綻してるようなのは聞いたことがないので、まあそれもふんいき、実質はさほど変わらない、ということにしておこうか。

そこで代表させてダークジャズということばを用いるけれど、これは一般的なジャズの文脈からは外れた、やや特殊な音楽ジャンル。一般ジャズとは異なり、独奏者が華やかなテクニックをひけらかすとか、あるいはロマンチックでラヴリーなムードを紡ぎ出すとか、そういうことをしない。
では何をどうするのかというと、まずは異様にテンポが遅ぅ〜いのが大基本。そしてメロディというほどのメロディがあらわれず、形式感がつかめない迷宮的な構成。かつ音数のきわめて少ない、点描的なアンサンブル。そして暗い…重い…しかし、どこか官能的なムードが描き出される。永遠に明けない夜の闇の中のさすらい、といったふんいきを作ろうとしている感じ。

だからダーク「ジャズ」ということばがついているけれど、かつジャズっぽい要素やムードらは大いに存在しているけれど、しかしラウンジやアンビエントサブジャンルに分類されることが多いもよう。じっさい一般ジャズと並べてみたら浮くので、それでよさそうだ。
世に知られた一般ジャズでこれに似たものは、かのマイルス・デイビスによる死刑台のエレベーターのテーマ、およびそのアルバム中のゆるい曲ら。…ああいうのが延々と続くと言えば、分かっていただけそうな予感。じっさいそこらにルーツがあるのかは不明だが、似ていることは確か。

追記、2020年4月14日。マイルス「死刑台のエレベーター」およびその時代のノワールな《シネ・ジャズ》、それとダークジャズとの関係については、新たな記事を起こしたので、ぜひそちらをご参照くださいまし()。
赤い薔薇の花ことばは、「美」「情熱」そして「愛」…

そしてこのダークジャズがいつからあるのか、ということは自分も知らないのだが(!)。…いや、これは何か歴史性を否定しているようなジャンルかと思われたので、その歴史をあえて知ろうとしてこなかったが。
…ともあれこのジャンルの最古株で評価の高そうなバンド《Bohren & der Club of Gore》のファーストアルバム「Gore Motel」は、1994年にリリースされている。この初期はちょっとスタイルが異なっていて、アンサンブルの主役が、サックスやヴァイブではなくエレキギター。もとはジャズ系ではなくアバンギャルドなロックバンドだったという、彼らボーレンのお里が少々出ちゃっているのだろうか。

またボーレンに並ぶダークジャズ界のヒーローは、《Kilimanjaro Darkjazz Ensemble》または《Mount Fuji Doomjazz Corporation》と呼ばれるバンド。この両者、メンバーらの一部に異同があるようだが、ほぼ同じグループみたい。ボーレンに比べるとスタイルに幅があり、前衛的なところやエレクトロニックな要素が入っている。いずれにしろ質は高い。キリマンの「Here Be Dragons」(2009)はしびれる名作。

なおボーレンとキリマン(フジヤマ)のアルバムらはちゃんとした売り物だが、そのほとんどをYouTubeで聞くことができる。そのいっぽうわれらのBandcampにも、あまり名は売れていないが、かなりいいダークジャズあるのでご安心を。

そのひとつのまとめとしてご紹介したいのが、《Signora Ward Records》から出ているオムニバス「Midnight Radio - Noir Jazz」(2016)。このシニョラ・ウォードはどうしようもない変態ビザール系インダストリアルノイズのレーベルであるようなのだが、なぜか一部でダークジャズを推しているのがふしぎ&感心である。
で、自分はその内容をいいと思っていたけれど――いやいいと思うけど――しかしいま聞き直したら意外と、唄入りでダークウェイヴみたいのが入ってるなーと。でも、そちらもダークだからいいよね!
ていうかこのオムニバス形式で聞いたら逆に思うのは、ダークジャズを意識的に演っているバンドらの音って、ほとんど区別がつかないなーと。でもまあハウスとかもそうなので、こういうジャンルはそれでいいのだ。
そしてその「Midnight Radio - Noir Jazz」のBandcampページの下の方に関係するタグが並んでいるので、そこからたどっていけば、Bandcampのダークジャズ方面のサウンドはほぼすべて網羅することができそう。…さあぜひ貴方も、永遠に明けない夜の闇の中のさまよいに向かってゴォゴォ、レッツラゴ〜!