ポ  サ  研

─ ポスト真実 のサウンド研究, ヴェィパーゥエィヴ と仲間たち, 欲望 複製 PØP ─

Pat Metheny: From This Place (2020) - そして、このトーンから始まる

恐縮なんだけど今回は比較的まっとうな音楽、何か真実味ありげなサウンドのご紹介。
で、パット・メセニーというお人はもちろん現代ジャズギターの第一人者で、1970年代中盤くらいからずっと質の高いアルバムを大量に出していて……みたいなことは、オレごときが説明するまでもないんだけど。
しかしこの最新アルバム“From This Place”はBandcampにも出てるってのが新しいところで、たぶんメセニーさんとしてはお初だと考えられる。という、“こちら側”へのご参入を歓迎し祝しつつ。

いっとうさいしょの“America Undefined”がひじょうに造り込んだ壮大な楽曲で、これに比すると通常のおジャズってあんまり“造って”ないな、ということを素直に感じた。ピアノ中心の序奏に始まり、そしてメセニーさんのギターの鳴り始めるところがいきなり圧巻。
近ごろ自分は考えがものぐさになってきて、「音楽なんてのは最初に《キメのトーン》をバーンと鳴らさなきゃダメじゃないか? そこでもう決まりじゃないのか?」なんて雑なことを思うんだけど。そのような肝心の《キメのトーン》をメセニーさんは、しっかりと持っていてタイミングよく行使してくるんだよね。まあ当然なんだけど。

……とは言いながら。その壮大な楽曲らの壮麗さに、心撃たれはするんだが、実はことばの意味の分からない名演説を聞いてるような感じもあり。つまりテーマ性みたいな部分が、自分にはあまり伝わっていない。おそらくはリテラシー不足のせい。
そうしてアルバムのラスト2曲は比較的平明でメロディックできれいな曲で、自分的にはそこらがいちばん愉しめた。かくて終りよければすべてよし、と余裕で考えられる。