エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

S O A R E R: 別の人生で (2019) - そして、またこれを

ヴェイパーウェイヴとかいうアレにけっこうツキあってキた人ならば、このソアラか何かを名のる新人アーティストが、かの名高きヴェイパースター《テレパシー能力者》のまた別の変名であることを見抜けないハズはない、のでは?
いや別に、確証や確信はないんだけど。しかしこのBandcampページのたたずまい&音楽そのものから、どうしようもないテレパシー臭がプンプンとねェ。
で、その近作アルバム「別の人生で」の冒頭タイトル曲は、以下みたいなニホン語の歌詞の唄を、ヴェイパー流サウンド加工術でぞんぶんにヨゴシながら22分半もの長尺へと編集したもの。

セツナイ……ムネノイタミ……ホホエンダ……ネガイノ……
アイサレルヨリ……アイシタホウガ……シンジツ……

いやネットって実にべんりなもので、たったこれだけの歌詞の断片から元曲が、禾ロ田カロ奈子「サノレビアの花のよラ1こ」(1987, アニメ「さまぐね才しソヅ☆口-ド」挿人歌)だと分かってしまう。とまあ元ネタが1980'sのアニメソングだということは、いちおう頭に入れておいて。

そしてその真情あるような空疎でもあるようなメッセージを、またキャッチーでもあり凡庸でもあるようなメロディを、それから30年間以上も脳裡で転がし続け、かつカセットテープで1万回も廻し続けたら、しまいにはこういうサウンドになってしまうのだろうか、という気がしてくる。
べつに80'sモノには限らずとも、喪われた過去の夢、値段がついていた売り物の夢たちを、無惨に廃墟化したカタチで反復し続ける。ポップカルチャーとその商業主義に対する、これは批判や復讐なのか、または渇仰であり礼賛なのだろうか。

そのどちらであるかは知らないが、これこそがヴェイパーウェイヴとか呼ばれるアレであることだけはマチガイない。

(以上の記事は、2019年8月にマストドンへポストしたテキストの加筆修正版)