ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

Cigarettes After Sex: Cry (2019) - セックス、ニコチン&ロックンロール のすゝめ

《シガレッツ・アフター・セックス》という、公序良俗って何それ的な名前のポストロック系バンド()。2008年から活動中で、その名の通り、アンニュイ感に濡れたエロチックな世界をしっとりスローに展開し続けている。

さて、実のところこの記事は、直前に書かれたピューマ・ブルーの話の続きなんだ()。

すなわち。この《世界》の実にジメッとしてウツであるところを、ムリにでも《アンニュイ》くらいに読み換えエロチックに解釈し、どうにか、この生をしのごうとする。──そういうアチチュードが、両バンドに共通しているかと思い込んだ上で。

それとサウンド的にも、楽曲らのほとんどがスローテンポ、クリーントーンのギターをフィーチャーし、アンビエントに片足かけた眠みにあふれる響き。かつ、甘ったるくもやさしく眠たいボーカルの声質──等々と、両バンドにはけっこう共通点が多いもよう。
そしてこういった構成のサウンドを聞いたなら、〈かのドゥルッティ・コラムを思わせる()……〉、とか言わないわけにはイカないのが、ある種のオッサンらのイヤなところで。まあじっさい少しは似てるけど、でもあまりその連続性は強調したくない。

ところでピューマとシガレッツ、その共通でないポイントをも指摘しておくと。

ピューマ・ブルーにだけあるような特徴は、ジャズっぽいニュアンスと、およびラフな演奏やローファイな録音をよしとするところ。いっぽうのシガレッツはそうじゃなく、むしろルーツにはフォーク的なものがあるかも知れないし、かつ演奏や録音はひじょうにキッチリとやっている。そのあたりは違う。

なお、このシガレッツについては英語のウィキペの記述がけっこうまとまっていて()、それをテキトーに抜き書きすれば、こんな雑な紹介記事などは一丁アガリである。ってオイ。

まずシガレッツというバンドの実体は、本名をグレッグ・ゴンザレスという一個人。米テキサス州エルパソ出身の人で、現在の活動のベースはNY市。
そのエルパソってどんなところかも調べたら、かの広大なるテキサスの南西の端。そしてメキシコとの国境の街なので、チョリソー

ちなみに同市の出身者で他に目立つのは、ミュージシャンではヴィッキ・カー、マーズ・ヴォルタ、オマー・ロドリゲス-ロペスなど。またミニストリーのアル・ジュールジェンセン(出生地はキューバ)が、なぜか近ごろ同地に居着いているという。ついでにプロレスのチャボ・ゲレロの一族も、そのベースはエルパソだとのこと。

と、そんな暑くて乾燥してそうなタコスの土地に生まれたゴンザレスさんが、ジットリと湿ってお耽美なシガレッツのサウンドを演っている。そこが面白いところなのだろうか。

そしてこのゴンさん。シガレッツのサウンドの影響源として、まずフランソワーズ・アルディマイルス・デイビスを筆頭とし、続いてジュリー・クルーズ、コクトー・ツインズ、マジー・スターらの名を挙げているとか。
……そんな話を聞いてしまったら、何か分かった気がしてきちゃうのがイヤっスね。いつもほとんど情報がないところからレビューしてるので、調子が狂うんだよね。

じっさいゴンさんのインタビュー記事なんか、英語ならいくらでも見つかるみたいなんだけど、しかしそんなもの全部に目を通したところで何になるのだろうか。
じゃあここはもう、たまたま目についた仏“Vogue”の記事から、ちょっと目についたところを引用して終わりにしたい()。

──あなたの音楽をどのように説明しますか?
グレッグ:「私はそれが遅いと言いたいです…私たちはエロティックな子守唄のような、かすんだロマンチックなバラードを作ります」

(グーグル翻訳システムの出力)

遅くてスローで、かつエロチックな子守唄。そしてセックスそのものではなく、それが済んだあとの喫煙、という種類のお愉しみを描く。それがゴンさん、シガレッツ・アフター・セックスの導いている、《この世界》の過ごし方であるようなのだった。

……あ、それとあとひとつ。シガレッツのフルアルバムの第2弾である“Cry”(2019)、その第6曲──そのズバリ“Hentai”というタイトルが、モーレツに目をひいてるんだけれど!

だがしかし、聞いてみたらいつも通りのきれいな楽曲で、つい期待されるようなケレン味アニメ臭などが、ぜんぜんない。念を入れて歌詞までをチェキってみても、いっこうにノーマルなラヴソングかのようだ。
ちくしょうゴン氏め、わがニッポンの誇るヘンタイ・カルチャーのマインドを、いっこも分かってねーな! いや、分からんでも別にまったく構わないことだけど……っ!!