迫稔雄『バトゥーキ』は、《となりのヤングジャンプ》ウェブ連載中の格闘バイオレンス劇画。単行本は、第8巻まで既刊(☆)。
週刊ヤングジャンプ掲載の大長編『嘘喰い』シリーズ(2006-18)で高い評価を得た著者が、ブラジル民衆文化のひとつの凝縮である舞闘術〈カポエイラ〉を題材に、ヒロイン《三條一里》の成長を描く作品である。かと思う。
ところでこの記事は緊急っぽいお知らせなので、いつも以上に言うことがテキトーかも知れないことを、どうか許して欲しいのさ。
というのは現在、この『バトゥーキ』9巻の発売(11/18)記念ってことで、8巻までの全話が無料公開されておるのですが。
が、ええっと? たぶんこの11月25日までの公開なので。そこで、格闘まんがとかに興味ありがちな方々には、〈さあ急いでご閲覧なされ!〉とお伝えしたいんだ。
で、さて、今作について少し。何しろ〈格闘バイオレンス劇画〉なので、こういう感想を言っておけば済む感じはある。
〈ギャングが怖い! 格闘とか痛そう! でもカッコいい、燃える!!〉
……それはそうなんだが。でも自分が『バトゥーキ』ですごく面白いと思ってるのは、そういう怖くて痛そうなお話らのあいまに出てくる、人を喰った《ギャグ》なんだよね!
流すかサムさで終わっちゃいそうな、スレスレのところで、大いに笑かせてくれる──。そういうおギャグがチラホラと、物語の序盤から現れていたんだが。
中でもとくに、〈これはひどい! おハーブ生えちゃう!〉と痛感させてくれたのは、第34〜36話あたりの《武蔵大杉》のエピソード。
コスプレ武蔵のヒロインが射的でうんちをゲット!
これは一里がゆえあって、合気道の使い手である青年《稲荷》と闘うお話。その対戦の地が、敵のホームタウンである武蔵大杉。
おりしもその地では《武蔵大杉フェスティバル》という祭典が開催中で、すごい数のコスプレ宮本武蔵たちが集まってきている──そのさなかに。
〈ニセ武蔵が大量に練り歩き〉っていうところですでにアレだが、さらにそのお話がウ×コというモチーフで発展し、ついには“ホモ”へとハッテンして終わるので、もうタマったもんじゃない。いつもあの『彼岸島』とかを見て大悦びしてる、オレちゃん的にっ!!
ちなみにこのエピソードは一部の界わいで、〈2019年の台風から洪水という災害による、武蔵小杉のタワーマンションあたりでウ×コ騒動〉というその後のチン事の予言であった、とも言われる。すぐれた漫画家の洞察力は、そういう予見をも可能とするのだろうか?
ただしそういうギャグ面が(オレ的に)目立ってもいるいっぽうで、しかしヒロインの《イッチ》こと一里は、常にまっこうしんけんシリアスでしかありえない。
なぜって、この合気道家らの対戦相手に勝てなかった場合には、誘拐監禁されている彼女の養父母が、悪いヤツに暴行虐待されてしまうからだ。どうしてそんな状況になっているのか──というその事情は、ぜひ作品本編でお確かめになられたい。
で、そういったふんいきの分裂性が、〈ギャグなのかな……?〉というタメを生み、そして〈スレスレのところで大いに笑かせてくれる〉、という感想に帰結するのだろうか。
そしてそうした読み味は、ちょっと読者を選んでしまうものかも知れないけど!
まあともかく自分がけっこう好きなので、この無料公開の大チャンスに『バトゥーキ』をぜひ、とオススメするんだよね!