エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

鬱: Pink Album, Blue Album (2020) - ピンクなきみに ブルーな牧人型統治

《鬱》を名のるヴェイパーウェイヴ・クリエイターは、中国の秦皇島市に在住を自称。そしてそれ以外のことは、何ひとつ明らかでない。

てゆうか〜。この鬱氏のBandcampページを見ていたら、あまりにもワケワカメで、まじゲンナリしちゃったんだよね()。
てのはまず、ヘンな漢字らが仰々しく並べられた、それぞれの違いがさっぱり分からないようなアルバムタイトルら。
そしてそれらのカバー写真たちもまた、わざわざコントラストを落としてるのか、すべてぼんやりとして、いっこうに判別がつきがたく。

しかも、各アルバムのリリース日が、1990年とか92年だとか、あさはかなウソとしか思えないことが、へいきで書かれてある。もぉヤだっ、こっちがウツでしょうがないっつーの。

……ただ分かるのは、そのカバー写真らが廃墟化したショッピングモールの一隅らを写したもののようであり。そしてその着彩された色調に、赤系と青系の2種類があるな、と……。ほぼ、それだけ。

そして、いまご紹介したい、鬱のアルバム2点。これはそのワケが分からない鬱作品たちの散らばりを、リリース元のレーベル《Geometric Lullaby》()が、まだしも分かりそうな感じにまとめてくれたものなのか──と、自分は推測してるんだよね。

そういう善意の作業の成果が、そこに出ているピンクとブルーのアルバム2点なのだろうと、強引にでも解釈させていただくぜっ。それで、分かったことは……?

ピンクとブルー、いずれのアルバムも《モールソフト》であって()、たぶん古いイージーリスニング等がモヤ〜っとした音質に加工されている。
けれど両者のスタイルには大きなコントラストがあって、ピンクは断章形式であり(64曲・約45分)、いっぽうのブルーは各トラックらが長い(12曲・約78分)。

断章っていうのは、いちおう分かる感じだとして。しかしやたらに長いブルーのトラックたちは、どのように作られているのだろうか。
同じ楽曲を、ず〜っとルーピング? 違う曲らを、メドレー的につないで長く? さもなくば、ヴェイパーのお家芸であるスピードダウン手法で引き延ばし?
といった関心をもって聞こうとしても、しかし、すぐに注意がそらされ散らかってしまう……。これは、そういう音楽であるらしい。

たとえばモールのすみっこに腰かけていて、遠くの天井スピーカーから低く流れているどうでもいい《ミューザック》()を、ヘンに集中して分析的に聞こうとする。
──そんなことを誰がする、そんなことが誰にできるのだろうか? これは、それに類する音楽体験であるらしい。強制された散漫さ、そして《無意識》への働きかけ。

そういうモール的サウンド体験が、うまくシミュレートされている。音楽めいた要素らのすべてが、ボカされながら、何だか分からない〈ザワァー〉という背景のノイズに埋もれ、細部が不明でふんいきだけを、かろうじて伝えている。

で、その伝えられているふんいきとやらを、ことばに言い換えてみれば、〈買うこと、すなわち幸福であること〉──、という大量消費社会の《クレド(信条)》であり、また《ドグマ(教条)》なのだろうか。モールと呼ばれる後期資本主義の大聖堂、そのなれの果ての廃墟に流れる、幻聴のミサ曲か何かで、これらはあるのだろうか。

われらの神である貨幣と資本よ。
憐れみたまえ、救いたまえ。
汝の従順な仔羊である消費者たちを。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
The Pink and The Blue, A pair of albums by 鬱 (Depression), the mysterious Vaporwave creator who seems to be Chinese.
The shopping mall-like sound experience is well simulated. All of the musical elements are blurred, and they are buried in the background noise of <Zwooo> that I do not understand, so the details are unknown, barely telling only fluffy.
In other words, the mood that is being transmitted is, “Buying, that is, Being Happy”, which is the Credo and Dogma of a mass-consuming society. Is there a Hallucination Mass Song or something flowing through the abandoned ruins of the late capitalism cathedral called Mall?