ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

US Golf 95: Casino (2019), DreamCourse™ (2018) - ニヒリズムがユートピアをつくります

〈US Golf 95はスコットランドのプロデューサーであり、その音楽は架空のUS Golf 95コンピューターゲームに基づいた昔ながらのビデオゲームサウンドトラックと美学を呼び起こすことを目指しています。〉

……とは、サンブリーチの記事からの引用です()。
《US Golf 95》を名のるグラスゴー市のヴェイパーウェイヴ・クリエイター、そのご紹介は、ほぼこの文言につきている、とも考えられます()。

そしてゴルフさんのセルフタイトル作“US Golf 95”(2015)は、サンブリさんのアルバム評で《二つ半の太陽》という高い評価をかちとった、折り紙つきの傑作です()。もはやその存在は、ヴェイパーウェイヴの歴史、そのゆるぎない一部分になっていると言えるでしょう。

──いや、前の記事のリンズヘヴン・バーチャルプラザでも、ほぼそうでしたが()。すでにサンブリさんが取り上げているアイテムらについては、ことさらに私がつけ加えるべき話なんて、ほとんどない、ということを感じさせられます。

では、ありますが──。
サンブリさんが精力的にご活躍の時代(2016-18)、それよりあとに出てきた傑作ゴルフ作品らも存在します。そのあたりを私から、少しご紹介です!

まずは2019年のアルバム、“ℂ𝕒𝕤𝕚𝕟𝕠”。これはスタイルがうって変わり、モールソフトです()。トロピカルムードのイージーリスニングらのローファイ化、であると考えられます。

その全編の初めに鳴っているヴィブラフォンの、〈ティン・コロ・リ〜ン〉というラウンジーな響き。これがもう絶頂、たまりません!
このいきなりのオーガズムに始まる、最高の選曲と最高の処理。全12曲・約48分を、すみずみまで愉しめる傑作です!

続いては(時系列が前後しますが)、2018年のアルバム、“DreamCourse™”。これはゴルフさんお得意の手法、何か1990年代のビデオゲームのサントラを、何かしたものと想像されます。

全10曲・約43分を収録。その全編のトーン&ムードの統一感が、まことにみごとです。
そのトーンとはもちろん、90年代ゲーム機的なモヤっとしたエレクトロニック・サウンド。そしてムードは、《リラクゼーション》をうたったニューエイジ系チルアウトに、やや近いでしょう。

そして、その《リラクゼーション》とやらをのんびり愉しんでおりますと、ファイナルのトラック“Diamond 走路”、ここですばらしいテンションの高まりがあります。
今アルバム“DreamCourse™”が、みどりの美しいゴルフコースでストロークを遊ぶことを描写したものと想定すれば、そのラスト曲“Diamond 走路”は、その一連のプレイのフィニッシュの大いなる歓びを、描いているでしょう。

ちなみに、この10曲め“Diamond 走路”は、アルバムの第3曲である“Ice 圏”と、ほぼ同じ楽曲です。ただし、演奏されるキーおよびアレンジの調整で、それぞれのもたらすテンションが変更操作されています。初めはややローな調子、そしてついにはマックスへと。

そしてこの楽曲“Diamond 走路”のもたらすムードである、高揚感、達成感──。あるいは、努力の果てに得た勝利の悦びを、しみじみとかみしめている感じ──。
それらがあまりにも快いので、実のところは何も達成していない、努力もなければ勝利も得ていない、という自分の現実のことなどは、きれいに忘れてしまいそうです!
これがおそらく、脳神経用語にて言われる、報酬系とやらのスタンピードです。これではまるで、耳から味わう危険ドラッグなのでは?

そういうわけで、“DreamCourse™”がすばらしい傑作だとは分かりました。しかし、その素材となったゲームソフトが何かあるのかどうか、それは明らかでありません。心苦しい、無能の告白です。

が、そのいっぽう。

USゴルフさんの2020年の近作アルバム、Wii Fit 𝙃𝘿 𝙍𝙚𝙢𝙖𝙨𝙩𝙚𝙧”。これについては、素材が明らか……というか、まったく隠されておりません。
ほぼ同じタイトルのゲームソフトが存在することを、すぐに知りうるでしょう。そして、そのサントラが加工されたものだと理解できるでしょう()。

かつ、これと原曲らとを聞き比べて驚かされるのは、USゴルフさんがそこで、ほとんど何もしていないかのようだ、ということです。
再生スピードをおよそ80%ほどにまで落とし、そしてたんじゅんなEQ処理とも違いそうですが、原曲らのとがった高音を削ってローファイ化。その結果、より耳にやさしい音質になっています。
ほとんどそれだけ、のようです。ただ、これらのかんたんな処理によって、原曲らのわずかにもアップタイトな感じが薄れ、チルアウトムードの大いな深まり。

このことから邪推すると、私たちが傑作と認めた“DreamCourse™”にしても、同程度のあっさりライトな処理で作られたものなのか、とも思えてきます。
あるいはまあ、そういうものかと、仮に考えて。

そしてその、〈ことさらなことをしない〉態度。そのあまりないさぎよさ──ことによるとニヒリズム! そこに私は、何か深く感じ入るところがあったのですが。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
US Golf 95 is a Scottish producer whose music seeks to evoke old-school video game soundtracks and aesthetics as based around the fictional US Golf 95 computer game.”
Mr. Sunbleach said so in 2018. That's exactly the case, but I would like to share with you some of the recent works of this great US Golf 95.

First of all, the 2019 album, “ℂ𝕒𝕤𝕚𝕟𝕠”. This is a Mallsoft, unlike his usual style. It is thought to be a lo-fi version of easy-listening in a tropical mood.
The vibraphone that is ringing at the beginning of the whole songs has a true loungy sound called “Tinkle-Tink-Ring”. This is already climax and irresistible! Starting with this sudden orgasm, it is a masterpiece that you can enjoy all 12 songs, about 48 minutes.

Next (although the time series goes back and forth) is the 2018 album “DreamCourse™”. I can imagine that this is something that Mr. US Golf is good at, something that was done to the soundtrack of the video game of the 1990's.
Contains 10 songs, about 43 minutes. The unity of the tone and mood of the whole songs is truly wonderful. The tone is, of course, a hazy electronic sound like a 90's game console. And the mood will be a little closer to the New Age chillout that advocates “relaxation”.

And there's a great upsurge here on that final track, the “Diamond 走路”.
And the mood of this song “Diamond 走路” is senses of exhilaration and accomplishment. Or, it feels like I'm grabbing the joy of victory at the end of my efforts.
They are too pleasant, so it's easy to forget about my reality that I haven't actually accomplished anything, I haven't made any efforts, and I haven't won!
This is probably the stampede of the “reward system” in neurological terms. This pleasure is addictive...!