《ダナ・ガヴァンスキ》は、セルビア系カナダ人の女性シンガーソングライター(☆)。2020年3月に、27歳でアルバムデビュー。〈モントリオールの大学の最終学年のとき、歌いたいという幼少時からの想いをフと想い出し、元カレが置いていったギターで練習した〉、などという面白い話が伝えられている(☆)。
で、たぶんそのデビュー作が好評だったんだと思うけど。
いや実はオレもまだあまり深くは聞いてないんだが、でもこの人の音楽には、いい意味の1960年代フォークっぽさがありそう。たとえばキャロル・キングのように、歌詞とメロディを大切にしながら、そしてゆったりと眠ぅ〜く歌い上げている。
そういや。いつも自分はふっざけた音楽(もどき)ばかりご紹介しているようだけど、でも意外に、〈“音楽”なるものの真のエッセンスは、メロディであり“楽曲”である〉と、骨のズイまで確信しきっているんだよね。なので、メロディに対して態度が真しな人らには、常に一定のリスペクトを払い気味だが。
そして、そのダナさんの最新EPである“Wind Songs”が、最初期キング・クリムゾンのハイパー名曲「風に語りて」(1968)のカヴァーをフィーチャーしたものだったので、ある種のおっちゃんらがそこに喰いついてしまうのもやむなし。
さてプログレおやじの方々ならご存じのことだが、この“I talk to the wind”は、結果的にクリムゾン勢の非主流派になった元メンバーら、ピート・シンフィールドとイアン・マクドナルドによる楽曲。そしてデモ作成の段階では、女性フォーク歌手ジュディ・ダイブルによって歌われていたもの。
ちょっといま調べたら、もともとイアンとジュディが恋仲で、そのイキオイでジュディさんがクリムゾンに参加しかけた──しかし別れたので、彼女は辞めた(☆)。そんなこともいまは明らかになっているようで、ったく若けェ連中はしょうがねェな!
いっぽうの現在、ダナさんバージョンの「風に語りて」は、最初期クリムゾンのダイブル版よりもさらにソフト&シンプルな演奏で、つまりプログレ臭を完全に消したもの。このアプローチが《いま》だし、そしてそのシンプルさが逆に、楽曲自体の持つポテンシャルとダイナミズムを最大に引き出している。
私は外を見て中を見ています
何が見える?
多くの混乱、幻滅
私の周りすべて
風に話しかける
私の言葉はすべて流されます
風に話しかける
風が聞こえない、風が聞こえない
あなたは私を所有していない、私を感心させない
ちょうど私の心を混乱させる
私に指示したり、私を行うことはできません
ちょうど私の時間を使い果たす(作詞:P.シンフィールド, グーグル翻訳)
はあ……。この詩から想うことがいろいろあるけれど、だがそれをオレなんかの口からグダグダと申したら、何かブチ壊しになりそうで。
けど、それにしてもいま現在、〈何が見える?〉。COVID-19のやむところなき蔓延、何かおかしい20世紀にはなかった異常な気象、さらにピエロ権力者たちの笑えもしない茶番の横行(★)、ゆえにオレみたいな《衆愚》の一匹は右往左往。
それこれの中で、何か少しは《意味》のあることを言おうとしても、まあちょっとアレで。
等々と、あまりヘンにおセンチになりきってもしょうがないが。ともあれダナさんのやさしい歌声にはいやされるところがあったので──と、紋切り型で処理し──、実によかったことだとオレは思うんだよね!