エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

Kukangendai (空間現代): Palm (2019) - “表現”とかいうクソを棄て続けていく意志

《空間現代》(Kukangendai)は、スリーピース編成のオルタナ/ポスト系ロックバンド。2006年に東京で結成され、現在は京都をベースに活動中であるとか()。
このバンド、2018年には坂本龍一とのコラボEPを出しているというので、あるいは意外と有名だったりするのかも?
けれど、自分はこの空間現代つぁんのことを、何か違うBandcampページの下のほうに出てきたサゼッションから、ついさいきん知ったばかりなんだよね。

で、その知った対象が、在パリのレーベル《Ideologic Organ》から昨2019年に出たアルバム、Palm。それの印象がよかったんで、いまこのようにご紹介をっ。

そのアルバム『パーム』は、全6曲・約34分間を収録。そしてどんな音楽を収めているのかというと、地味さをきわめたミニマルっぽいマスロック(math rock)もどき、くらいに言えそう。
これがマスロック(数学的ロック)だと言いきるには、それについての自分の知識が少々足りていない風。ともあれミニマルとは形容できそうで、体質がミニマルなオレの好みにフィット。
そしてここには、通常言われるようなメロディっていう要素が、ほとんどない。しかしリズムの複雑なからまりあいが、たぶんそこらを代替して気持ちいい。

と、この『パーム』がよかったので、それ以前の空間現代のリリースらをも、ちょっと聞いてはみたんだが。

……けれどそれらの印象はもうひとつ、という悲報をお伝えするハメに。ボーカリストなどを迎えてのコラボ作品とかけっこうあるんだけど、〈1980年代のアングラロックで、こういうのよくあったよねェ〉とか、〈困った意味で、“表現的”?〉とか、そういうところがちょっと。
坂本龍一とのコラボEPである“ZURERU”(2018)にしても、龍さんの仕上げたらしいラスト曲のドローン風トラック、そこは聞きごたえあるが……とオレは思った()。

いっぽう『パーム』のリリース記念のライブアルバム、これはいい。って、同じレパートリーを演っているらしいので、ほぼあたりまえだがっ!

さて。ご本人らが意識していようといまいと、空間現代のサウンド全般には、例の『ノー・ニューヨーク』(1978)でおなじみの伝説的バンド、《D.N.A.》をほうふつとさせるところがある。そのことは、いい。
ただ。あたりまえだが上っ面のスタイルじゃなく、〈“表現”なんて行為はクソ以下でしかない〉というその暗黒の意志の遺伝子こそが、しつように複製され続けるべきなワケで。

で、たぶんそういうところが分かってきた上での傑作『パーム』らになったのだろうと、かってに了解。そうしてさらに“表現”を削ぎ落としていく(べき?)空間現代の、今後の作にも期待が持てそうなのだった。