アンビエントっぽいポストロックのバンド、《ジ・アルバム・リーフ》(☆)。バンドと言ってもその実体は、ジミー・ラヴェル(Jimmy LaValle)という一個人。ワリと眠たぁ〜い音を常に出していて、イイんじゃないかと思ってるんだよね。
で、10年ちょっと前からまあその音は聞いてるけど、しかしその素性みたいなことは、ぜんぜん無知かつ無関心であった。そこでいま、ちょっと調べてみると。
このジミーさんはもともと、米サンディエゴのハードコアっぽいシーンの出身らしい。それからポストロック・バンド《トリステザ, Tristeza》の初期メンバーとなり、なぜかそれを辞め、ソロでアルバム・リーフをスタート。
そして1999年リリースの1stアルバム“An Orchestrated Rise To Fall”が、いきなりの高評価。そしてひそやかな人気を誇りながら、現在へと至る。
というわけで、別に面白い話は何も出てないんだよね。予想はしていたことだけど。
この人にもっとも強いスポットライトが当たった時期は、おそらくアルバム“In a Safe Place”(2004)のとき。シグ・ローシュ(Sigur Rós)の協力のもとアイスランドで録音、そして発売元がインディの名門サブポップと、注目される条件がそろっていた。
しかしそれから地味であり続けている、リーフのジミーさん。そしてその近年の作品には、たぶんものすごくマイナーな映画のスコア、みたいなものが目立ってるんだよね。
いや、21世紀の映画のことをぜんぜん知らないんで、マイナーもメジャーも見当つかないんだけど。しかしどうにもタイトル等を聞いたことがない、そういうのが。
で、ご紹介しつつある“OST”は、そのスコアらのいいところをまとめたアルバムであるとか。
……と、ここで、ちょっと思うんだけど。自分が2010年くらいに好んで聞いていた、ネオクラのようなアンビエントのような方面のアーティストたち。
〈どうせ、コイツらずっとマイナーなんだろうな……〉みたいに思っていたけれど──あ、スミマセン──、しかし映画音楽への進出あたりをきっかけに、現在かなりのメジャーにまで成り上がっている分子が、いなくはない。
思い出せた分だけその名前らを列挙すると、Hauschka、Jóhann Jóhannsson、Max Richter、Nils Frahm、Ólafur Arnalds、といったお方々。これと同時に、ネオクラってジャンル自体の格がズズ〜イと上がっているとも考えられる。オレごときには、予想もつかなかったことに。
そうした立身伝らの中で最大の衝撃は、ヒルドゥ・グドナドッティル(Hildur Guðnadóttir)が「ジョーカー」(2019)のスコアを担当、そして大成功してしまったこと。その2006年のデビューアルバム“Mount A”、あの陰うつさをきわめたサウンドを聞いていたころ、現在のヒルドゥさんの名声を想像できた人間がいるとは思えない。
ただしその成功は祝福するにしろ、そのイキオイでヒルドゥさんが、Bandcampのページを消しちゃったのはどうなんスか(2020年1月に閉鎖)。あんなヴェイパーウェイヴ等のビンボーくさい音楽長屋、ハリウッダーの居場所ではございませんって感じ? はあ。
……そして、話を戻し。だがそのいっぽうのアルバム・リーフは、ちょっと似たような感じで映画に関わっても、とくべつに出世も何もないっぽい。ま、そんな世間的なことはオレらには関係ないが。
ただ、この機会にいろいろ聞き直してみると。リーフさんのサントラのアルバムは断章形式で、平均で2分間くらいの楽曲がつらつらと続き、それぞれがさまざまな気持ちのいい響きを提示する。これがいま、自分の気持ちにフィットするんだよね。
オレのイメージだとリーフさんの音楽は、もっとバンドっぽくて唄ものが多かった気がした。確かめたらじっさい、それもあったんだが。
しかしこういう、シネマティックでエレクトロニックなスタイルのリーフさんも、イケてる、使える──、トレビアン!