ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

William Basinski: Hymns of Oblivion (2020) - タマにはオレもエンターテイナー!!

ウィリアム・バシンスキと呼ばれている、アンビエント系のクリエイター。その作品らはだいたいのところ《ドローン》的スタイルと言えそうで、曲らの長さがもちろん10〜60分間あまり、と──、長い。
だがドローン系とはいっても、メロディや構成のダイナミズムといった要素らを排除しきってはおらず、きれいな旋律の断片が間けつ的に反復されたりもする。この系列の中では、音楽らしさをワリと残している部類かも。

そして全般的なふんいきは、メランコリックで瞑想的。トータルで、「けっこう“使える”なァ」とオレは思ってるんだよね。

ただしバシンスキさんの音楽は、《アンビエント》の王道──すなわち王の王であるイーノさまの教え導いている道──とは、やや違う感じ。
そのポイントは意外かもだが《効用性》のところで、つまりユーザに対するやさしみ重要。それに対し、バシンさんのは、少々《美学》寄り。かといって、それもそれでイーノだが

さてこのバシンスキさんの、音楽はずいぶん前から聞いてるが、しかしどういう人なのかは未知の無知だった。そこでちょっと英語のウィキペ等々を見て、その要点を抜粋すると。

ウィリアム・ベイシンスキ。1958年・米テキサス州ヒューストン生まれ。その父は、NASAの研究者。幼少時、教会音楽にふれて音楽のすばらしさを初めて知る。
そして地元の大学で管楽器と作曲を学びながら、ミニマル音楽に傾倒。スティーヴ・ライシュ(ライヒ)とブライアン・イーノから、強く影響をこうむる。
そうして何か独自のテープ音楽システムを創案、初の作品“Shortwavemusic”、それを制作したのが1983年()。ただしこれが発表されたのは、ずいぶん遅れて1998年のこと。

で、自分の認識していたバシンさんの活動歴は、その1998年から始まるんだが──。にしても彼は、83年から98年までもの間、いったいナニをしていたの?
……たぶん、そんなことを追及するのはヤボなんだよね。ミュージシャンやアーティストらの《歴》の空白期なんて、どうせロクなことをしちゃいない、と自分は強い偏見を持ってるんだよね。イエイッ

だから、そんなせんさく(の未遂)はともかく。
それからいつしか高い評価を得て、現在では大御所的なポジションにまでのぼりつめたバシンスキさん。で、いま、その最新アルバムである“Hymns of Oblivionをご紹介、という運びなのだが──。

聞いてみたら、それがビックリなことに、ンなっ!? 何と全曲が唄モノである。それも、通常かつ一般的くさいロックやポップのフォーマットの。
どんな感じかをひとことで言えば、1980年代末ごろの、売れなくてマイナーに終わったダークウェイヴ/ゴシック系バンド、その発掘音源集を聞いちゃったみたいな気分。どうですかァ、お客さぁ〜ん?

あまりそのタネ明かしにもなってないが、自己解説文によれば、これらは1989-91年にNYで録音されたヴィンテェジなトラックらのお蔵出しだそう。唄は本人、作詞はジェニファー何とかさんによる。

すると、だ。さっきオレらが見たキャリアの空白期の一部、バシンスキさんはロッケンロールのスターダムを目ざし、こォ〜んなことをがんばっていたワケなのか……。
だが、それにしても。〈必要以上にお蔵に寝かした作品らをヘンなタイミングで出してくる〉という習性の一貫性はあるっぽいので、そこには何やら感心させられる(?)。

いや、もうしょうがない。これはこれでよしとして、記事のさいごにオレの好きなバシン作をご紹介。

と言っても、いま瞬間の思いつきだが、2013年発の“Nocturnes”、これとかいいよね。プリペアドピアノのティンチキリン・コロリン、という響きがキュートでコロリ〜ン。
そうしてだ。実はこの「ノクターンズ」にしても、冒頭の長い曲は制作が古くも1979-80年であるという、またまたのソレ!
かくして、われらがバシンスキさんの貯蔵癖──それがいつのまにか芳醇な発酵食品になっている予定──、その習性は、まったくやむことがないようなのだ。イエイッ