エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

Lost Computer: The Treasure Of A Dream (2020) - おばあちゃんの想い出のアルバムから

俺の妹がBandcampにヴェイパーウェイヴをポストした結果、アヘ顔さらした異世界ボカロ嫁が増殖しちゃったんですが。

いやその件は、あとでフトンに入った後にでも、じっくり考慮するとして。
いっぽう意外に目がさめている系のわれわれは、しばし《シグナルウェイヴ》の鑑賞で、お愉しみしましょう! ご案内役は、わたくしモドキちゃんです。

さてご紹介しますは、在メキシコと称し《ロスト・コンピュータ》を名のる人、そのデビュー作らしき最新アルバム「夢の宝」。これは、《ブロークン・トランスミッション》というキーワードを頼りに発見されたブツ。

その概要は、平均80秒くらいのトラック16コ入りで全20分弱、という愛されプチサイズ。そして、何らかのきれいなピアノ曲らの断片を、ちょっとヴェイパー式にモヤ〜ッとした音質にナマらせた、と形容できそうなトラックが多い。
それでどういう感じがするかというと、まるでおばあちゃんの遺品のレコードコレクションを掘り出して、ショパンか何かを聞いている──、そんな気分になってくる。おおノスタルジック、ひじょうによろしいです!

だがそのいっぽう、重要キーワードのブロークン何とかはどうした? ──中に1コだけシグナルを使用したトラックがあって、やはりきれいなピアノの響きにまじり、こんなニホン語が聞こえてくるんだ。

〈すばらしい時の余韻にひたりながら、目もとにも、そっとやすらぎを……〉

どういう化粧品の宣伝か分からないけれど、ここで奇妙なまとまり感を出してきやがる。そしてこのトラックのタイトルが、“Beauty Is Achieved”。
すでに《美》は実現されていて、残るのはその〈すばらしい時の余韻〉、だけなのだろうか。響き続ける余韻の中に閉じ込められた《刻(とき)》、そこにおいての〈やすらぎ〉を、われわれは愉しむ。