ジャズをベースにエレクトロニカとインディロックの方法やテイストをあわせ、海外の地下音楽シーンで絶賛されているらしい《Laurent de Schepper Trio》(☆)。バンド名の読み方がよく分からないので、いまここではローラン何とかトリオと呼んでおくけど。
そのローラン何とかはフランス人の名前かのように思えるが、しかしどういう人物かは分からない。このグループのメンバーの名前ではない。そもそもこのトリオはライプツィヒ出身のドイツのバンドだし、そこはナゾ。
余談を重ねてしまうが、このトリオの前身と見うる過去のバンドの名前が《Les Clochards du Monde》、たぶん仏語で《世界のルンペン》。なぜか彼らにはフランス語を使いたがるクセが、一貫してあるもよう。
ただし、世界のルンペンのサウンドは別ににどうでもいいようなローファイ・オルタナロックだったようなので、音はぜんぜん違う。大いに変わった。というルンペンからローランへの、飛躍の過程もまたナゾ。
まあ名前のことはいいとしてローラントリオは、基本的には生で演奏されたっぽいサウンドを奇妙なテクノロジーで前後左右に拡げ、甘さを加味し、実に心地よい空間を作っている。こういうサウンドはどこかで聞いたことあると思ったら、才人エイダン・ベイカー(☆)のエレクトロ・アンビエント・サイケ・ジャズ路線に似てなくはなさそう。
がしかし、シンセっぽい音を入れてくのにためらいがなさそうなベイカーさんに対し、ローラン何とかトリオは生っぽいところにより強いアクセントを置いていると考えられる。そこにフレッシュさを、自分は感じたらしかった。
ところでローラン何とかトリオのメンバーは、エレキベース、ドラム、サックス&エレキギター(持ち替え)の3人。これだと、いわゆる上モノを一人で担当している人がヤケに忙しそう。
実はアルバムらを順番に聞いていくと構成に変化があり、1stの“Aquanaut”(2013)ではサックスが無用にエモーショナルなブローイングをご披露し気味だったが、そこから最新アルバム“Action at a Distance”(2019)に向かい、サックスを引っ込めギターを出して、より構築的なサウンド作りへと彼らは進んでいる。
これはイイことだ、エラい、と自分は深く思ったんだ。半分はこっちの事情なんだけど、サックスの音とかそんなに聞きたくないってのもアリで。