エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

DJ Tin Man - 心を失くしてさまようアシッドの王子さま(!?)

さてこれからご紹介いたすは、21世紀のアシッドヒーロー・DJ Tin Man! 芸名の由来はそのまま《ブリキの木こり》オズの魔法使いに出てくるあれだとか。それと同様、人の心を失くしてしまったばかりに、アシッドの危険な斧をメチャ振り廻しているの?
しかし見た目が端正なことから、《アシッドの王子さま》とも呼ばれる彼を、うちら親しみ込めて、チンマンとか珍マンとか呼んでいいよね? …ダメ?

…さて自分にしてみると、確か半年くらい前に初めて彼のサウンドを知り、そくざに「これはいい!」と思ったことは間違いない。「袋小路にハマったアシッド界の、これぞフレッシュな突破口! 21世紀のアシッドは、ティンマンにおまかせだネ!」くらいなことを確かに感じた、これはほんとう。

だがしかし、あらためて彼の制作、そのほとんどすべてが「何とかアシッド」と題されたトラックらを昨夜からず〜っと聞いていて、その感想を短く述べてしまうと、「地味さのいたり」。アガるようなところが、ほとんどない…これを言わないとウソになる。

いや、それが意外に「あっ、キたのかな?」という高まりを感じたと思ったら、実はそれ、プレーヤのトラックリストがほぼ終端にいたり、参考資料で比較の材料であるハードフロア「The Business Of Basslines」(2017)()を再生し始めたのだった。そっちもかなりの地味アシッドなのだが、しかし珍マンよりは、というわけ。

けれどもティンマンの世界には、よけいな過剰さやくどいアオリもほとんどないだけに、イヤな感じもまた少ないので、自分なんかはずっと聞いてて退屈もしない。すでにアシッド脳だから。…だがそれにしても、「こッりゃすげー!」というかつての鮮烈な第一印象と違いすぎるのは、いったいどうしたこと?

まあたぶんだけど、自分が「これはいい!」と思ったのは彼のMIX、つまりDJとしての側面だったのかも知れない。Tin ManによるMIXはネットのそこら中に落ちているのだが、制作に比べたら全般に多少ハデで娯楽性あり。
とくにその、チルっぽいトラックからハードめのアシッドへとテンションを上げていく局面に心ひかれる。Soundcloudに置かれた“Groove Magazin Groove Podcast 96”()はおそらくその典型で、「やっぱりチンマンはアリだな!」という気分にさせてくれてハッピーエンド。