エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

Wasn't: Shoulder Angel (2020) - 天使と悪魔が何かをささやく

カナダの人であるというEvan Wainio-Woldanski氏は、ヴェイパーウェイヴのレーベル《& Options》創始者)。かつ、主に《Wasn't》というバンド名で制作を行っている。

そして“Shoulder Angel”は、そのウォズン'トの最新2020年アルバム。タイトルに言われた〈肩の天使〉とは……ほら、アレっス。
よくまんがとかで描かれる、人物の両肩のあたりに出現する天使と悪魔──善と悪との対立する意見らを主張しあう、アレらのことらしい()。

で、どういうわけだか以前から自分の中で、このウォズン'トさんの存在感がけっこう大きいんだよね。ちょうど自分がヴェイパーを聞き始めたころに、ついうっかり出遭(いそこな)ってしまったから、だろうか?

がしかし長らくウォズン'トの作品らについて、分かったような分からんような感じしか、覚えなかった。〈ずいぶん“自由”なエレクトロニカでやんスねェ〉、くらいの感想しか出なくて。
ところがこのたびの『ショルダー・エンジェル』で、何か分かった気になったんだ。少なくとも、聞いてて愉しい、興味深い、飽きない、という感じで受けとめている。

この『ショルダー・エンジェル』は、全12曲・約38分を収録したフルアルバム。その特徴はまず、構造性のつかめないモーローとしたふんいきだと思う。
どうにも説明しづらいんだけど、よく言えば天使の羽のヒラヒラと舞い飛ぶような軽めで明るめの音空間、そこに断片的なボーカルやささやきなどの女声らが出没する。──この声たちが、タイトルに言われた〈ショルダー・エンジェル〉たちのそれなんだろうか?

ただし天使の導きの至福感をタレ流してるだけの音楽ではなく、どことない不穏な感じやフェイクっぽさをチラホラと漂わせているあたりが、さすがにヴェイパーウェイヴ。ひとすじなわではない。

というこのアルバムをご紹介するためのことばを自分は、この一週間くらいずっと探し続けていた気がする。それでもぜんぜん的確なことが言えないが、しかし永遠に考えてるワケにもイカず。
かくて。別に〈分かった〉とも言えないんだが、それにしてもウォズン'トの形作っている《何か》を受けとめるための受容部位が、自分の中にデキてしまった感じ。

そういう地点から聞き直してみると、彼の前アルバム“Without”(2018)、これがまたモーローとしすぎじゃろがい!──という印象だったが、しかしいまではそれをも受容できる、愉しめる、と、感じが変わった。
『ショルダー・エンジェル』の地点から逆算してみれば『ウィズアウト』は、その独特な構造性のないっぽさへの途上の作品だったのかな、と思える。いっぽうふんいきの奇妙な軽さや明るさ、フェミニンな要素らの表出、といった特徴らは、すでに『ウィズアウト』から出ている。

かつまた、このウォズン'トのエヴァンさん。7月の『ショルダー・エンジェル』に続き、10月には《Serotonin Allegiance》という名前でEP“Late Night Commute”をリリース。これがまたいい、と思ったんだよね!

この作品は全5曲・約22分を収録。そして何と、〈ロズウェル事件の想い出に捧ぐ〉、という触れ込みのもの。その事件とは1947年、ニューメキシコ州でUFOが墜落したとか何とかいうアレだと思う。
なので、構造性のつかめない感じはそのままだが、しかし天使というよりは宇宙人らが出没していそうなふんいきだろうか? ただし過剰な重さはなくて、何というか蛍光灯的な、温かみのない空虚な明るさを感じさせている。

──といったご紹介のために、数十回も繰り返しウォズン'ト作品らを聞いてたんだけど、しかし言えることはこのていど……。こうしてカンタンに分析もしきれず、またことばにもできないのは、やっぱりヤッてることがユニークだしレベルが高いからなのか、とも思ってしまうオレだった!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Evan Wainio-Woldanski, a Canadian, is the founder of Vaporwave's label & Options. At the same time, he mainly produces music under the band name Wasn't.
For some reason I've been concerned about his existence for some time. But for some reason, Wasn't's music didn't seem to fit my heart.
However, I took Wasn't's latest album “Shoulder Angel” in July 2020 as a masterpiece with the power to break through such a wall of mind.

To put it beautifully, fragments such as female vocals and whispers are infested in a light and bright sound space that seems to be flying with the fluttering of angel wings. Are these voices those of the “shoulder angels” mentioned in the title?
But, this is not just music where the bliss of angel guidance is pleasing. At the same time, it has a somewhat disturbing feeling and a fake feeling. That is exactly what Vaporwave is. It's not a straight line.
Another feature of this album is that there are many songs whose musical structure cannot be grasped at all. The labyrinth will also add to the comfort and anxiety at the same time.

Following that, the October release, EP “Late Night Commute” by Evan's nickname Serotonin Allegiance, is also good. Since this is a work with the theme of “In Memory of the Roswell incident”, is it a feeling that aliens are infested instead of angels?