エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

tellur: gloomy rest ep (2020) - 〈ノイズまみれの汚い音楽〉から 法悦

Breakcore》、ブレイクコアっていう音楽に、まだまだ自分はなじみが少ないんだけど。おそらくそれは、ドラムンベースとガバーハウス(ハードコアテクノ)が合わさって、もっと悪くウルサくなったようなものかと考えられる。……違うかな?

それでいまご紹介する“gloomy rest ep”は、ニッポンのブレイクコアの若き新星《tellur》さん()、その初のまとまったリリース。
そしてもちろん、その楽曲らのBPMが200におよぶとか超えるとか、そういう激しい世界なのです!

いや実のところこの、てるるさんが、ほんのりと自分のお知り合いみたいなところがあるんだけど。がしかし、だからここで宣伝してあげよう、なんて気持ちはなくて。
そんなにはこのジャンルを分かってないなりに、この作品を聞いて自分の心が動いたところをお伝えしたいんだよね。

“gloomy rest ep”は全5曲・約17分という構成で、述べたように激しぃ〜い音楽ではありつつ、しかし〈攻撃的〉って感じのしないところがいい。全体にふんいきが明るいし。
かつ、こういう音楽としてはサウンドがきれい。過激さのうちに、秘められたやさしみを感じさせる。

とくにいいと思ったのは、2曲めの“Dirty Mashup 3x3。これは約5分弱という、アルバム中ではもっとも長い曲。
が、こういう音楽を説明するようなことばが、自分の中にはなくて──あるいはどこにもないのかも知れないが──。それでもどうにかことばにすると。

まず。何かものすごい量のサンプルの切り貼り&積み重ねが形作っているコントンの世界、だと言えばそうなんだが、しかしビートが導く音楽の流れは明快で快適。

この楽曲は全3部の構成になっているとも見られ、まず仮に第1部を序奏とでもする。そして曲のちょうど真ん中のブレイク後、何かヘンな兄ちゃんの声で〈ノイズまみれの汚い音楽を……〉うんぬんという奇妙な語りが現れる。
それをきっかけに音楽がさらにコントンの感じを強めたかと思うと、引き継いで、ワリにまとまった(寸断されていない)ボーカルのサンプルが現れ、それを押し出す展開へ。この曲&その使い方がすごくよくて、その登場には、目が醒めるような思いをさせられる。ここらが第3部。

そうしてその、ボーカル曲のさわりを提示しきったところで、楽曲は終わり。凝縮された、実にホットで愉しい時間の5分間でした、ではあるんだけど。

けど? アタマのカタい自分は、つい考えちゃうんだよね。なぜ、仮に言われた〈全3部〉の構成なのだろう、と。
こういうフロア向けの音楽で、自分が長らく親しんできたテクノとかハウスには、こういうタイプの構成はなかった(と思う)。もしも第3部のボーカルが〈メインの要素〉だったとすれば、その前の第1部の相対的な長ったらしさが、過剰のような感じもするが。

けれど、そういうことではない。分からないけどこの構成は、たぶんこれでいい。
だいたいブレイクコアっていう領域では、ワリに分裂的な構成が好まれるような気配もあり。加速され切り刻まれたビートの勢いで、メロディに対する伴奏、〈図〉に対する〈背景〉、そういう構図を分裂させ散らかしていくのが面白いんだと思う。

というわけで、てるるさんの今後の創作に期待が高まってしまうが。んだが、あと少し余談をすいません。

ここまで述べてきた、“Dirty Mashup 3x3”という楽曲、そこからこうむった快いショックを、ちょっと自分もサウンドで表現してみたんだよね。それのスタイルはヴェイパーウェイヴ()。
こんな所業をムリに高尚めかして言うと、ボードレールいわく、〈一枚の絵画に捧げる一篇のソネット、それもまた“批評”である〉、みたいな……。

で、あらためてその音を聞き直すと、ここまでにことばで述べてきたこととほぼ同じか、と自分では思う。まあ、“gloomy rest ep”のついでにでもお耳を貸していただければ実に!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
tellur, a young Japanese breakcore rookie. His sound is adorable with its brightness and gentleness hidden in the extreme. And “gloomy rest ep” is his first release. The second song, “Dirty Mashup 3x3”, is particularly good. The chaos is heading for ecstasy!