エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

V.A.: ΔQVΔRIVS (2020) - 海面の下にはヒミツがあるからっ!(by セックス・ピストルズ)

《Underwater Computing _》は昨2019年に活動スタートしたらしい、ワリに新手のヴェイパーウェイヴ・レーベル()。その拠点はフランス東部のコルマール、と称している。

と聞いてちょっとだけ調べたら、このコルマール市は、ドイツとの国境にほど近い、アルザス地方の町。
大もとは神聖ローマ帝国に属していたが、しかし三十年戦争普仏戦争・第一次&第二次世界大戦……のようなイベントのたびに、領有する国家が仏と独とで入れ替わってきたとか。

そして直近の第二次大戦の末期には、市の近郊が、両軍あわせて6万人近くが死傷する激戦地ともなった。だが、そういうヤバめの歴史を経てきたわりに、ルネサンスや中世の建物らがよく保存されており、その景観がすばらしいってことなんだけど。

しかしまあ、ここではヴェイパーウェイヴのお話だ。そのアンダーウォーターから2020年5月発のオムニバス・アルバム“ΔQVΔRIVS”、これはすごくいいと思ったんだよね。

この『アクエリアス』は、おそらくすべてが新曲による、《水》および《海》をテーマとしてそうなコンピレーション。全21曲・約86分を収録。
その音楽的なスタイルは、《スラッシュウェイヴ》()、アンビエントもどき、そしてエセっぽいニューエイジ、といったラインでまとまっている。もともと〈みずがめ座の時代〉ってニューエイジ思想のスローガンなので、まあそういうものが入ってくるのも是非なし。

そうしてレーベル名が《アンダーウォーター》なだけに、この水中ヴェイパー大会は、〈われわれはこういうものだっ〉という彼らの自己紹介なのだろうか。イカすじゃん。

そしてこのアルバムの全体を統一しているのが、茫洋たる水分に包み込まれたような、モヤモヤ〜っとした音空間。けれどアーティストごとにアクセントのつけ方が少しずつ異なり、そのグラデーションが実に気持ちいい。
ただアンビエントもどきを並べただけではボーヨーとしすぎるので、あいまに入ったスラッシュ系の、ちょっとの俗っぽさがスパイスとして利いている。この構成がうまい。

video forum: I (2020) - Bandcamp
video forum: I (2020) - Bandcamp
1匹だけシグナル系代表で『アクエリアス』に参加しちゃったビデオ会議さんの最新アルバム

そして楽曲を提供しているヴェイパー者たち21人、その半数弱ほどは、いままで《ここ》にてご紹介してきたヤカラ。
それら8〜9コものバンド名をいちいち列挙はしないけれど、しかしそんなでは、オレの気に入るのも道理ではある。

そして、です。これが、ただ単にいいアルバムであるだけではなくて……。
……こう言っちゃ失礼だが、ポップ音楽のド辺境みたいな町からポッと出の新興レーベル、そこから、万国の新旧のヴェイパー者らを糾合し、きわめて高いレベルでまとまったものが出てきたんだ。そのことがさらにまたイイと、オレは考えるんだよね。

たとえば。今アルバム参加メンバーの中ではもっともベテランっぽい、《MindSpring Memories》のエンジェル・マークロイドさん()。実はこの人の膨大なる作品群について、〈けっこうアレコレだなァ?〉、と思ってんだけど。
しかしその人が今アルバムで、すごくみずみずしい──水がテーマなだけに──スラッシュウェイヴを聞かせてくれているので、まだまだイケそう、このシーン全体が、という気になったんだよね!

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Underwater Computing _, a slightly newer Vaporwave label launched in 2019, based in Colmar, eastern France. The omnibus album “ΔQVΔRIVS” they announced in May 2020 seems to be a compilation with a theme of water or sea. Exactly, from Underwater.
The entire sound is unified by a sound space that is fluffy and engulfed in water that is vast. However, each artist has a slightly different way of adding accents, and the gradation is really pleasant.
In this way, a collection of new and old vaporers from all over the world, and at a very high level, appeared here. It is considered good news for the entire world of Vaporwave.