ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

b o d y l i n e: Twinkly (2016) - 安楽さをきわめた輝かしいチルアウト空間の幻影

《b o d y l i n e》は、イタリアの人とだけ伝えられるヴェイパーウェイヴ・クリエイター()。2012年あたりから活動中で、確か2年ほど前から名前の表記が、《bodyline》へと変更されている。
そしてその〈ボディライン〉というバンド名に、何とはなしのいやらしさが存在するが。けれど音楽的にはその逆に、アダルティな感じがほとんどしないのが、この人の特徴だと思ってるんだよね。

エロティシズムに限定されないアダルトタッチな、あれこれの歓楽のフィーリング──。ヴェイパーの世界で、ソレを匂わすことにほぼ専念している《レイトナイト・ローファイ》なんていうサブジャンルもあるけれど。
しかしボディラインは、逆。とくにこの5年間くらい、一聴した感じがきわめてクリーンでさわやかな楽曲ばかりですので、ご家庭やお子さまにもひと安心。イッツ・ザ・セイフ・ミュージック・エンターテインメント──ボディラインを、ぜひお試しください!

……ただしっ? その表面的なさわやかさの背後に、《何》が潜んでいるのかは、分かったモンじゃないけどなあっ!!

で、また別のことばで、ボディラインの音楽がどんなものかを言おうとすると。
それはもう、まったくどうでもいいような音楽の切れっぱしらを採取し再構成することで、安楽さをきわめた輝かしいチルアウト空間を、幻影として現出せしめている。

そしてそういうボディライン作業のきわまりが、いまご紹介しようとしている2016年のアルバム“Twinkly”だと、オレが思い込んでいるんだよね。

とはいえ『トウィンクリー』を至高の作品だと思ってるのは、たぶんオレだけじゃない風。そもそもこの記事を書き始めたきっかけは、すでにおなじみ《DMTテープスFL》の社長さんがこれを、〈2010年代でもっともふぁぼれるアルバム!〉と、つぶやいておられるのを見たからなんだ()。
もともと自分がボディラインの記事を書かねばとは、ずっと以前から思ってたんだが。さらにシャチョさんがそこまで言うなら、もう絶対……とねっ。

そして話が戻っちゃうけど、〈まったくどうでもいいような音楽の切れっぱし〉とは、いったいどういう言い方? 素材がなければほとんど何も始まらないのに、その方面へ、しっけい千万すぎる。
しかし。このアルバム『トウィンクリー』の使用ネタはほとんどが明らかになっているんだが()、そしてその原曲らを聞いてみると、〈ああ〉とか〈えっ〉とかいう、バカみたいな発声しか出てこない──。そんな現実も、またある。

まったくどうでもいいように聞こえる軽フュージョン、ほぼ忘れ去られたいにしえのJ-Pop。そういうものらを素材とし、かんたんな場合にはただスピードをダウン、凝った場合にはイントロや間奏らを切り刻んで再構成。──と、それだけのことで、〈安楽さをきわめた輝かしいチルアウト空間を、幻影として現出〉。
それがボディライン作業のマジックであり、そしてオレらのヴェイパーウェイヴの特定部分が、なしていることなんだ。なぜか自分は、わけもなく誇らしい気分でこれを述べている。

で、このあたりを調べていて、とくにビックリさせられたのは、『トウィンクリー』ラストのトラック、“Wandering Heart”
……これが何らかの陰湿邪道な手法で作られたアンビエント(もどき)であろうとは、聞けば誰にでも分かりそう。かつエレキギターが低く、〈うにゅゥ〜ん〉と鳴っているので、何か恥を知らない風の《フリップ&イーノ》まがいなのかな、という印象も受ける。

そしてその原曲が、実にしっけいだが〈まったくどうでもいいような〉とも言いたくなるような、ただ古いニホンのシティポップでありまして。そして、その原形からはぜんぜん想像もつかないようなありさまを示している“Wandering Heart”に、オレはふるえたのだった。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
“Twinkly”, a 2016 masterpiece album by b o d y l i n e (now, bodyline).
By collecting and reconstructing pieces of music that are completely insignificant, a bright chill-out space with comfort is revealed as a illusion. It's just magic, and it's also an example of Vaporwave music.