エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

chris†††: no lives matter (2016) - 問題とされないのは誰が生命(たがいのち)

2013年のデビューから、ずっと注目の人であり続けているヴェイパーウェイヴ・クリエイター、《chris†††》。その本名はジョン・ゾベレ、ピッツバーグ在住。また彼は、フューチャーファンク系の有力レーベル《Business Casual》のオーナーとしても知られる()。

そして彼の2016年のアルバム“no lives matter”は、オレの信頼するサンブリーチのレビューで最高レベルの評価をかち取った──、たぶん超名作なんだと思う。たぶん()。

と、〈たぶん〉とか言うだけに、実はあんまりよく分かっていないところがある。

ともあれ分かるところから攻めていくと、全12トラックの6コめの“ytp death”、これは面白い。“ytp”とは“YouTube Poop”、ようつべのクソ動画のことだそう。その特徴的な、クソっぽいヨタ発言とゴミ音声らのカットアップだと考えられる。
また、そのイントロで聞こえるサウンドが、なぜかそこだけ異様にレベル高いようなのがふしぎ。あるいは《Oneohtrix Point Never》の“Sleep Dealer”のサンプリングかと思ったんだが、でも聞き比べたら似てなくもないけど違う風。
……と、それを自分が思ったのは、あらかじめ次のような本人の自供を聞いていたせいなのかも()。

2013年に、Oneohtrix Point Neverのアルバムのレプリカを聞いたが、それに触発された。私は略奪的なスタイルのサウンドコラージュとYouTube Poopマッシュアップを作成していましたが、レプリカのトラック「Sleep Dealer」は、私がベーパーウェーブスタイルの音楽の紹介でした。

(グーグル翻訳システムの出力)

そしてプープがウンチであることは明らかなので、〈そおっスねえ〉という同意が大いにありうる。だがそれはそうとして、このアルバムには、ウンチでない要素が何か含まれているのだろうか。

ちょっとサウンド面を離れて考えると、今アルバムのタイトルは、〈生命は問題でない〉くらいの意味だと考えられる。しかし、たったの3語にたっぷりとコノテーション(言外の意味、ニュアンス)を詰め込んだ言い方と思われ、うまい和訳がありそうな気がしない。

やや近い用例、ちょうどいま2020年中盤、ジョージ・フロイド氏殺しへのリアクションとしてアメリカ等で、“Black Lives Matter”というスローガンが、再び強く言われている。これがまたニュアンスに富みすぎて、どのように訳しても文句が出るフレーズのよう()。こちらの件には、政治的で社会的な利害が関わるだけに、よけい議論になるわけだけど。

で、アメリカの人種問題にしてもそうだが、ニッポン人の自分などには分かりきれない、何らかのコンテクストの上に、これがあるのだろうか。

さもなくば。クリスTTTのゾベレ氏は2013年、第1次ヴェイパー・ブーム期に有力だった《fortune 500》レーベル()に自作デモを送ったが黙殺され、それで自分のビズ・カジュ・レーベルを起こしたそうだけど。そうしてオレの音楽を聞く耳もまた、f500のA&R氏と同レベルだってことなのか。

赤い薔薇の花ことばは、「美」「情熱」そして「愛」…

【追記とおわび】 いやー、サーセンっス。分からぬものを分かりまちぇ〜ん、と言い張ってるだけみたいな、Poop臭ふんぷんの記事で!
何の言い訳にもなってないっスけど、このアルバムについては、2年くらい前からずっと評価に苦しんでいて。そしてこの3日間くらい考え詰め、また英語のレビュー記事とかも読み漁り。……で、自分内のスケジュールで時間切れだと感じたので、つい、こういうものとして放出しちゃったんだよね。
言うまでもなく、ゾベレ氏の制作のアビリティとかは高く評価してるんで。しかしそれでも通じない何かがある理由は、オレの耳がヘンでないなら文化的ギャップのせいか……そのくらいしか……という、弱めのお話でした。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
“ytp death”! YouTube Poop a GoGo! Yeah.