エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

V.A.: CUBEPUNK - A Tribute to Minecraft (2019) - 崇高なる世界の中心で立方体らを狩るケモノ

ヴェイパーウェイヴのさして長くもない歴史上、《2814》による「新しい日の誕生」(2015)、このアルバムが大きなブレイクスルーになったことは、“誰も”が知っている。そしてその内容が、まあだいたいアンビエントみたいなものだということも。

けれど? ここでの主語はヴェイパーだとして、それがアンビエントの方面にウィングを伸ばすことに、何らかの必然性──みたいなものはあるんだろうか?
そこらでうまい説明を聞いたことがない感じだし、かつ自分にも、とくに言うようなりくつはなかったんだよね。さっきまで。

まあ。もともとヴェイパーウェイヴなんて、「どんよ〜り」とか「グデェ〜」とかいった形容詞が似合うようなソレなんで……。われらの得意ワザである《チョップド&スクリュード》、等々のヴェイパー処理の結果、だいたいそうなるので。
そしてそこからがんばって毒気を抜いていくと、多少アンビエントっぽくなってこないこともない。けれどさ。

とか思いながら、新しい何とかをちょっと聞き直してみたら、あー、これはイカン、優勝者の決定です。アンビエントとして実用可能である上、さらにそれがモノすごいのは、ヴェイパーの邪悪な美学がひっそりと、そのサウンドに浸透しきっていること。
その後者の特徴を、初めて聞いたころには感じとっていなかった。まあそれほどまでに、〈がんばって毒気を抜いて〉、ヴェイパーの陰うつヒワイな美学や手法らが、そこで《昇華》されちゃっている。

こんなんではこのイキオイで、ヴェイパーというジャンル自体が浄化され、そして昇天しかねない。それほどのインパクトが、そのせつなには、存在したように思えるが。
しかし現在の現実は、ぜんぜん浄化されず昇天などしそうもない、気品に乏しきヴェイパーウェイヴの相変わらずの蔓延。それは、うちらにとっての朗報なのだろうか?

そして、そんな風に考えてくると。

ヴェイパーウェイヴからアンビエントへと向かうムーヴメントは、俗悪ワイ雑にまみれすぎたヴェイパー界(すなわち現実)から、崇高なるコスモス、静ひつさの支配するユートピア、それを希求する──、みたいな運動なのだろうか。

もちろん前提が重要で、ヴェイパー美学と無関係なアンビエントなら、ただの別ものだし。かつ現実が《現実》のままなので、どうせそっちこっちの往復運動になるが、それはまあイイっしょ。

と、そういうことで、いまご紹介したいのは、もはやヴェイパー界の名門とも呼べそうなレーベル《B O G U S // COLLECTIVE》からのオムニバス、“CUBEPUNK - A Tribute to Minecraft(2019)。
その参加アーティストらは、《LIFE2979光》、《EMBA Soundsystem》、《Reality Person's》、という3組。そして単なる寄せ集めではなく、まず三者がそれぞれ2曲ずつを提供、そしてラストの2曲は三者の合作、というコラボ企画。

で、その内容が、スタイル的には《アンビエント・ヴェイパー》。かつアルバムのテーマは「マインクラフトに捧ぐ」、そういう題名のビデオゲームが実在するもよう。
そして彼らは、そのゲームの中に、〈崇高なるコスモス、静ひつさの支配するユートピア〉を見出しちゃったらしい。見て聞いて、そういう風にしか、オレには受けとれない。

いや、タイトルしか知らないんだけど、《マイクラ》ってそういうゲームなの? それと、ここに集結した3組のヴェイパー者、いずれも中南米の人らしいんだが、そこに何か《意味》が?

──そういう《意味》などはいまだ分からないが、しかし気持ちのいい響きが延々と続くので、実にハッピーハッピーやんケ。みょうにきれいなサウンドなんだ。
ちなみに三者のうちのおひとりは、〈「新しい日の誕生」の影響で、ボクちゃんも“Future Ambient”をヤッてマース!〉と、きわめて率直に告白されていた。アレのレベルにはもうちょっとだが、しかしそんなには遜色がない、すでに。イイね!

赤い薔薇の花ことばは、「美」「情熱」そして「愛」…

【追記】ゲーム《マインクラフト》のことを、まったく知らぬままここまでを書いちゃったけど──何か立方体を、積んだり崩したりするものらしい、としか──。だがしかし、ついいま知ったことがある。
そのゲームの《C418》氏の制作によるBGMからして、何かアンビエントっぽいし、かなりいい音楽だということを、知ったんだ。しかも、ことさらに音質をモコらせているような個所もあって、ヴェイパーウェイヴの美学まであとちょっと、という感じさえも。

そしてご紹介したキューブパンクのアルバムに、ここからのサンプルが入っていそうな気もする。が、そういうことの検証とかは、ちょっと自分の担当じゃないのでェ。

【余談】この記事を書くため、おなじみ《Dream Catalogue》のBandcampページを見たら、何か以前とようすが変わっていた()。
ちょっと前までページのてっぺんに、〈うちらはBandcampから引っ越すよ!〉というお知らせがデカデカと出ていたが、それが撤去されているのだった。とはいえ、新サイトへのリンクは張られたままだけど。

一時はもう、なぜなのかBandcampとは絶縁したい(!?)くらいのイキオイがちょっと感じられたんだけど、しかしいったい何がどうなっているのか?
そして、そんなことを気にしてるのは自分だけなのだろうか。Redditとかを見ても、そういう動きはとくに話題になってない感じ。いや、この間に、失われたものが何かあるわけじゃないんだけどさ……。