ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

Sam Wilkes: Live on The Green (2019) - 《創造》の時代の空気を喚び起こす、やさしく温かく雑な音

在ロサンゼルスのジャズ系ベーシスト、サム・ウィルクス。どういう人かというイメージも別になかったが、この近作“Live on The Green”はジャズ+エレクトロニカ、しかもアンビエントっぽくローファイな作品で面白い。奇妙な新しみが感じられた。

だいたいエレクトロニックでアンビエント風であるまではまだしも、まっとうらしきジャズのミュージシャンでローファイに走った人は、そんなにいないはず。オルタナ+ジャズの路線を往くマーク・リボーやネルス・クラインあたりのアルバムにも、ここまでのローファイを感じたことはない、自分が聞いてきた範囲内では。
いや実は意図的ではなく、たまたまチープな録音しかなかったのかも知れないけれど、しかしそんなものを平気で世に出す根性がすでにアレである、いや実に。

そのようにモヤモヤとしたローファイ・サウンドなので、かつローランドJUNO-106のような古機材が鳴っているせいもあってか、このライブアルバムは年代感もまたひじょうにボヤかされている。1980年代の音源ですよと言われたら、そうかなと信じ込んでしまいそう。曲のあいまの拍手や歓声などがブツ切れる、そんな編集の粗さもふんいきを作っている。
そしてノスタルジックなビートボックスのポコポコ・リズムに乗って、とぼけた感じのスライドギターとやさしいコーラスが温かくフワリとした空間を作る5曲めなんか、ひじょうにいい。そこらはあまり《ジャズ》っぽくないわけだが、しかし1970年代前半のイーノさんの唄ものみたいな、実験性と音楽性の高度な両立がある。ナイス。

追って関連作らをも聞き直してみたら()、このウィルクスさんはジャズのベーシストというよりか、《ジャズのイディオムをちょっと流用しているエクスペリメンタルの人》かという気もしてきたが、まあそこらはどっちでもいいのでは。まっとうなおジャズよりはフレッド・フリスやクリスチャン・フェネスあたりの系統だったとしても、別に悪いことはなさげ。