エッコ チェンバー 地下

─ €cco ₵hamber ฿asement, Vaporwave / Đésir đupłication répétition ─

TVVIN_PINEZ_M4LL: 植物波 [ p l a n t w a v e ] (2016) - オーガニックなガーデンライフを貴方にっ……!!

ヴェイヴェイ? ごきげんよう

さてこのブログの目的のひとつは、自分でどう考えても、ヴェイパーウェイヴのいいとこといいやつを、ご紹介したい。たまにダメなやつにあたって、それを「ダメだこりゃ〜」とか書いてんのは無能の告白でしかない、長さん(いかりや)でない限りは。

そんなわけだから、こないだXマスアルバムの話で《TVVIN_PINEZ_M4LL》)を、それとなく批判したままで終わってしまったのは気になっていた。まあXマスというテーマと自分の相性が悪いのでああなったわけで、名前の中に《M4LL》(モール)とあるからには、けっこういいバンドであるはずと考えうる。

そんなわけだから、あらためてこの《ツインパインズモール》の音をひと通りチェキてみると、サウンドの基調は期待通りモールソフト(Mallsoft、スーパーのBGM風ヴェイパーウェイヴ)。尺が1〜2分の短い曲が多いので、聞きやすい。仮に「ちょっと合わんなあ」と思っても、すっぐ次の曲へ行っちゃうわけで。
いちばん初期のアルバム「For Those About To Shop」(2015)は、“買い物とかしようというやからに”、という題名からして「これがモールソフトだッ!」と宣言してるかのようなモールづくし。わりとこの人は、アルバム単位で、ちゃんとふんいきをそろえてくるところがありそう。
で、同じ年の作「H O L I D A Y S '95」は、バケーションがテーマなのでそれ風に。こっちには現実音やヘンな会話なんかも少々入っているが、しかしBroken Transmission(サウンドコラージュ風ヴェイパー)と呼ぶほどの過激さまでは進まない。

赤い薔薇の花ことばは、「美」「情熱」そして「愛」…

そしてこのツインパインズモール式のトータルアルバム(なんちゃって)として、もっとも完成度が高いかと思えたのは、2016年の「植物波 [ p l a n t w a v e ]」)。曲のタイトルが「植物波」、「ボストンタマシダ」、「テラコッタ」、「フラワーボックス」などとあり、サウンドはいたってソフト&スムース。そして、カバーアートもご覧のような趣味のよさ(?)。
いや……想像してみるんだけど、もしもヴェイパーなんて邪悪な音楽の存在を知らない人がこれを聞いたら、ガーデニングをテーマとしたイージーリスニングそのもの、とでも思い込んでくださるのでは。またあるいは、それにしては音質がみょうにモヤッとしてる、というところで不審の念を抱くだろうか?

そしてこのアルバムのラストナンバーアロエ波」てのがちょっとけっさくで、サンプルソース民族音楽か現代音楽か……そこらは分からないが、なんか木琴がポコスコポンッと叩かれている40秒間のトラックでおしまい。
それがけっこういいサウンドなんだけど、にしても、そこまでの楽曲らと異質。急にまじめな話が始まったと思ったらすぐ打ち切られた、みたいな気分にさせられる。ナイスなウィットだよね、たぶん?