ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

Macroblank: 没頭する (2021) - 髪を刈る男たち──そのコスモロジーと系譜

《Macroblank》──マクロブランク、と名のっているヴェイパーウェイヴのアーティストについては、すでに以前にもお伝えしています()。
そしてそこでも述べたように、どこのどういう人なのか、まったく不明。それがいぜんとして、かいもく不明ですが()。

ともあれマクロブランクさんは、いま注目されているヴェイパーのサブジャンル《Barber Beats》、そのもっとも有力なプロデューサーだと言えるでしょう()。

このマクロさんの特徴は──まずはもちろんバーバー・ビーツの特性ら一式をそなえた上で──、サウンドの骨格がほんとうにしっかりしている。実に堅固です。一般的に言われるような、〈いいサウンド〉に近い。
その仕上がりのよさ、おそらくマスタリング技術の卓越! その点においては、この派の始祖である偉大な《haircuts for men》をもしのいでいる……ような気もするほどです。

そして『没頭する』は2021年4月リリースの、マクロさんのもっかの最新アルバム。全10曲・約53分を収録。述べたとおりの〈いいサウンド〉を、ヴェイパーウェイヴのように聞こえる限りのモヤモヤ感を維持しつつ、またも展開しています。
すなわち、ほどよくワイドなレンジ感とダイナミクス、そして最適なラウドネス、適切さをきわめたテンポ設定と曲の長さ、そして統一された全トラックの響き方とムード──。

あまりにもみごとで、もはや逆に、怖いとか憎たらしいとかいう感じさえも! その完成度の高さに圧倒されます、傑作です!

ROMBREAKER: Sorrow EP (2018) - Bandcamp
ROMBREAKER: Sorrow EP (2018) - Bandcamp
ロムさん初の理髪店ビート作品です!

……で、さて。ここから少し、違うお話になるのですが。

バーバー・ビーツ、理髪店ビート、あるいは床屋系──。その派の有望ニューカマーであるフェージングドリーマー》さんをご紹介した前記事で、このムーブメントの起源を、少し考察してみたりしました()。
そして、〈ことによったらバーバー・ビーツの命名者は、スイスの床屋系アーティスト《ROMBREAKER》さんであるかも〉、と述べました。そして、〈機会があったらご本人にたずねてみようか〉、とも。

それが意外とすぐに、その機会が得られました。ロムブレイカーさんが、想像どおりにすばらしくナイスな人で、こころよく回答してくれました()。

私ではありません。Macroblankのhaircuts for menにインスパイアされたVaporwaveのために「Barber Beats」という言葉を作ったのは、Aloe City Recordsです。私は、すでにHFMにインスパイアされた古いアルバムにバーバー・ビーツのタグを付けただけです。私の最初のアルバムは『Sorrow EP』ですが、タグを付けるのを忘れていました(笑)。

在ロンドンのアロエシティ・レコーズは2015年に創業、そして20年9月のマクロブランク『絶望に負けた』に始まって現在まで、床屋系に強く注力しているレーベルです()。とくに、マクロさんの作品のほとんどをリリースしています。
その彼らが、バーバー・ビーツの命名者でさえもある、というお話なのです。

であると、うかがいましては。先立った私の考察が、あまりにも、すっとこどっこいのようですが。
ですけどしかし、〈2020年の秋よりも前には、バーバー・ビーツということばを見たことがない〉という、その感触は誤っていなかったもよう。……そのことが、私を少しだけ満足させています!

そして、また思えば。

偉大な始祖であるヘアカッツ・フォー・メンさんのスタイル、すなわち私どもが現在バーバー・ビーツと呼んでいるものは、すでに2015年あたりには完成されていたと思われます。すると理髪店ビートは、それ自体としては、あまり新しいものではありません。

haircuts for men: 違法 COLLECTION (2019) - Bandcamp
haircuts for men: 違法 COLLECTION (2019) - Bandcamp
違法性がきわまったデンジャー作品集です!

にもかかわらず、にわかに昨年の秋から、これがいきおいのあるムーブメントになっている。なぜ、《いま》なのか──、その理由はいろいろと考えられますが。

その理由らの筆頭として、マクロブランクさんの登場、ということがありそうです。元祖である人の偉大さは言うまでもないとしても、しかし《二匹めのドジョウ》、さらにまた続く者ら、その出現こそが、ムーブメントというものを形成するのです。

かつまた。マクロさんより以前にも、ヘアカッツさんから強く影響をこうむったヴェイパーは、ちらほらと存在しましたが……。
ですけれど、びっくりするほどご本家に似ている、しかもクオリティの異様な高さ、という条件らをクリアしたのは、たぶんマクロさんが初でしょう。その達成が、この領域にブレイクスルーを呼び込んだのではないでしょうか?

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
Macroblank can be said to be the most influential producer of Vaporwave's sub-genre “Barber Beats”, which is currently attracting attention.

The characteristic of this Macroblank is──of course, with a set of Barber Beats' characteristics──solidness of the sound construction. It's really solid. It's close to a good sound, as is commonly said.
The finish is wonderful. Maybe mastering technology excellence! In that respect, it may surpass the great haircuts for men, the founder of this school.

And 『没頭する』 (Immersive) is Macroblank's latest album released in April 2021. Contains 10 songs and about 53 minutes. As I mentioned, the “good sound” is being developed again while maintaining the fuzzy feeling as long as it sounds like Vaporwave.
In other words, a moderately wide range and dynamics, optimal loudness, appropriate tempo setting and song length, and the unity of sound and mood of all tracks.

It's so beautiful, it even feels scary anymore! It's a masterpiece that will overwhelm you!