ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave / Désir Duplication Répétition ─

t e l e p a t h II テレパシー能力者2: ニューホライズン (2020) - 《フェイザーウェイヴ》の新地平へ

無条件に信じられる話など、何ひとつ存在しないヴェイパーウェイヴの世界。つまり、《現実》と等価な世界。
けれど、それにしたってだよ? この《t e l e p a t h II テレパシー能力者2》を名のるクリエイターが、仮に、あの偉大なるヴェイパー・ヒーロー《t e l e p a t h テレパシー能力者》と、ぜんぜん違う別人だったりするとか?
そんな話は、さすがにシャレとしても受けとめきれないんだよね。

だからまあ、同じ人だと考えながら、話をお進めします。今2020年初頭からテレさんは、この名義で活躍中()。ご紹介しようとしているニューホライズンは、そのアルバム第6作で最新作。

このアルバムは少々《シグナル》っぽいチャイム風の響きで始まり、やがてお得意の《スラッシュウェイヴ》へともつれ込む()。そしてところどころにニホン語の唄みたいのが聞こえる、これがいつも通りで安心感を与えてくれる。

ちょっと異色のトラックかも知れないのが7曲め、サイバースペースの中断」。これは4拍子のビートの上に……よく分からないが6拍とか10拍とかで展開するフレーズを重ね、リズム感をボカしながら、きわめて大きなうねりを演出している7分28秒間。
これは、すごい。小さな音で流していると気持ちいいだけなんだが、しかし音量を上げて聞き入ると、船酔いみたいな感覚に襲われてくる。

少ない要素らをシステマチックに構成して、この大きな効果を上げているんだ。ヴェイパーウェイヴと呼ばれる頭が悪めのジャンル内では、少々高級すぎるヤリ口であるかも。

また。〈うねり〉の表現といえば思い当たることに、フェイザーウェイヴ》というスタイルまたは手法が、ヴェイパー界の中にある。
これもおそらくテレパシーさんの創案で、トラックのほとんど全体にフェイザー(phaser)というエフェクトをかまし、〈シュワァ〜〉って感じのうねり感を出す。このアルバムの6曲め、「アクションポイント」などは、典型的なそれかと思える。

そのいっぽう、8曲めの「旅他の場所」フェイザーウェイヴなんだが、しかしまたちょっと感じが違う。フェイザー効果を過激にしているせいなのか、うねりの大きさがハンパない。荒れる海上、乗った小舟が大きく揺られてめまいに襲われ、その吐き気寸前の奇妙な快感、そんなものが演出されているかのよう。

なお、Bandcampページの自作解説によると、今アルバムのテーマは〈23XX年、人類の生き残りが大宇宙を漂流〉──みたいなことらしいんだけど。そういう漂流の感覚が、これらの〈うねり〉で表現されているのだろうか。

かつまた〈揺れる〉という現象に、エロチックなニュアンスを感じるアレもある。ロックンロールの“rock”と“roll”は、本来そういうことが言われていた。
テレパシーさんによる音楽のはらんでいる、押し殺され気味のエロチシズム──ということを、けっこう想うんだけど。そしてここまで検討してきたような〈うねり〉の効果は、そこにも結びつくものなのか。

それと。蛇足みたいな感じでご紹介するのもすまないが、テレ2さんのアルバムでは「新生活」、これもすごくいい。
全1曲・約26分間のアルバムで、《ドローン系》と言えばそれはそうなんだけど。しかしまた違った方法で大きな〈うねり〉を演出し、漂流のような心細さと婉曲なエロチシズムを表現しているもの、とオレは受けとめているんだよね。イエイッ

【後記, 2021年4月3日】
確か2021年初頭のことですが、この《テレパシー能力者2》さんのBandcampページが消えてしまったため、リンク先をarchive.orgのミラーへと差し替えました。
それと。
このテレ2さんについて、〈かの高名なる《テレパシー能力者》さんの新たなアヴァターであろうか?〉みたいなことを書いていますが。現在の私は、もはやそうは考えておりません。
しかし、過去に書いてしまったことは、そのままにしておきます。