ポ  サ  研

─ Post-Truth Sound Lab, Vaporwave, Désir Duplication Répétition ─

t e l e p a t h II テレパシー能力者2: バーチャルリアリティ (2020) - 夢の中に幸福の到来を待つ

《t e l e p a t h II テレパシー能力者2》を名のる、ナゾのヴェイパーウェイヴ・クリエイター()。
この人は、ヴェイパー史上有数の偉大なアーティスト《t e l e p a t h テレパシー能力者》()と、同じ人──その現在のエイリアス──だろうと考えながら、以前にもチラリご紹介したんだけど()。

けど、だんだんに確信が、なくなってきちゃってるんだよね。同じ人なのかどうか。

なぜって、ご本家が確実に関わっていそうなプロジェクトが、精力的なアドヴァタイズで何やらをマネタイズとかしようとしているのに対し()、こちら《テレII》さんの周りは、あまりにも静やかすぎる。
ほとんど話題になってないみたいだし、同業者たちからの推しもない。注目してるのはオレくらいなんだろうか、と思うほどなんだ。

ただ、そんなかそけきたたずまいが好きなので……。誰が誰かなんてことはあまり気にせず、自分がいいと思うヤツのご紹介を続けるんだよね。

それでもってバーチャルリアリティは、《テレII》の人による2020年10月発の最新アルバム。全13曲・約45分を収録、内容的にはおとくいの《スラッシュウェイヴ》()。
けれどいままでの作らに比べると、やや実験味が薄れ、あれこれの操作が控えめかも。その分、聞きやすく親しみやすいと思う。中でも印象的なトラックは、W1NK「才ンリー・口ンリー」(1989)をスラッシュ化した3曲め。

で、それにしても、そのカバーアートが、何をいまさらのアポジー&ペリジー

いや、いまはもう知らない人も多いと思うけど、ジャケ写に見えているロボット2体が、そういう名前なんだ。これは1984年、ニッポンの《つくば万博》のハイテクブームのドサクサまぎれに、ちょっとアドヴァタイズされて名前を売ったキャラクターたちなのだった。

それで。うちらのエレクトロ的音楽の話としては、この《アポジー&ペリジー》の偽名のもと、われらの細野さまと戸川純ねーさんらが、企画モノのアルバム1コをデッチ上げている。そしてそこからカットされたシングルのB面曲、「真空キッス」がすばらしいトラック。

真空キッス きつく抱かれると
真空キッス チッ息しそうよ
受動的な私 性格ネ
自動的に瞳 閉じてるの

(「真空キッス」1984, 作詞:松本隆, 作編曲:細野晴臣

まあほんと、まず何より、この時期の細野メロディが《神》でしかないワケだけど。

にしても。ここで歌われている、〈受動的&自動的に、瞳閉じて〉……すると自発的&不可避的に、くちづけの快感と幸福感に自分は包まれる予定だという、きわまりきったオプティミズム
──そういうものを、われれわれはいまだ持ちうるのだろうか? あれこれのハイテク化が帰結する、魅惑的でエロティックなユートピアの到来、みたいなおとぎ話への信奉を?

で、そうして話は、《テレII》さんのアルバムのことへと戻り。

だいたい近ごろはカンタンにVRと略して言われるので、それをわざわざ〈バーチャルリアリティ〉とカタカナでフルに書くと、そこには1990年代的なVR待望の楽観的ムードが、思潮の墓場からよみがえって来ないでもないような感じ。

そしてアルバム『バーチャルリアリティ』は、主にローファイ化されたチルアウト音楽の断片のようなトラックらを積み重ねながら……。
……そしてそのクライマックスの12曲めで、タイトルが「奈落の底で失われた」、というところにたどり着く。とはいえ題名ほどには恐ろしい曲ではなくて、喪失感と諦念をトランキルに表現してるようなものだけど。

[sum-up in ԑngłiꙅℏ]
A mysterious Vaporwave creator named t e l e p a t h II テレパシー能力者2. I'm wondering if it's the new moniker for that famous t e l e p a t h テレパシー能力者, but not sure.
Anyway, the latest album by Mr. Tele-II is 『バーチャルリアリティ』 (Virtual Reality), is his favorite Slushwave work. Especially the third song, a slushed version of W1NK's “0n1y Lone1y” (1989) is impressive.

By the way, the robots that appear in the cover art of this album 『バーチャルリアリティ』 are “Apogee & Perigee”. They are characters that symbolize the optimistic high-tech aspiration mood created during the era of Tsukuba Expo 1984 in Japan.
And at that time, Haruomi Hosono, the techno god of Japan, and Jun Togawa, the techno diva of sublimity, under the pseudonym Apogee & Perigee, they created a work that depicts the image of high-tech resulting in a fascinating and erotic utopia. The sound still moves our hearts.

But now in the 21st century, Tele-II's album 『バーチャルリアリティ』 portrays the loneliness and feeling of loss we continue to experience every day in a flimsy high-tech environment.

【後記, 2021年4月3日】
確か2021年初頭のことですが、この《テレパシー能力者2》さんのBandcampページが消えてしまったため、リンク先をarchive.orgのミラーへと差し替えました。
それと。
このテレ2さんについて、〈かの高名なる《テレパシー能力者》さんの新たなアヴァターであろうか?〉みたいなことを書いていますが。現在の私は、もはやそうは考えておりません。
しかし、過去に書いてしまったことは、そのままにしておきます。